空き家の固定資産税が上がる勧告は年978件。手が入った空き家は2万7千戸
2024年度に除却や修繕へたどり着いた空き家の8割は、空家法の措置を一度も使っていない
2026-09-13
978件
税の特例が外れる勧告の件数(2024年度)
勧告978件で外れる住宅用地特例
空き家を放置すると固定資産税が上がる。そう聞いたことのある人は多い。
仕組みはこうだ。市区町村が「特定空家等」や「管理不全空家等」と判断して所有者に勧告を出すと、その土地から住宅用地特例が外れる。特例は200平方メートル以下の部分の課税標準を6分の1にするもので、外れれば課税標準は6倍に戻る(負担調整があるため、納税額がそのまま6倍になるわけではない)。
では、その勧告は年にどれだけ出ているのか。国土交通省の施行状況調査によると、2024年度は特定空家等への勧告が600件、管理不全空家等への勧告が378件、合わせて978件だった。
2023年の住宅・土地統計調査で空き家は900万戸。うち賃貸用や売却用や別荘を除く「使用目的のない空き家」は385万戸ある。385万戸に対して978件、割合にすると0.03%だ。
税で所有者を動かす仕組みは、この規模でしか作動していない。
2024年度に市区町村が講じた空家法の措置
出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)
2024年度に手が入った2万7千戸の内訳
同じ調査には、空き家が実際に除却や修繕にたどり着いた戸数も載っている。累計値から前年分を引いて2024年度の1年分を取り出すと、内訳はこうなる。
- 空家法の措置による特定空家等:2,809戸
- 空家法の措置による管理不全空家等:2,537戸
- 措置によらない市区町村の取組:22,144戸
- 合計:27,490戸
空家法の措置によるものは19.4%にとどまる。残りの8割は、勧告も命令も代執行も経ずに片づいた。市区町村の相談窓口や解体補助、所有者への情報提供といった取組が積み上げた数字だ。
強制の出番はさらに小さい。2024年度の行政代執行は71件、所有者を確知できない場合に使う略式代執行は81件、2023年12月の改正で新設された緊急代執行は9件。合わせて161件で、手が入った2万7千戸の0.6%にあたる。
空き家を動かしているのは、税と強制よりも、その手前にある窓口と補助の側だ。
2024年度に除却や修繕に至った空き家2万7千戸の内訳
出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)をもとに前年度比で算出
税が上がることを知らない所有者が半数
税で所有者を動かす設計は、税の中身が伝わって初めて働く。国土交通省が2025年8月に公表した空き家所有者実態調査が、そこを測っている。
勧告を受けると固定資産税の軽減対象から外れることを「知らない」と答えた世帯は53.7%。「聞いたことがある」が30.1%で、「知っている」は16.2%だった。
所有者の顔ぶれも効いている。空き家を相続で取得した世帯は57.9%、家計を主に支える人が65歳以上の世帯は65.5%を占める。
そのうえで、今後も空き家として持ち続けるつもりの世帯に理由を聞くと、上位はこうなる。
- 物置として必要:55.8%
- 解体費用をかけたくない:47.3%
- 住宅の古さ:37.0%
- さら地にしても使い道がない:34.8%
- 取り壊すと固定資産税が高くなる:28.2%
税負担が理由に挙がるのは5番目だ。上位に来るのは物置としての使い道と解体費用で、どちらも税額を動かしても消えない。
勧告で固定資産税の軽減対象から外れることを知っているか
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(2025年8月公表)
売る出口は伸び、新しい制度はこれから
出口の側の数字は伸びている。相続した空き家を売ったとき、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例がある。その適用に必要な確認書の交付は、2024年度に16,755件で過去最多になった。2016年度からの累計は93,897件だ。除却や修繕に至った2万7千戸の6割にあたる規模が、売る側でも動いていることになる。
一方、2023年の改正で用意された仕組みの立ち上がりは遅い。
- 空家等対策計画の策定:1,541市区町村(88%)
- 空家等管理活用支援法人の指定:95法人(64市区町村)
- 空家等活用促進区域の指定:4区域(4市)
計画づくりは9割近くまで進んだ。その計画を回すための道具は、これから使われ始める段階にある。
2028年の調査で差がつくのは通知と費用
数字を並べ直すと、空き家対策の効き目は勧告や代執行の件数では測れない。年978件の勧告は使用目的のない空き家385万戸の0.03%にすぎず、実際に手が入った2万7千戸の8割は措置を経ていない。しかも所有者の半数以上は、勧告で税が上がること自体を知らない。
知られていない罰則は、罰則として働かない。相続で取得した高齢世帯が多数を占める空き家では、税率を動かすより、通知が届く経路と解体や家財の始末にかかる費用のほうが結果を左右する構造になっている。
次の住宅・土地統計調査は2028年に行われる。そこで空き家が減るかどうかを分けるのは、支援法人や促進区域を何件指定したかではなく、税の扱いを知る所有者がどれだけ増えたかと、解体費用にどこまで手が届いたかだ。