備蓄米の買い戻し21万トン。100万トンの備えは32万トンまで減っていた
2025年に59万トンを放出し、初めての買い戻しが9月18日に始まる。備蓄を積み直せるのは、米が余っている年だけだ
2026-09-08
21万トン
買い戻す政府備蓄米
初めての買い戻しが9月18日に始まる
農林水産省が、2025年に放出した政府備蓄米の買い戻しに入る。鈴木憲和農相が9月1日に表明し、9月18日にJA全農などの集荷業者と随意契約の手続きを始める。買い戻す量は21万トン、対象は2025年産米だ。
政府が一度放出した備蓄米を買い戻すのは、これが初めてになる。2026年度予算に積んでいたのは当初15万トン分で、そこに6万トンを上積みした形だ。
**放出したのは59万トン、買い戻すのは21万トン。**
備蓄米は1993年の大凶作を受けて1995年に始まった制度で、想定してきたのは10年に1度の不作だった。2025年の放出は、米価の高騰と流通の滞りへの対応にあたる。適正水準は100万トン程度とされるが、この放出で在庫は約32万トンまで下がっている。
2025年の放出59万トンと、今回の買い戻し21万トン
出典:農林水産省
1万700円で売り、いまの米価は3万円台
2025年の放出は、二つの方法で行われた。
- 買戻し条件付きの一般競争入札:約31万トン
- 大手小売業者などへの随意契約:約28万トン
入札分の売渡価格は、玄米60kgあたり2万2,477円(税込、第1回から第3回の加重平均、包装代込み)。随意契約分は国が指定した価格で、平均1万700円(税別)だった。店頭で5kg2,000円台を実現するために置かれた水準だ。
これに対し、買い戻す2025年産米の相対取引価格は、2026年6月時点で60kgあたり3万1,305円。2025年産の平均は3万5,812円で、過去最高を記録している。
放出したのは古米、買い戻すのは新しい年産だから、値段をそのまま並べて損得を語ることはできない。それでも、随意契約の価格を測る目安になるのは、放出時より高い足元の相場だ。
売った値段と、いまの米価(玄米60kgあたり)
出典:農林水産省(相対取引価格、備蓄米売渡価格)
毎年20万トン買っても、水準は動かない
備蓄米の仕組みは「棚上げ備蓄」と呼ばれる。政府の売買が市場を動かさないよう、買った米は原則として主食用には戻さない。
回り方はこうなる。
- 毎年20万トン前後を作付け前に買い入れる
- 5年たった持越米は飼料用などに売る
- 買う量と売る量が釣り合い、水準は100万トン程度で保たれる
つまり通常の買入は入れ替えであって、積み増しではない。2026年産も20.7万トンを確保したが、これで備蓄水準が上がるわけではない。
100万トンと32万トンの差は68万トン。これを埋められるのは通常の買入とは別枠の買い戻しだけで、今回の21万トンを足しても3割ほどにとどまる。積み直しには維持費も伴う。100万トンを低温倉庫で持ち続ける費用は、年478億円とされる。
適正水準100万トンと、21万トンを買い戻したあとの備蓄量
出典:農林水産省(買い戻し後は32万トンに21万トンを加えて算出)
積み直せるのは、米が余っている年だけ
なぜいま買い戻しが動くのか。米が余っているからだ。
コメの民間在庫は2026年6月末で243万トン。農水省は2027年6月末に263万トンから283万トンまで増える見通しを立てている。2026年産の概算金も下がり、宮城のひとめぼれと茨城のコシヒカリが60kgあたり1万7,000円、栃木のコシヒカリが1万5,500円という水準だ。買い戻しを15万トンから21万トンに広げた背景にも、この在庫の積み上がりがある。買い入れは、下がる米価を下支えする側にも働く。
裏を返せば、備蓄は米が足りない年に取り崩され、余っている年にしか積み直せない。2027年度の概算要求では、食料安定供給特別会計に備蓄米の買入費として1,833億円が計上された。実現すれば2年連続の買い戻しになる。
それでも、年21万トンのペースで68万トンの不足を埋めるには3年以上かかる。しかも買い戻せるかどうかは、作柄と民間在庫という、政府が動かせない変数に左右される。復元の期限を定めず単年度ごとの判断を重ねる形が続く限り、100万トンは到達時期の見えない目標として残ることになる。