防衛費9兆円の半分は、過去に結んだ契約の支払いに回る
翌年度以降の支払い予定は16.8兆円。新しい契約を絞っても残高が増えるのはなぜか
2026-08-07
16.8兆円
翌年度以降に支払いを約束した額
9兆円の内訳を開くと
2026年度の防衛関係費は9兆353億円。前年度より3,349億円増え、14年連続で過去最高を更新した。
ただし、この9兆円は「今年決めた額」ではない。予算書が示すのは「今年支払う額」だ。
防衛力整備計画の対象となる8兆8,093億円の内訳は、性格の異なる3つに分かれる。
- 人件・糧食費:2兆3,897億円
- 歳出化経費(2025年度以前の契約に基づく支払い):4兆5,398億円
- 一般物件費(2026年度に契約して2026年度に払う分):1兆8,798億円
最も大きいのは歳出化経費で、整備計画対象経費の51%を占める。
装備品は複数年度にまたがる契約(原則5年以内)で調達し、支払いを分割する。護衛艦なら4〜5年、航空機は3〜5年、誘導弾は4年程度かかる。
**今年の予算の半分は、過去に結んだ契約で使い道が決まっている。**
2026年度 防衛力整備計画対象経費8兆8,093億円の内訳
出典:防衛省「防衛力抜本的強化の進捗と予算 令和8年度予算の概要」
新しい契約は減っているのに、残高は増える
契約の翌年度以降に支払う分は「後年度負担」と呼ばれる。2026年度予算での残高は16兆8,274億円。2022年度の5兆3,342億円から4年で3.2倍になった。年間予算のおよそ1.9年分が、支払い予定として先に埋まっている計算だ。
見落とされやすいのは、新しく結ぶ契約のほうはむしろ絞られている点だ。新規の後年度負担は2024年度の7兆6,594億円がピークで、2025年度は6兆6,211億円、2026年度は6兆3,808億円と2年続けて減った。
それでも残高は増える。1年間に新しく約束する額(6兆3,808億円)が、その年に支払う過去分(4兆5,398億円)を上回っている限り、差額が翌年度以降に積み残るからだ。実際、残高は2025年度から2026年度にかけて1兆4,388億円増えた。
残高が減り始めるのは、新規の約束が年4.5兆円台という支払いのペースを下回ってからになる。いまの新規契約は、その1.4倍の水準にある。
後年度負担額の推移(防衛力整備計画対象経費)
出典:参議院「立法と調査」No.481(防衛省資料に基づく)
GDP比2%では見えない契約額
防衛費は総額で語られることが多い。GDP比2%という水準は2025年度の補正予算で措置され、当初予定の2027年度から2年前倒しで到達した。2026年度の当初予算では、公共インフラ整備や海上保安庁を含めた防衛関連費が10兆6,000億円規模、GDP比1.9%になる(日本経済新聞の集計)。
一方、その年に新しく契約を結べる額は別に動く。2026年度の新規契約額は整備計画対象経費で8兆2,607億円、前年度より1,725億円(2.0%)減った。
歳出は3.9%増え、契約は2.0%減る。この2つが逆方向に動くのが、いまの防衛予算の姿だ。
財源も公表されている。2022年度当初の5.2兆円からの増加分は、歳出改革0.8兆円、税外収入0.8兆円、防衛力強化資金の取り崩し1.4兆円、税制措置0.7兆円で賄うとされている。現行の整備計画は2027年度までで、必要額43兆円程度のうち歳出ベースで77%、契約ベースでは43.5兆円程度の81%が計上済みだ。
新規後年度負担額の推移(その年に新しく約束した額)
出典:参議院「立法と調査」No.481、財務省「令和8年度防衛関係予算のポイント」
3文書改定で新しく決められる額
政府は2026年中に安全保障関連の3文書を改定する方針を国会で示している。焦点は次の計画期間の総額に集まりやすい。
だが16.8兆円の後年度負担は、次の計画が始まる前から支払い義務として存在する。新しく決められるのは、総額からこの既定分を引いた残りだ。
公表データを並べると、見通しは3つに整理できる。
- 総額を今の水準で保てば、既定の支払いが増えた分だけ、その年に新しく動かせる部分は縮む
- 新規契約を年6.4兆円のペースで続ければ、残高はさらに積み上がる
- 残高を横ばいにするには、新規の約束を年4兆円台半ばまで下げるか、総額をさらに増やすことになる
**次の3文書で予算の使い勝手を左右するのは、GDP比何%という入口の数字より、毎年いくらまで新しく約束するかの上限だ。**
後年度負担の契約年限は原則5年。2026年度に結んだ契約の支払いは2031年度まで続く。次の計画の中身は、今年の契約ですでに一部が決まり始めている。