独自分析
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防衛費8.9兆円は過去最大。哨戒機P-1は19機の計画で9機止まり

防衛費8.9兆円は過去最大。哨戒機P-1は19機の計画で9機止まり

P-1の値段は3年で305億円から460億円へ。防衛省が8月に出した評価資料に、装備の値上がりと数量の進み具合が並んでいる

2026-09-04

460億円

P-1哨戒機1機の価格(3年前は305億円)

過去最大8.9兆円、それでも確定額ではない

防衛省は8月31日、2027年度(令和9年度)の概算要求を決めた。防衛力整備計画の対象経費は歳出ベースで約8.9兆円になる。

ただし、これで確定ではない。年内に改定する安全保障関連3文書の内容に左右される事業は、金額を書かない「事項要求」に回した。年末の予算編成でさらに積み上がる。

「過去最大」というニュースはここで終わる。だが、総額の欄をいくら眺めても、その額で何機、何隻に届くのかは書かれていない。

その手がかりは、4週間前の資料にある。防衛省は8月3日、現行の国家防衛戦略と防衛力整備計画(2023〜2027年度)の評価を有識者会議に出した。「主要な課題」の一つに並ぶのが、物価上昇と為替変動の影響だ。論点は、いくら積むかから、同じ額で何が買えるかに移っている。

同じ装備が3年で3〜7割高くなった

資料は装備品6品目について、令和5年度予算と令和8年度予算の取得価格を並べている。3年間の変化はこうだ。

  • UH-2(多用途ヘリ):28億円 → 46.4億円(約66%増)
  • 哨戒艦:89億円 → 143億円(約60%増)
  • P-1(固定翼哨戒機):305億円 → 460億円(約50%増)
  • SH-60L(哨戒ヘリ):101億円 → 143億円(約42%増)
  • AMV(装甲車):5.2億円 → 7.4億円(約42%増)
  • F-35B(戦闘機):179億円 → 242億円(約35%増)

防衛省は、上昇の要因に能力向上や仕様変更も含まれると注記している。値上がりのすべてが物価と円安によるものではない。

もっとも、前提に置いた数字自体も動いている。国内企業物価指数は2022年平均の114.9から2026年5月の134.5へ、約17%上がった(2020年=100)。計画策定時に想定した為替は1ドル108円で、2026年7月は157〜163円台だった。

装備品の取得価格の上昇率(令和5年度予算→令和8年度予算)

出典:防衛省「現行の国家防衛戦略・防衛力整備計画の評価」(2026年8月3日)

別表2の進捗。F-15の能力向上は54機に18機

同じ資料には、防衛力整備計画の「別表2」の進捗表が載っている。5年間で何をいくつ整備するかを決めた表だ。2026年度予算までの4年分で、予算に計上できた数量はこうなっている。

  • 戦闘機F-35A:40機の計画に32機
  • 護衛艦:12隻に8隻
  • 哨戒艦:10隻に6隻
  • 固定翼哨戒機P-1:19機に9機
  • 空中給油機KC-46A等:13機に6機
  • 輸送機C-2:6機に2機
  • 戦闘機F-15の能力向上:54機に18機

5年計画の4年目までなら、単純な割り算での目安は8割になる。毎年8機ずつ積んだF-35Aは、40機に32機でちょうどその位置にいる。

一方、F-15の改修は36機分、P-1は10機分が最終年度に残った。この2つは、残る1年でこれまでの4年分を上回る数量を計上しなければ計画に届かない。哨戒艦も4隻が残っている。

防衛省は評価資料に「各種事業は概ね計画通りに進捗」と記し、あわせて「装備品の取得価格上昇による、取得への影響も一部あり」とも書いている。

別表2の進捗(4年分で計上した数量が5年計画に占める割合)

出典:防衛省「現行の国家防衛戦略・防衛力整備計画の評価」(2026年8月3日)

人員は2045年に約13万人という試算

値段だけの話ではない。同じ資料は、自衛官の現員が計画策定時の2022年度から約1万人減ったと書いている。そのうえで、いまの傾向が続いた場合の機械的な試算を載せた。2035年に約18万人、2045年に約13万人。2024年度の約22万人と比べて、それぞれ約4万人、約9万人少ない。

防衛省自身が、この試算を添えて「中長期的に現在と同水準の組織体制を維持することは困難」と書いた。装備を計画どおり買えたとしても、動かす人員はこの見通しの上にある。

年末の予算編成では、8.9兆円がどこまで積み上がるかが報じられる。ただ、前年をいくら上回ったかを追っても、何機、何隻に届いたかはわからない。単価が3年で5割上がる局面では、総額の伸びと数量の伸びは一致しないからだ。

見る欄は総額ではなく、別表の数量と、その横にある単価だ。年内の3文書改定でこの別表がどう書き直されるかが、次の8.9兆円が何に変わるかを決める。

自衛官現員の機械的試算(現在の傾向が続いた場合)

出典:防衛省「現行の国家防衛戦略・防衛力整備計画の評価」(2026年8月3日)