独自分析
日銀政策金利住宅ローン変動金利利上げ
日銀が31年ぶりに金利1%へ。変動金利の住宅ローンはどうなる

日銀が31年ぶりに金利1%へ。変動金利の住宅ローンはどうなる

2026年6月、日銀が政策金利を1%に引き上げた。31年ぶりの水準だ。住宅ローン利用者の75%が選んだ変動金利は返済増に直面する一方、1,000兆円超の預金には利子所得が生まれる。同じ「1%」が家計の明暗を分け始めている

2026-06-28

1.00%

日銀政策金利(31年ぶり水準)

「0.001%から1%」── 31年ぶりの金利水準

日銀は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1.00%に引き上げた。賛成7、反対1。1%台は1995年以来、31年ぶりだ。

2016年のマイナス金利導入以降、普通預金金利は0.001%まで下がった。「利息がつかない」が常識の10年間だった。

だが金利正常化は想定を超えるペースで進んだ。

  • 2024年3月:マイナス金利解除
  • 2024年7月:0.25%
  • 2025年1月:0.50%
  • 2026年6月:1.00%

わずか2年3か月で、ゼロから1%に到達した。

メガバンク3行は8月から普通預金金利を0.4%に改定すると発表した。0.001%時代の400倍になる。市場では年内にさらなる追加利上げが織り込まれ、到達点は1.5〜2%との予測が多い。

日銀政策金利の推移(2016〜2026年)

日本銀行

変動金利75%、155兆円 ── ゼロ金利前提で積まれた残高

住宅金融支援機構の調査(2026年1月)によると、住宅ローン利用者の75%が変動金利を選んでいる。ピーク時には84%に達した。

この選択には合理性があった。変動金利0.3〜0.5%に対し、固定金利(フラット35)は1.5%前後。元本3,500万円・35年返済で比較すると、月額の差は約3.9万円になった。安い方を選ぶのは当然だ。

だが前提が変わった。変動金利は現在約1.08%に上昇している。仮に政策金利が1.5%まで上がれば、月々の返済は借入時から1万4,000円以上増える計算になる(借入3,000万円の場合)。

銀行の住宅ローン貸出残高は155兆円(2025年9月、日銀統計)で過去最高を更新した。約8割が変動金利だとすると、124兆円規模のローンが金利上昇の影響を受ける。

「5年ルール」で当面の返済額が据え置かれるケースもある。だがそれは負担の先送りであって、消滅ではない。

住宅ローン金利タイプ別利用割合

住宅金融支援機構(2026年1月調査)

マクロでは「プラス」── だが恩恵の届き先は偏る

金利上昇の裏側には、恩恵を受ける層がある。

みずほ総合研究所の試算では、預金金利上昇による家計の利子収入増は年間約1.5兆円。内訳は普通預金で+0.7兆円、定期預金で+0.8兆円だ。

住宅ローンの利払い増を差し引いても、家計全体では年間+1.0兆円のプラスになる。マクロで見れば、金利上昇は家計にとって「差し引きプラス」だ。

だがこの「プラス」は均等に配分されない。

  • 預金を多く持つシニア世帯:利子所得が増える
  • 住宅ローンを抱える現役世代:返済負担が増える

家計の金融資産約2,200兆円のうち、預金・現金は1,000兆円を超える。その多くを保有するのは60歳以上の世帯だ。変動金利利用者の53.5%が金利リスクに「不安を感じている」と回答している(住宅金融支援機構調査)。

マクロの「プラス」の内側で、世帯ごとの明暗が分かれている。

「ゼロからの1%」が可視化するもの

国際比較では、政策金利1%はなお低い。欧米の主要国では3〜5%台で推移している。

だが「ゼロからの1%」と「5%からの追加1%」では家計への浸透度が異なる。30年近くゼロ金利を前提に組まれた住宅ローン、設計された家計収支──すべてが「金利はほぼゼロ」という想定の上にあった。

金利が正常化に向かうとき、問われるのは「金利が何%か」ではない。「その世帯が資産と負債のどちらを多く持っているか」だ。

預金が多ければ恩恵を受け、ローンが多ければ負担が増す。当然の原則だが、ゼロ金利の30年間はこの差が見えなかった。

住宅ローン利用者の73.7%が「今後1年で金利はさらに上がる」と回答している。金利の方向感は共有されている。だが備える余力は世帯ごとに異なる。1%という数字は、その非対称を再び可視化する装置として機能し始めている。