救急車で運ばれる人の63%が65歳以上。受け皿の地域包括医療病棟は266施設
2024年に新設された病棟には、休日のリハビリ体制や在宅復帰率8割といった要件が並ぶ。2026年6月の改定で基準は緩んだが、新たに届け出たのは21施設だった
2026-09-18
266施設
地域包括医療病棟の届出(2026年7月時点)
誰が救急車で運ばれているか
2024年に救急車で運ばれた人は676万9,172人。統計を始めた1963年以降で最も多い。
このうち65歳以上は428万4,953人で、全体の63.3%を占める。 2004年は42.5%、2014年は55.5%だった。20年で20ポイント上がっている。
85歳以上は168万478人。65歳から74歳の91万9,576人の1.8倍にあたる。
傷病の程度も動いている。
- 軽症(外来診療)46.8%。前年より4万7,482人減った
- 中等症(入院診療)44.6%。前年より16万7,290人増えた
- 重症(長期入院)7.3%
増えているのは、入院が要る中等症だ。 負担は搬送の現場よりも、受け入れる病棟の側に寄っている。
救急搬送された人に占める65歳以上の割合
出典:総務省消防庁「救急・救助の現況」
2024年の救急搬送人員の傷病程度別内訳
出典:総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」
新設された地域包括医療病棟の要件
その受け皿として2024年度の診療報酬改定で新設されたのが地域包括医療病棟だ。 入院料は1日3,050点、金額にして3万500円で始まった。
想定した患者は、手術を急ぐけがではなく、肺炎や心不全で入院する高齢者だ。 数日で山を越えても、寝たままの日が続けば歩けない状態で退院することになる。 それを防ぐため、施設基準にはリハビリと栄養の体制が並んだ。
- 看護職員10対1以上、看護師比率70%以上
- 常勤の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を2名以上
- 専任の常勤管理栄養士を1名以上
- 休日を含め、すべての日にリハビリを提供できる体制
- 平均在院日数21日以内、在宅復帰率8割以上
- 救急搬送などで入院した患者が15%以上
- 自院の一般病棟から移してきた患者は5%未満
最後の条件は、院内で患者を移し替えて高い点数を取る使い方を防ぐためのものだ。
届け出が266施設にとどまる理由
届け出は2024年6月の22施設から始まり、2025年9月に197病院、2026年5月に250施設まで増えた。 2年余りが過ぎた2026年7月時点で266施設。全国8,060病院の3%あまりにとどまる。
手を挙げた病院の規模も大きくない。 平均病床数は185.3床で、100床未満が56施設(21.1%)ある。 病棟として数えると、2026年5月時点の250施設で1万2,866床、1病棟あたり50床ほどだ。
要件のうち重いのは人員の部分だ。 常勤のリハビリ専門職2名と管理栄養士を置き、休日もリハビリを回す。 そのうえで平均在院日数21日以内と在宅復帰率8割を満たすには、退院支援に回す人手も要る。 理学療法士や管理栄養士の採用が難しい地域ほど、条件は満たしにくい。
受け皿は、人を確保できる病院にだけできた。
地域包括医療病棟を届け出た病院数の推移
出典:日経メディカル、地域包括ケア病棟協会の集計(厚生労働省の届出受理状況)
2026年6月の改定で変わった点
2026年6月の改定は、この病棟の入り口を広げた。 入院料は3,367点から3,066点までの6区分に分かれ、上位区分は317点の引き上げになった。 ADLの低下割合などの基準も緩み、急性期病棟を併設しない200床未満の病院向けに包括期充実体制加算80点が新設された。
それでも改定後に新しく届け出たのは21施設だった。 点数と基準を動かしても、常勤の専門職を置けない病院は届け出の側に立てない。
同じ改定で、急性期入院料の側にも手が入っている。 看護配置7対1の急性期病院A一般入院料(1,930点)と10対1の急性期病院B一般入院料(1,643点)が新設され、病床あたりの救急搬送の受け入れ件数に応じて施設基準を緩める措置も加わった。
これから高齢者を受けるのはどの病棟か
報酬の重心は、高齢者救急を専用の病棟に集める方向から、いま救急を受けている急性期病棟で高齢者を診られるようにする方向へ動いた。 2024年に用意された新しい病棟は、その一部を担う選択肢として残る。
親が救急車で運ばれた先が地域包括医療病棟である確率は、当面それほど高くない。 入院した翌日からリハビリが始まるかどうかを決めるのは、病棟の名前ではなく、その病院が置いている理学療法士や管理栄養士の数だ。 そして専門職が集まるかどうかは、点数の付け替えよりも、地域ごとの人材の偏りに左右される。