独自分析
部活動改革地域展開教員の働き方中体連教育政策
部活を地域に移しても、94%の自治体で場所は中学校のまま

部活を地域に移しても、94%の自治体で場所は中学校のまま

2026年度から部活動改革は「改革実行期間」に入った。休日部活の30.4%が地域クラブに移る見込みだが、指導者に教職員の兼職兼業を挙げる自治体は55.5%で最多。動くのは費用の出どころで、部活の年5.1万円と民間クラブの年15.6万円の差をどう埋めるかは決まっていない

2026-08-04

10.5万円

部活と民間クラブの年間費用差

休日の3割が地域クラブに移る2026年度

2026年度から、部活動改革は2023年度に始まった「改革推進期間」に続く「改革実行期間」に入った。

スポーツ庁と文化庁が2026年4月に公表した調査では、休日の部活動が地域クラブに移る割合は、2023年度の4.7%から2026年度は30.4%になる見込みだ。部活動数でいえば38,954部にあたる。一方、平日の活動が地域クラブになるのは1割弱にとどまる。

ここまでは「学校から地域へ」という説明どおりに見える。ただ、同じ調査の別の項目を並べると、移行の中身は違って見えてくる。

  • 主な活動場所に「中学校の施設」を挙げた自治体:94.2%
  • 指導者に「教職員の兼職兼業」を挙げた自治体:55.5%(最多)
  • 学校施設の使用料減免を定めた自治体:41.2%

移る先は、多くの場合これまでと同じ体育館だ。教える人も、勤務ではなく兼職兼業という形で同じ教員が立つ場合が少なくない。看板は替わっても、場所と人はおおむね据え置かれている。

休日の部活動が地域クラブに移った割合

出典:スポーツ庁と文化庁「部活動改革の取組状況に関する調査」(2026年4月)

減ったのは土日、平日はほぼ動いていない

では、教員の負担はどれだけ軽くなったのか。

文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度確定値)では、中学校教諭が部活動に使う時間は1日あたり平日37分、土日1時間29分だった。平成28年度調査の平日41分、土日2時間9分と比べると、6年間で平日は4分、土日は40分減った計算になる。

土日は目に見えて減り、平日はほとんど動いていない。

この偏りは、自治体が挙げる課題とそのまま対応している。指導者確保の課題として「平日に対応可能な指導者が少ない」を挙げた自治体は81.2%、「指導者に十分な待遇が用意できない」は59.7%だった。平日の夕方に、報酬に見合う形で指導者を集められる地域は多くない。だから休日の移行が先に進み、平日は学校に残る。

ただ、教員の負担軽減だけでは、なぜ2026年度に全国で動くのかまでは説明しきれない。

部員が減り、全国大会は10競技に絞られる

背景にあるのは、部活動に入る生徒の数の減少だ。

日本中学校体育連盟の加盟人数は、2014年度の223万人から2023年度は181万人へ、10年で42万人(年平均2.3%)減った。野村総合研究所がスポーツ庁の委託で行った推計では、加盟率が今のまま推移した場合、2053年度は124万人、2023年度比で31.5%減となる。

生徒が減れば、単独の学校ではチームを組めない競技が出てくる。その帰結は全国大会の側に先に表れた。日本中学校体育連盟は2027年度から全国中学校体育大会の規模を縮小する。

  • 夏の大会:16競技から10競技へ
  • 冬の大会:4競技から駅伝のみへ
  • 外れる9競技:水泳、ハンドボール、体操、新体操、男子ソフトボール、相撲、スキー、スケート、アイスホッケー

判断の目安は「中学校での設置率20%未満」だった。学校単位で成り立つ競技の範囲は、地域展開より先に狭まっている。

中体連の加盟人数の実績と推計

出典:日本中学校体育連盟の加盟校数調査、野村総合研究所「中体連加盟人数推計」(2024年3月)

年5.1万円と年15.6万円の差を誰が負担するか

学校の外に出ると、それまで見えていなかった費用が値段として現れる。

笹川スポーツ財団の推計では、中学生が運動部活動にかける費用は年50,857円、同じ年代がスポーツクラブに通う場合は年155,799円だ。差は約10.5万円、倍率で3.1倍になる。

部活動が安く見えていたのは、場所代と人件費が学校の予算と教員の勤務時間に含まれていたからだ。地域クラブはその分を会費として書き出す。自治体の回答もそこに向いており、地域クラブ活動の課題は1位が「持続可能な収支構造の構築」の16.2%、3位が「保護者と生徒の理解(費用負担への理解を含む)」の14.1%だった。

国の予算は2026年度当初57億円と2025年度補正82億円の計139億円。用途は限られるが、地域展開する見込みの38,954部で単純に割ると1部あたり年約36万円、部員20人なら1人1.8万円にとどまる。

つまり今後の地域差は「部活があるかどうか」ではなく「いくらなら続けられるか」に出る。会費の水準を決め、就学援助の対象世帯への減免をどう組み合わせるかを固めた自治体から、平日の移行も動き出すことになる。

中学生の年間費用(運動部活動とスポーツクラブ)

出典:笹川スポーツ財団の推計(2025年)