18歳選挙権10年、19歳になると投票率が8ポイント落ちる
2025年参院選の投票率は18歳45.78%、19歳37.63%。1歳差で開くこの8.15ポイントは10年間一度も縮まっていない。高校の主権者教育で最も多いのは選挙の仕組みの説明で76.1%、現実の政治を話し合う活動は29.3%にとどまる
2026-08-07
8.15
18歳と19歳の投票率の差(ポイント)
10年間、一度も縮まらなかった8ポイント
2026年6月で、選挙権年齢が18歳に下がってから10年になった。
この10年を18歳と19歳に分けて見ると、同じ形が繰り返されている。総務省の抽出調査によると、2025年7月の参院選は18歳が45.78%、19歳が37.63%だった。
差は8.15ポイント。1歳しか違わないのに、これだけ開く。
そしてこの差は、10年間ほとんど動いていない。
- 2016年 18歳51.28% / 19歳42.30%(差8.98ポイント)
- 2019年 18歳34.68% / 19歳28.05%(差6.63ポイント)
- 2022年 18歳38.67% / 19歳30.31%(差8.36ポイント)
- 2025年 18歳45.78% / 19歳37.63%(差8.15ポイント)
18歳と19歳を合わせた投票率は2019年の31.33%を底に回復し、2025年は41.74%まで戻った。それでも全体の58.51%とは16.77ポイント離れている。
参院選における18歳と19歳を合わせた投票率の推移
出典:総務省 抽出調査
18歳と19歳を分けているもの
なぜ1歳差でこれだけ開くのか。18歳と19歳で大きく違うのは、学校にいるかどうかだ。
国政選挙の投票日に、18歳の多くはまだ高校3年生か卒業して間もない時期にいる。19歳はすでに大学生か社会人になっている。
文部科学省が1,306校から回答を得た主権者教育の実施状況調査(令和4年度)を見ると、高校が関わる密度がわかる。
- 1年生への実施: 94.9%
- 3年生への実施: 67.7%
- 直近の参院選を題材にした指導: 44.9%
つまり18歳は、投票の直前に学校から働きかけを受ける最後の学年になる。校内で模擬選挙をやり、教員から期日前投票の説明を聞き、同級生と同じ話題を共有する。
19歳にはそれがない。18歳の投票率は本人の関心よりも、学校からの働きかけに支えられている可能性が高い。
18歳と19歳の投票率の差(参院選)
出典:総務省 抽出調査
教わるのは仕組み、話し合いは3割
では、学校では何を教わっているのか。同じ調査で、実施した学習活動の内訳はこうなっている。
- 公職選挙法や選挙の具体的な仕組み: 76.1%
- 模擬選挙など実践的な学習活動: 38.2%
- 現実の政治的事象についての話し合い: 29.3%
投票のやり方は4校に3校が教える。一方、いま起きている政治を生徒同士で話し合う学校は3割に届かない。
外部との連携も薄い。選挙管理委員会と連携した学校は29.4%で、どことも連携していない学校が64.9%を占める。
同じ調査には、学校が挙げた課題も並んでいる。「現実の題材を扱うことと政治的中立性の確保の両立が難しい」。教育委員会からは「政治的中立性が保てない状況に陥る恐れがあることから、実施に躊躇する傾向がある」という回答が出ている。
手続きは教えられるが、判断を練習する場は限られている。
高校の主権者教育で実施した学習活動(複数回答)
出典:文部科学省 令和4年度主権者教育実施状況調査(n=1,306校)
学校の外に、入口がない
手続きだけを身につけて高校を出ると、19歳で最初の壁に当たる。
金沢市選挙管理委員会と金沢大学が学生に行った調査では、投票しなかった理由の上位はこうだった。1位が「面倒だった」で23件、2位が「住民票を移していなかった」など住民票に関する理由で22件だった。
進学や就職で家を出た19歳は、住民票を移さなければ実家の自治体でしか投票できない。移した場合も、選挙人名簿への登録には3カ月の居住要件がある。不在者投票という手段はあるが、請求と郵送の手間がかかる。
この手続きは高校の授業では実感を伴いにくい。まだ引っ越していない生徒にとっては、自分の話になっていないからだ。
10年間で18歳と19歳の投票率は底から10ポイント回復した。ただし両者の差は一度も縮まっていない。
投票の入口が学校の中にしか置かれていない限り、次の10年もこの8ポイントは残る。若者の投票率が動くかどうかは、18歳への授業よりも、学校を出た19歳に何が届くかで決まる。