衆議院の定数削減、40年で92人減りOECD36位。それでも「多い」のか
衆議院465→420人の自動削減法案が審議入りした。世論の5割超が賛成する「改革」だが、日本の下院議員数はOECD38カ国中36位、G7ではアメリカに次いで少ない。45議席の内訳が選挙制度のバランスをどう変えるかが問われている
2026-07-03
36位/38
日本の下院議員数 OECD順位
465人から420人へ
2026年7月1日、衆議院の政治改革特別委員会で議員定数削減法案の質疑が始まった。連立与党が2025年12月に合意し、今国会での成立を目指す法案だ。
法案の骨格はこうなっている。
- 現行465議席を「420人を超えない範囲」に削減
- 小選挙区を25、比例代表を20減らす(計45議席)
- 施行から1年以内に結論が出なければ、45議席が自動的に削減される
期限付きの「自動削減条項」がこの法案の特徴だ。与野党が合意できなくても、法の効力で議席が減る仕組みになっている。
時事通信の世論調査では成立賛成が5割を超えた。「議員を減らす」は有権者の支持を集めやすい改革テーマだ。
ただし45議席をどう配分して減らすか──小選挙区と比例のバランスが変わることの影響は、別の論点として残っている。
衆議院定数の推移
衆議院
OECD38カ国中、36位
日本の衆議院は、すでに小さい。
人口あたりの下院議員数で比較すると、OECD加盟38カ国中36位。議院内閣制の国に限れば最下位だ。
両院合計の人口100万人あたり議員数をG7で並べてみる。
- イギリス: 21.1人
- フランス: 14.3人
- カナダ: 11.1人
- イタリア: 10.3人
- ドイツ: 9.7人
- 日本: 5.8人
イギリスの約4分の1。G7で日本より少ないのはアメリカ(約1.6人)だけだ。議員1人あたりの人口は約17万人で、イギリスの約4.7万人と比べると3.6倍の開きがある。
衆議院の定数は1986年の512人から段階的に減ってきた。1993年に500人、2000年に480人、2017年に465人。法案が成立すれば420人となり、40年間で92人、率にして18%の削減だ。過去30年の削減率はG7で3番目に大きい。
G7 人口100万人あたり国会議員数(両院合計)
選挙ドットコム / 列国議会同盟(IPU)
比例20議席を削ると何が変わるか
45議席の削減は均等ではない。小選挙区25に対し比例代表20。この配分が、制度のバランスを変える。
現在の衆議院は小選挙区289・比例176の計465議席で、小選挙区の比率は62.2%だ。
削減後は小選挙区264・比例156の計420議席。小選挙区比率は62.9%に上がる。
0.7ポイントの変化に見えるが、比例代表の仕組みに注目したい。比例は得票率に応じて議席を配分する。176議席が156議席に減れば、1議席を得るための必要得票数は約13%増える。
小選挙区は各区の1位だけが当選する仕組みだ。比例代表は幅広い得票を議席に変換する。比例の枠が縮小すれば、得票率5%前後の政党が議席を確保するハードルが上がる。
これは特定政党の損得ではなく、選挙制度が票を議席に変換する精度の問題だ。
問われているのは「配分」だ
定数削減は有権者にとってわかりやすい改革だ。「税金で養う議員を減らす」は直感的に支持を集める。
だがOECD36位というデータは、日本の議員数が国際水準で「多すぎる」状態にはないことを示している。
加えて、日経新聞の試算によれば小選挙区25議席の削減で20都道府県の定数が減る。東京や神奈川でも複数議席が減少し、人口の多い首都圏で議席が減ることで1票の格差が拡大するリスクも指摘されている。
論点は3つに整理できる。
- 小選挙区と比例の配分比率をどう設計するか
- 20都道府県で減る議席をどの地域に割り当てるか
- 1票の格差をどこまで許容するか
いずれも「何人減らすか」ではなく「どう配分するか」の問題だ。削減数が決まった先で、小選挙区と比例の制度設計をどう詰めるかが、420人の国会の性格を左右する。