独自分析
再エネ賦課金GX-ETS排出量取引カーボンプライシング電気代
電気代の再エネ賦課金、CO2 1トン分で9,600円。企業の排出枠は4,300円

電気代の再エネ賦課金、CO2 1トン分で9,600円。企業の排出枠は4,300円

4月に義務化された排出量取引の上限価格は4,300円で、2030年度でも4,840円。EUの排出枠は約12,400円で取引されている

2026-08-29

9,600円

再エネ賦課金のCO2 1トン換算

企業の排出枠に付いた4,300円

2026年4月、排出量取引制度(GX-ETS)の第2フェーズが始まった。企業に排出削減の義務を課す、日本で初めての排出量取引になる。

対象は、CO2の直接排出が3年度平均で年10万トン以上の事業所を持つ企業だ。300〜400社が入り、国内の温室効果ガス排出量の6割近くをカバーする。

企業は割り当てられた排出枠と実際の排出量を突き合わせ、足りない分を市場で買う。その市場価格の目安として、2026年度は2つの水準が置かれた。

  • **参考上限取引価格**:4,300円/t-CO2
  • **調整基準取引価格**:1,700円/t-CO2

上限の4,300円は、石炭からLNGへ燃料を切り替えるコストの直近10年の中央値(約4,370円)から算出されている。償却義務を果たさなかったときに払う未償却相当負担金も、この上限価格の1.1倍で決まる。企業が排出1トンに負う金額は、削減しなかった場合でも4,730円で頭打ちになる。

GX-ETS第2フェーズがカバーする国内排出量

出典:経済産業省 GX-ETS制度設計(第2フェーズ)

再エネ賦課金をCO2 1トンに換算する

同じ2026年度、家庭の電気代でも1トン単位の負担が動いている。

再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、1kWhあたり4.18円になった。制度が始まった2012年度の0.22円から19倍で、初めて4円台に乗った過去最高額だ。月400kWhを使う家庭なら、月1,672円、年20,064円になる。

これを企業側と同じ単位に揃えてみる。2024年度の電力の全国平均CO2排出係数は受電端で0.435kg-CO2/kWhだから、CO2を1トン出す電気の量はおよそ2,300kWhにあたる。その2,300kWhすべてに4.18円が乗るので、1トンあたりに直した再エネ賦課金は約9,600円になる。

再エネ賦課金は再エネの買取費用を回収する仕組みで、排出そのものへの課金ではない。制度の性質は同じではない。それでも、電気を使うときに上乗せされる金額を一つの物差しに置くと、家計側の9,600円は企業側の上限4,300円の2.2倍になる。

CO2 1トンあたりの価格(円)

出典:経済産業省、環境省 電気事業者別排出係数、J-クレジット制度、欧州委員会CBAM参照価格をもとに算出

他のカーボンプライスと並べた4,300円

この4,300円という上限は、当面ほとんど動かない。制度は2030年度の価格帯も示していて、上限4,840円、下限1,913円だ。4年かけて上限が540円上がるにとどまる。

他のカーボンプライスと並べると位置がはっきりする。

  • GX-ETSの上限価格(2026年度):4,300円/t
  • J-クレジット(省エネ、2026年4月2日時点):4,800円/t
  • J-クレジット(再エネ電力、同):5,199円/t
  • EU-ETSの参照価格(2026年1〜3月):75.36ユーロ、約12,400円/t

企業が外部から買えるJ-クレジットのほうが、排出枠の上限価格より高い。EUの排出枠と比べると3分の1程度になる。

上限価格は、市場が荒れたときの安全弁として置かれるものだ。ただし価格が上限に近づくほど、設備を入れ替えて削減するより上限価格を払うほうが安いという計算が成り立ちやすくなる。上限の水準は、削減に踏み切る動機の強さでもある。

2026年度、2028年度、2033年度に始まる負担

GX推進法が定めた負担の時系列を並べると、順番が見えてくる。

  • 2026年度:GX-ETSの義務化。排出枠のやり取りが始まる
  • 2028年度:化石燃料賦課金の導入。化石燃料の輸入事業者などが対象になる
  • 2033年度:発電事業者への有償オークション(特定事業者負担金)が本格化

GX経済移行債20兆円の償還財源にあたるのは、後の2つだ。企業から国へまとまった資金が流れ始めるのは、制度開始の2年後と7年後になる。

一方の再エネ賦課金は2012年度から積み上がり、2026年度に過去最高を更新した。家庭が電気代で払う年約2万円は、すでに14年分の積み重ねの上にある。

「カーボンプライシングを入れると家計の負担が増える」という言い方は、すでに払っている分を数に入れていない。1トンあたりに換算した負担は、家計側が先に、しかも高い単価で積み上げてきた。

この差は、少なくとも2030年度までは大きく縮まらない。企業側の上限価格が4年で540円しか上がらないからだ。カーボンプライシングの負担を論じるなら、これから始まる制度の金額だけでなく、すでに電気代に乗っている9,600円を同じ表に並べるところが出発点になる。

再エネ賦課金の単価推移(円/kWh)

出典:経済産業省 FIT制度・FIP制度の賦課金単価