家庭の電気は10年で5.7%減る。データセンターはその3倍を増やす
2035年度の電力需要想定。増える分はデータセンターと半導体工場に集中し、北海道と東京に偏る
2026-09-23
494億kWh
データセンターが2035年度に増やす電力量
10年で増えるのは産業用だけ
電力広域的運営推進機関(広域機関)が2026年1月に公表した需要想定では、2035年度の全国の需要電力量は8,461億kWh(使用端)になる。2025年度の推定実績が8,034億kWhなので、10年で428億kWhの増加だ。
ただし用途別に分けると、増えているのは一部に限られる。
- 家庭用その他:2,934億kWh → 2,766億kWh(168億kWhの減少、5.7%減)
- 業務用:1,935億kWh → 1,952億kWh(ほぼ横ばい)
- 産業用その他:3,165億kWh → 3,743億kWh(578億kWhの増加、18%増)
家庭の使用量は10年後まで減り続ける想定になっている。人口減少に加えて、節電の定着と省エネ機器への置き換えが効いているためだ。
オフィスや店舗が使う業務用も、経済成長による増加と省エネによる減少が拮抗し、ほぼ動かない。全国の合計が増えるのは、産業用の578億kWhが家庭の減少を吸収してなお余るからだ。
2025年度から2035年度の需要電力量の変化(用途別)
出典:電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」
増加の大半は2業種に集まっている
産業用の増加は、工場全体が底上げされた結果ではない。広域機関はデータセンターと半導体工場の新増設分を「個別計上」として本体の推計から切り出しており、増加分はここに集中している。
2035年度の個別計上は、最大需要電力で762万kW、需要電力量で568億kWh。全国に占める割合はそれぞれ4.63%と6.71%だ。内訳はデータセンターが661万kWで494億kWh、半導体工場が101万kWで74億kWhとなっている。
**全国の需要増は428億kWh。個別計上だけで568億kWhある。**
この2業種を外して計算すれば、日本全体の電力需要は10年後も減っていく姿になる。家庭が10年かけて減らす168億kWhに対して、データセンターが増やす494億kWhは約3倍にあたる。
なお個別計上に入るのは、系統接続の手続きで工事費負担金の契約まで進んだ案件など、実現の確からしさが高いものに限られる。構想を発表しただけの計画は含まれない。
データセンターと半導体工場で増える最大需要電力
出典:電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」個別計上値
送り出す側だった北海道が使う側になる
増え方は全国一様ではない。2025年度から2035年度の需要電力量の年平均増減率は、北海道が1.2%、東京が1.1%で、ほかのエリアを引き離している。四国は1.0%の減少、北陸と東北は横ばいから微減だ。
北海道の中身はさらに偏っている。産業用その他は2026年度の80億kWhから2035年度に121億kWhへと10年で1.5倍になる一方、同じ期間に家庭用は7.7%減る。
千歳で建設が進む半導体工場は、計画する4棟がすべて稼働した場合に60万kW規模の需要になると報じられている。データセンターの立地計画もこれに重なる。
北海道と本州を結ぶ送電線は、もともと風力発電の電気を消費地へ送るために増強が計画されてきた。広域機関のマスタープランは系統増強に総額6兆〜7兆円を見込み、うち海底直流の新ルートが約3兆円を占める。電気を送り出す側だったエリアが、同時に大きく使う側にもなりつつある。
需要電力量の年平均増減率(2025〜2035年度)
出典:電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」
建設計画が遅れれば、設備の手当ても遅れる
この想定で扱いが難しいのは、増加分が特定の建設計画に依存している点だ。
広域機関は今回の想定を前年のものと比べ、2034年度の断面で需要電力量が1.2%下振れしたと説明している。産業用その他に限れば2.7%の下振れだ。理由に挙げられたのは、データセンターの工事延期や設計変更による運転開始時期の後ろ倒しだった。需要が消えたのではなく、届く時期が動いた。
発電所も送電線も、完成までに年単位の時間がかかる。到達時期が1年ずれれば、どの設備をいつ用意するかの判断もそのぶんずれる。
伸びを抑える側の制度も動き出した。2026年4月施行の省エネ法のデータセンター業向け措置では、2030年度までに平均PUEを1.4以下にすることが目標となり、2029年度以降に新設する設備には稼働2年後からPUE1.3以下が求められる。
電気料金をめぐる議論は長く「家庭がどれだけ節約するか」を軸にしてきた。だが需要曲線を動かす要素は、すでに家庭の外側にある。次の10年の論点は節電の呼びかけではなく、増える分に合わせて先回りしてつくる設備の費用を、電気料金と公的負担のあいだでどう配分するかに移る。