独自分析
統合イノベーション戦略2026博士2万人任期付き教員学校基本調査科学技術指標2026
博士号は年2万人へ。40歳未満の国立大教員は6割が任期付き

博士号は年2万人へ。40歳未満の国立大教員は6割が任期付き

7月10日に決まった統合イノベーション戦略2026は、2030年度に博士号取得者を年2万人と置いた。いまより3割増だ。一方で40歳未満の任期なし教員は1万1,083人から6,864人に減っている

2026-10-06

61.3%

40歳未満の国立大教員のうち任期付きの割合

博士課程に進む人は増え始めた

8月26日に公表された令和8年度学校基本調査の速報値で、大学院の在学者は28万4,802人になった。前年度より7,670人増えて過去最多だ。

内訳はこうなっている。

  • 博士課程 8万2,170人(前年度比2,610人増)
  • 修士課程 17万9,785人(同4,824人増)
  • 大学全体の在学者 300万542人(初めて300万人を超えた)

お金の面も厚くなった。博士後期課程の学生を支える次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)は、生活費相当として年180万円から、研究費を合わせて1人あたり年290万円を上限に配る。令和5年度には1万564人が受けている。

ただ、進学の割合そのものは大きく動いていない。修士課程を修了して大学院へ進んだ人は11.2%で、前年度から0.3ポイント上がった水準だ。78.2%は就職している。

**在学者が増えたのは、修士から博士へ進む割合が跳ねたからではない。**

修士課程を修了した人の進路(令和7年度)

出典:文部科学省「令和7年度学校基本統計」

年2万人という目標の書き方

7月10日、政府は統合イノベーション戦略2026を決めた。「科学の再興」を掲げ、研究基盤と人材育成を柱に置いている。

数値目標として報じられたのは2つだ。

  • 2030年度に博士号取得者を年2万人にする(いまは年およそ1万5,000人で、3割増が必要)
  • 若手研究者の海外派遣を累計3万人にする

処遇にも手が入る。優秀な学生に年約240万円を出す特別研究員制度を広げ、月約20万円の研究奨励金を民間企業の初任給の水準まで上げる方針だ。科研費の拡充も並んでいる。

投じる額はすでに増えている。研究開発費のうち政府が負担する分は、2020年の2.7兆円から2024年の3.7兆円になった。総額22.1兆円は世界3位、研究者70.3万人も3位だ。

並んでいる数値目標は、取得者数と派遣者数という入口側のものだ。修了した人が何年後にどんな職にいるかという数字は、この並びには入っていない。

修了した先に空いている席

出口の側は逆に動いている。文部科学省が85の国立大学を調べた資料では、40歳未満の本務教員の内訳が平成19年度から次のように変わった。

  • 任期付き 4,948人 → 1万888人(2.2倍)
  • 任期なし 1万1,083人 → 6,864人(約4,200人減)
  • 任期付きの割合 30.9% → 61.3%

**40歳未満の国立大教員は、3人に2人近くが任期付きだ。**

任期なしへ移る道は用意されている。テニュアトラック制の導入率は85%(89機関中75機関)で、任期は原則5年が多い。令和7年度の新規採用は606人、審査を通ってテニュアを得たのは391人だった。

国の採用はもっと少ない。令和7年4月1日に博士号取得者を1人以上採った府省等は9つ、合わせて60人だ。在籍する2,076人のうち約3分の2は、入省より前に博士号を取っている。

年に1万5,000人が博士号を取る一方で、任期なしに近づく枠は数百人という勘定になる。

40歳未満の国立大学本務教員の内訳(85大学)

出典:文部科学省「人事給与マネジメント改革基礎資料」(2026年3月)

入口の人数では拾えない数字

投入の指標は動いている。政府負担の研究開発費は4年で1兆円増え、論文の総数は世界5位の年6万6,214本、研究者数も3位だ。

成果の指標は動いていない。科学技術指標2026で、他の論文に多く引用される上位10%の論文数(分数カウント)は13位の3,163本で、前年と変わらなかった。1位の中国は8万4,392本、2位の米国は2万9,911本だ。上位1%の論文も12位にとどまる。

投入と成果のあいだにあるのが、6割が任期付きという雇用の形だ。5年で結果を出して次の公募に備える働き方と、10年かけて見通しを立てる研究テーマは、時間の単位が合わない。

だから、年2万人という目標が2030年度に達成されても、修了5年後に任期のない職にいる人の割合が今のままなら、13位という数字は動きにくい。

**この目標が数えているのは入口の人数だ。出口の席は、別に数えないと見えてこない。**

上位10%論文数(分数カウント、日本は13位)

出典:科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2026」