独自分析
第3号被保険者106万円の壁被用者保険の適用拡大130万円の壁週20時間要件
106万円の壁は10月に消えた。扶養で働く人の4割は週20時間に届かない

106万円の壁は10月に消えた。扶養で働く人の4割は週20時間に届かない

第3号被保険者は610万人でピークの半分になった。残った条件は週20時間と従業員51人以上で、企業規模の撤廃は2035年までかかる

2026-10-14

610万人

第3号被保険者(2025年12月末)

10月1日に外れた条件

10月1日、短時間労働者が厚生年金と健康保険に加入する条件から、月8.8万円以上という賃金要件が外れた。年収に直すと約106万円、いわゆる「106万円の壁」の金額部分だ。

残った条件は3つになった。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 従業員51人以上の企業に勤めていること
  • 学生でないこと

撤廃の理由は最低賃金の上昇だ。2026年4月以降は全都道府県で時給1,016円以上になり、週20時間働けば月8.8万円はほぼ自動で超える。賃金要件は、撤廃される前から線として機能しなくなっていた。

一方で、扶養から外れる「130万円」の線は残っている。厚生労働省の資料では、年収130万円で国民年金と国民健康保険に移ると保険料は月23,600円。51人以上の企業で週20時間以上なら厚生年金と健康保険に入り、本人負担は月12,500円で済む(会社が同額を払う)。

同じ収入でも、週の労働時間と勤め先の従業員数で負担が倍近く変わる。

扶養に残る610万人の働き方

第3号被保険者は2025年12月末時点で610万人(速報値)。ピークは1995年度末の1,220万人で、2024年度末は641万人だった。30年でちょうど半分になっている。

夫婦の組み合わせも入れ替わった。第2号と第3号の夫婦は2015年の52%から2025年に38%へ、第2号同士は31%から48%へ動いた(国民生活基礎調査)。

では、残った610万人は働いていないのか。全体では5割以上がすでに就労している。

  • 20歳代:4割弱
  • 30歳代:5割弱
  • 40歳代と50歳代:5割以上
  • 末子が0〜2歳:約3割

就労している人の8割以上は、勤め先で「パート」と呼ばれる働き方だ。週の労働時間を見ると、30歳代以上では4割以上が20時間未満、末子が6〜11歳または18歳以上の場合は約5割が20時間未満になる(令和4年国民生活基礎調査の特別集計)。

扶養に残る理由は、働いていないことではない。週20時間という線の下で働いていることだ。

国民年金第3号被保険者数の推移

出典:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」、第1回第3号被保険者制度等検討会資料2

適用拡大が届く範囲

もう一つ残った条件、従業員51人以上はどうなるか。撤廃は段階的に進む。

  • 2027年10月:36人以上(約10万人)
  • 2029年10月:21人以上(約15万人)
  • 2032年10月:11人以上(約20万人)
  • 2035年10月:すべての企業(約25万人)

厚生労働省の推計では、9年かけて新たに加入するのは合計約70万人。現在の短時間被保険者が約121万人(2026年2月末)なので、規模としては小さくない。

ただし、この70万人はいずれも週20時間以上を満たす人だ。2023年度の雇用者5,740万人のうちフルタイム以外は960万人で、内訳は週20時間以上が380万人、20時間未満が580万人。企業規模の要件をどこまで下げても、580万人の側は対象に入らない。

2024年12月の年金部会は、適用拡大で第3号を縮小することを当面の方向性とした。その道筋は、週20時間という線で止まる。

企業規模要件の撤廃で新たに厚生年金に入る人数

出典:厚生労働省(2024年財政検証の推計値)

フルタイム以外の雇用者960万人の内訳(2023年度)

出典:厚生労働省(労働力調査などの特別集計による推計)

2万人調査が聞く「時間を抑える理由」

9月4日、国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会が始まった。2025年の年金改革法の附則が、実情の調査研究を求めている。対象と方法は決まっている。

  • 対象:20〜59歳で年収260万円以下の2万人(第1号5,000人、第2号5,000人、第3号9,000人)
  • 方法:労働政策研究・研修機構に要請したウェブ調査と、70名程度への個別インタビュー
  • 時期:令和8年度中にとりまとめ

質問票には「働く時間を制限している理由」「就業調整で意識している制度」が並ぶ。足りていないのは人数の統計ではなく、理由のデータの方だ。

非就業の第3号が「すぐに仕事に就けない」と答える理由も、年代で入れ替わる。20〜40歳代は出産・育児が最多、50歳代は介護・看護が大きく増え、年齢が上がるほど「健康に自信がない」が増える。

だから2026年度中に整理される論点は、第3号を縮小するかどうかではない。週20時間未満で働く人と、働けない事情のある人を、どの番号に置くかだ。第1号に移せば月23,600円の保険料が生じ、第2号に入れるには週20時間の線自体を下げることになる。

金額の壁が消えたあとに残るのは、時間の壁をどう扱うかという一点だ。検討会の結論は、この二つのどちらに寄るかで決まる。