残業月45時間の一律指導が9月で終わった。労基署が見るのは36協定の10項目だ
令和7年度に監督を受けた29,150事業場のうち、健康障害防止措置の改善指導は43.9%。違法な時間外労働の38.5%より多い
2026-10-02
43.9%
健康障害防止措置の改善指導
9月1日に変わった監督の入り口
厚生労働省は9月1日から、残業を月45時間以内に収めるよう一律に求める労働基準監督署の指導をやめた。
これまでは、特別条項付きの36協定を結んで単月100時間未満まで残業できる事業場に対しても、監督の場で「45時間以内に」と求めてきた。
9月からはその一律の求めをしない。代わりに重点的に確認するのが、36協定に書いた「健康及び福祉を確保するための措置」の実施状況だ。
法律の上限そのものは動いていない。時間外労働の原則は月45時間と年360時間のままで、特別条項を使う場合も年720時間や複数月平均80時間以内といった上限がかかる。
変わったのは、監督官が立ち入ったときに何から見るかという運用だ。
令和7年度の監督データ
運用が変わる2週間後、9月15日に直前の実績が公表された。令和7年度に長時間労働が疑われて監督を受けた事業場は29,150。そのうち22,882事業場、78.5%で労働基準関係法令の違反が見つかっている。
違法な時間外労働が確認されたのは11,228事業場で、割合は38.5%。前年度の42.4%から4ポイント近く下がった。
ただ実数は動いていない。
- 令和4年度:14,147事業場
- 令和5年度:11,610事業場
- 令和6年度:11,230事業場
- 令和7年度:11,228事業場
3年続けて11,000台だ。割合が下がったのは、監督の対象が26,512から29,150へ広がって分母が増えたからだ。
違法と認められた11,228のうち、実際に月80時間を超える残業が確認されたのは4,991事業場。月100時間を超えるものが2,842、月200時間を超えるものも111あった。残りの6,237事業場では、80時間超の残業は確認されていない。
違法な時間外労働が確認された事業場数の推移
出典:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」各年度
違法な時間外労働4,991事業場の、実際の残業時間(令和7年度)
出典:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」
措置と記録に出ていた指導
では、9月からの新しい重点はどこに当たるのか。同じ令和7年度の結果に、措置と記録についての数字が並んでいる。
- 過重労働による健康障害防止措置が不十分で改善指導:12,811事業場(43.9%)
- その措置が未実施:5,919事業場(20.3%)
- 労働時間の把握が不適正で指導:4,045事業場(13.9%)
違法な時間外労働の38.5%より、措置についての改善指導43.9%のほうが多い。
ここで一つ区別しておきたい。この健康障害防止措置は労働安全衛生法などを根拠とするもので、36協定の特別条項に書く10項目の措置とは制度上別のものだ。
それでも両者は、長く働いた人の健康を守るために事業場が自分で手を動かすことを前提にしている点で重なる。その前提の部分に、監督を受けた事業場の4割超で指導が出ていた。
監督を受けた29,150事業場で指摘された内容の割合(令和7年度)
出典:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」
36協定の10項目と労働時間の記録
重点が移れば、実務の分かれ目も移る。36協定の特別条項では、10項目の選択肢から措置を選んで協定に書き込む。おもなものは次の通りだ。
- 医師による面接指導
- 勤務間インターバルの確保
- 深夜業の回数制限
- 代償休日や特別な休暇の付与
- 連続休暇の取得促進
- 心とからだの相談窓口の設置
- 配置転換や産業医による助言
協定に書くだけなら、相談窓口の設置のように負担の軽い項目でも形は整う。9月以降に見られるのは、書いた措置が実際に行われ、記録として残っているかだ。
そしてその確認は、労働時間の記録に乗る。把握が不適正だった4,045事業場では、誰が何時間働いたかが定まらないので、面接指導にもインターバルにも入口が立たない。
45時間という外形の線は、記録が粗くても引けた。実施状況の確認はそうはいかない。重点が移ったあとに監督が届く範囲は、客観的な時間把握がどこまでできているかで決まる。