扶養の130万円、いまは週21時間で届く。1993年は週43時間だった
認定基準は1993年から据え置きの130万円。最低賃金は583円から1,177円になった。年金の第3号被保険者は610万人まで減り、9月4日に見直しの検討会が始まった
2026-09-06
週21時間
最低賃金で年130万円に届く労働時間
30年で半分になった第3号被保険者
厚生労働省が9月4日、第3号被保険者制度を見直すための検討会を開いた。会社員に扶養される配偶者が、保険料を負担せずに基礎年金を受け取れる区分だ。
ただ、見直しを議論する前から、対象者は減り続けている。
- 1995年度末:1,220万人(ピーク)
- 2020年度末:793万人
- 2024年度末:641万人
- 2025年12月末:610万人
**30年で半分になった。** 2024年度だけで45万人(6.5%)減っている。
減らしたのは制度改正ではない。共働きの増加と、パートで働く人への厚生年金の適用拡大が先に進んだ結果だ。
夫婦の年金加入の組み合わせにも、その入れ替わりが出ている。会社員と第3号の夫婦は2015年の52%から38%へ、会社員同士の夫婦は31%から48%へ動いた(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。
第3号被保険者数の推移
出典:厚生労働省「公的年金財政状況報告」「厚生年金保険・国民年金事業の概況」「事業月報」
130万円は1993年から動いていない
第3号でいられる年収の上限は130万円。この額が決まったのは1993年4月で、以来33年間そのままだ。
同じ期間に、最低賃金の全国加重平均は583円から1,177円になった。ちょうど2倍だ。
金額が動かないまま時給だけが上がれば、その額に届くまでに働ける時間は縮む。最低賃金で計算すると、こうなる。
- 1993年度:年2,230時間(週43時間)
- 2005年度:年1,946時間(週37時間)
- 2015年度:年1,629時間(週31時間)
- 2026年度:年1,105時間(週21時間)
1993年は、フルタイムを超えて働かないと130万円に届かなかった。いまは週21時間で届く。時給が上がるほど、扶養にとどまれる時間は短くなる。
「働き控え」は働き手の意識の問題として語られやすい。だがその手前で、働ける時間の上限そのものが半分になっている。
最低賃金で年130万円を稼ぐのに必要な年間労働時間
出典:厚生労働省「地域別最低賃金改定状況」の全国加重平均額から算出
130万円より先に「週20時間」に当たる
2026年10月、106万円の賃金要件が撤廃される。短時間で働く人が厚生年金に入るかどうかは、週20時間かどうかで決まるようになる。
ここで2つの基準が重なりはじめる。最低賃金で週20時間働くと、年収は約122万円。時給が1,250円を超えると、週20時間の時点で130万円を上回る。**全国平均は1,177円、東京はすでに1,280円だ。**
従業員51人以上の会社で働くなら、130万円は上限としての意味を間もなく失う。その手前で週20時間に当たり、厚生年金と健康保険の被保険者になるからだ。
入る先の違いは小さくない。
- 厚生年金:保険料は会社と折半。年金に報酬比例の分が上乗せされる
- 国民年金と国民健康保険(130万円を超えて扶養を外れた場合):保険料は月2万3,600円(年収130万円での試算)。年金は基礎年金のまま
つまり、130万円を境に負担だけが増える形は、週20時間で厚生年金に入る人には起こらない。この置き換わりが遅れるのは、小さな職場だ。企業規模の要件が外れるのは2027年10月の36人以上からで、全企業に及ぶのは2035年10月。そこまでは、130万円の手前で働く時間を調整する理由が残る。
企業規模要件の撤廃で新たに厚生年金の対象になる人数
出典:厚生労働省「第3号被保険者制度を巡る現状について」(2026年9月4日)
2030年の焦点は、適用拡大で届かない人
検討会は2026年度中に実態調査の結果をまとめ、2030年の制度改正に向けて課題を整理する。自民党と日本維新の会の協議体が7月7日に示した骨子にも、実態調査と検討会の設置が盛り込まれていた。
ただ、縮小そのものは調査を待たずに進む。だから2030年に決めるのは、第3号を縮小するかどうかではなく、適用拡大では届かない人をどう扱うかだ。
残る610万人の内訳を見ると、その対象がはっきりする。
- 平均年齢は46.4歳で、98%が女性
- 5割以上はすでに働いており、雇用者の8割超がパート
- 末子が0〜2歳では、就労している割合は3割にとどまる
- 就業を希望しない理由は、30代までは出産や育児、50代では介護や看護が増える
残るのは、週20時間より短く働く人と、育児や介護で働けない人だ。前者には週20時間という線引きをどこまで下げるか、後者には保険料を負担しないまま給付をどう確保するかという論点が残る。130万円という数字のほうは、その議論が始まる前に役目を終えつつある。