独自分析
空家法管理不全空家行政代執行住宅用地特例空き家所有者実態調査
行政が壊した空き家は11年で286件。固定資産税の優遇が外れる勧告は年378件

行政が壊した空き家は11年で286件。固定資産税の優遇が外れる勧告は年378件

2023年に加わった「管理不全空家」への指導が1年で2,545件。除却や修繕は、勧告まで進む前の段階で動いている

2026-10-11

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空家法に基づく行政代執行の累計(2015〜2024年度・件)

実家が空き家になる入り口

国土交通省の空き家所有者実態調査(2024年、2025年8月公表)によると、空き家の約6割は相続で手に入れたものだ。

きっかけの約6割は、前の所有者が亡くなったこと。相続で取得した空き家は7割超が1980年以前に建った家で、7割超に腐朽や破損がある。

一方、相続の前に何か手を打っていた世帯は23.0%だった。

  • 被相続人との話し合い 16.7%
  • 遺言作成の支援 1.8%
  • 後見制度や家族信託の活用 1.3%

傷んだ家が、誰の判断も通らないまま次の世代に渡る。これが空き家の入り口だ。

総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では、空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%。うち賃貸にも売却にも出ていない空き家が385万6千戸あり、5年で36万9千戸増えた。

11年で286件という代執行の数

行政はこの385万戸にどう手を入れるのか。

空家法は、周囲に危険が及ぶ空き家を「特定空家等」に指定し、助言や指導から勧告、命令、行政代執行まで段階的に進める仕組みを持つ。

国交省と総務省の調査(2025年3月31日時点)による2015年度からの累計はこうだ。

  • 助言・指導 42,768件
  • 勧告 4,153件
  • 命令 551件
  • 行政代執行 286件
  • 所有者が分からない場合の略式代執行 592件

**壊すところまで進んだのは、11年で286件だ。**

年間で最も多かった2024年度でも71件。しかも特定空家への助言や指導は2020年度の6,370件を山に減り続け、2024年度は4,026件になっている。

除却を軸にした運用は、すでに頭を打っていた。

空家法に基づく措置の件数(年度別)

出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年3月31日時点)

勧告の前で持ち主が動いている

減った分を埋めたのが、2023年12月に施行された改正空家法の新しい区分だ。

放置すれば特定空家になりそうな家を「管理不全空家等」として、指導と勧告の対象にできる。

この指導は施行初年度の2023年度が666件、2024年度が2,545件。1年で約3.8倍になった。勧告は378件だ。

効果の出方が、件数と食い違う。空家法の措置で除却や修繕がなされた管理不全空家は累計3,757件で、前年の1,220件から2,537件増えている。

同じ年度の勧告は378件しかない。勧告まで進んだ数より、片付いた数のほうがはるかに多い。

動かしているのは代執行の実行力ではなく、勧告されれば土地の住宅用地特例が外れるという見通しのほうだと読める。特例が外れると課税標準を6分の1にする軽減がなくなり、自治体の説明では土地の税額が3倍から4倍になる例が多い。

2024年度に講じられた措置の内訳

出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年3月31日時点)

数の勝負は相続の手前に移る

この読み方に立つと、空き家政策で数が動くのは税制の側だ。

空き家を売ったときの譲渡所得3,000万円控除。その確認書の交付は2024年度に16,755件で、制度開始以来の最多だった。累計は93,897件。壊した286件とは桁が3つ違う。

活用の枠組みはまだ小さい。用途変更や建替えを緩める「空家等活用促進区域」は2024年度末で全国4区域(鎌ケ谷市、桜川市、山陽小野田市、備前市)で、指定予定を足しても40区域だ。

空家法の措置を1件以上とった市区町村は546。全1,741市区町村の31%にとどまる。

居住目的のない空き家は1998年の182万戸から2018年に349万戸へ増え、2030年には470万戸と見込まれている。年7,811件の措置では0.2%に届かない。

だから効く順番はこうなる。まず税の見通しで指導段階のうちに動かし、次に売れるうちに売る出口を広げる。そして相続前の備えが23.0%から動くかどうかが、10年後の空き家の数を決める。

空き家の譲渡所得3,000万円控除、確認書の交付件数

出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(2025年3月31日時点)