独自分析
防衛費無人機安保3文書ドローン防衛産業
防衛費9兆円、ミサイルは9,733億円でドローンは1,001億円

防衛費9兆円、ミサイルは9,733億円でドローンは1,001億円

安保3文書改定で初めて「無人機・AI」が防衛戦略の柱になった。だがウクライナが示した「7万円対6.6億円」のコスト非対称に対し、予算配分の構造転換はまだ始まったばかりだ

2026-06-24

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FPVドローンと戦車のコスト比

4年で1.7倍、9兆円に達した防衛費の中身

2026年度の防衛関係費は9兆353億円。2022年度の5.4兆円から4年で1.7倍に膨らんだ。

GDP比は1.9%に達した。2027年度には関連経費を含め約11兆円、GDP比2%に届く見通しだ。

政府は2022年12月に策定した安保3文書を年内に改定する方針だ。当初の2027年を前倒しした背景には、ウクライナ侵攻と中東情勢の変化がある。

だが注目すべきは改定時期より、予算の配分だ。

最大の配分先はスタンドオフ防衛能力(長距離ミサイル)で9,733億円。統合防空ミサイル防衛が5,091億円。この2分野で約1.5兆円を占める。

一方、「新しい戦い方」の柱に据えられた無人アセット(SHIELD構想)は1,001億円。ミサイルの約10分の1だ。

6月に自民党がまとめた提言は「無人機とAIによる戦場の変化」を強調した。予算の重心はまだミサイルにあるが、無人機への配分は着実に増えている。

防衛関係費の推移(当初予算)

防衛省

SHIELD構想 ── 「数千機で1001億円」と「4機で765億円」

SHIELDは2027年度までに構築を目指す多層的沿岸防衛体制だ。10種類の無人機を計数千機配備する。

主な構成: - 艦艇攻撃用UAV(航空自衛隊) - レーダーサイト防衛用UAV(航空自衛隊) - 小型攻撃用UAV 3種(陸上自衛隊) - 艦載型小型UAV V-BAT(海上自衛隊) - 水中・水上無人機 USV/UUV(陸海自衛隊)

数千機で1,001億円。1機あたり数百万円の計算になる。

対照的なのがMQ-9Bシーガーディアンだ。米国製の大型滞空型無人機で、4機の地上設備込みで765億円。1機あたり約191億円になる。

「大量・安価」のSHIELDと「少数・高額」のMQ-9B。二つの路線が一つの予算の中で並走している。安保3文書改定がどちらに重心を移すかが、今後の調達構造を方向づける。

2026年度 防衛予算の注力分野

防衛省 令和8年度予算案

「7万円対6.6億円」── ウクライナが実証したコスト構造

SHIELDの「大量・安価」路線にはウクライナ戦争の教訓がある。

ウクライナでは約500ドル(約7万円)のFPVドローン3機が、約6.6億円のロシア軍戦車T-90Aを破壊した事例が報告されている。1機あたりのコスト比は約1対9,000だ。

FPVドローンはECサイトで調達できる民生品で組み立てられる。戦場で消耗しても翌日には補充できる。この速度感が従来兵器との構造的な違いだ。

コスト非対称は防空にも当てはまる。安価なドローンの飽和攻撃に高額な防空ミサイルで対処し続ければ、先にコスト負けするのは防御側になる。

自民党の提言が「迎撃無人機」と「高出力レーザー兵器」を明記した理由はここにある。安価な攻撃には安価な手段で対処する体制が必要になった。

安保3文書改定が「少なくとも年単位の継戦能力」を求めたのも、ドローン時代の消耗戦が念頭にある。弾薬備蓄に加え、無人機を消耗品として供給し続ける体制そのものが「継戦」の意味を変えつつある。

問われるのは金額ではなく産業構造の転換速度

日本の防衛産業は「少数の高性能装備を長期間かけて作る」モデルで動いてきた。護衛艦1隻に数百億円、戦闘機1機に数十億円をかける世界だ。

ドローン戦争が求めるのは逆の構造だ。FPVドローンは民生品のモーターやカメラで構成され、3Dプリンターで即日生産できる。ウクライナは月産数万機の体制を築いた。

経済産業省は2024年12月に「無人機産業基盤強化検討会」の中間取りまとめを公表した。防衛用ドローンの国内量産体制を打ち出したが、民間ドローンメーカーと防衛企業の接点はまだ少ない。

2026年度の概算要求では無人機沿岸防衛に3,128億円が計上された。来年度以降さらに拡大する見込みだ。

予算は9兆円に達し、安保3文書は「新しい戦い方」を正面に据えた。方針は動いた。今後の焦点は、「精密兵器を少数作る産業基盤」が「安価な無人機を大量に量産する基盤」へどの速度で転換できるかにある。