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「衆院3分の2、参院あと3」── 憲法改正「2027年春」は実現するか

「衆院3分の2、参院あと3」── 憲法改正「2027年春」は実現するか

自民党単独310超の衆院と、166に届かない参院の163議席。数字が映す改憲論議の理想と現実。

2026-05-05

163/166

参院改憲勢力の議席数/発議要件

「衆院3分の2、参院あと3」──改憲「2027年春」の距離

自民党単独310超の衆院と、166に届かない参院163議席。改憲論議の理想と現実はこの数字に集約される。2026年5月3日、日本国憲法は施行79年を迎え、東京では護憲と改憲の集会が同日に開かれた。

江東区の東京臨海広域防災公園には約5万人、主催者発表、が集まり、「STOP改憲・軍拡」を掲げてパレードした。全国約200カ所でも護憲集会が開かれた一方、千代田区の「公開憲法フォーラム」には会場約850人、オンライン含め約1万350人が参加し、櫻井よしこ氏や自民、維新、国民民主の議員が改憲の必要性を訴えた。

発議の算術──衆院は突破、参院は163/166

憲法改正には、衆参両院それぞれで総議員の3分の2以上の賛成による発議が必要で、その後の国民投票で過半数の承認を得る必要がある。2026年2月の衆院選で自民党は316議席を獲得し、定数465の3分の2にあたる310を単独で超えた。

維新36議席を加えれば衆院は352議席で、発議要件を数字上満たす。焦点は参院で、定数248の3分の2は166。自民102、国民民主25、維新19、参政15、日本保守2を足しても163にとどまり、あと3議席足りない。次回参院選は2028年夏で、無所属3名以上の取り込みが焦点となる。

参議院における改憲勢力の議席数(発議要件166議席)

参議院公式サイト(2026年5月時点)

何を変えるのか──9条と緊急事態条項の溝

高市首相は、2027年春までに改正発議のめどを立てる方針を示す。ただし、改憲に前向きな勢力の間でも、何をどう変えるかは一致していない。自民党は自衛隊明記、緊急事態対応、合区解消、教育充実の4項目を掲げ、9条1項・2項を維持しつつ「9条の2」で自衛隊を書き込む加憲方式を想定する。

維新は9条2項削除と「国防軍」明記を主張し、2026年度中に独自案を国会へ提出する方針だ。国民民主党は議員任期延長を中心とする緊急事態条項に絞る一方、内閣への緊急政令権には慎重。中道改革連合、共産、れいわ、社民も距離があり、163議席を一括りにしても条文一本化の保証はない。

必要だが急がない──世論が示す慎重さ

世論調査では改憲への追い風も見える。日経新聞の郵送調査、2025年10〜12月実施、では「改正したほうがよい」が68%で過去最高となり、「改正しないほうがよい」は27%と初めて3割を下回った。

一方、日経・テレ東の電話調査、2026年4月、で首相に優先してほしい政策を聞くと、物価対策47%、年金・医療・介護37%、外交・安保32%に対し、憲法改正は11%で最下位だった。「期限を設けず議論すべき」は47%で、「2027年春までに発議」支持は28%。緊急事態条項も2025年4月調査で賛成37%、反対50%となり、慎重な民意が鮮明だ。

首相に優先的に取り組んでほしい政策課題

日経新聞・テレビ東京世論調査(2026年4月)

憲法改正の進め方に関する国民の意見

日経新聞・テレビ東京世論調査(2026年4月)

2027年春への三つの壁

2027年春までの発議には三つの壁がある。第一は参院で足りない3議席で、2028年夏の参院選を待てない以上、無所属や中道改革連合からの個別の取り込みが必要になる。ただし参院議員は6年任期の途中で党議拘束を離れにくく、造反のハードルは高い。

第二は条文案の一本化だ。自民の自衛隊明記、維新の9条2項削除、国民民主の緊急事態条項を、年内に最大公約数へまとめられるかが問われる。第三は国民投票で、発議後60日から180日以内に有効投票の過半数が必要となる。施行79年で一度も改正されていない憲法が転換点を迎えるかは、国会の合意形成と国民の判断にかかっている。