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光熱費「トリプルパンチ」の正体 ── 補助金ゼロ・再エネ賦課金最高値・原油高が重なる2026年夏

光熱費「トリプルパンチ」の正体 ── 補助金ゼロ・再エネ賦課金最高値・原油高が重なる2026年夏

5月から月4,000円超の負担増。さらに夏にはイラン危機の原油高が電気料金に本格波及する。

2026-05-16

月4,000円超

5月からの光熱費負担増(標準世帯)

「三重苦」の5月 ── なぜ今、光熱費が一気に上がるのか

2026年5月、日本の家庭は光熱費の「三重苦」に直面している。電気・ガス料金の政府補助金が完全終了し、再生可能エネルギー発電促進賦課金は過去最高の4.18円/kWhへ上昇。さらにイラン情勢悪化による原油高が、数カ月遅れで夏の料金に波及する。

資源エネルギー庁によると、標準世帯(月260〜400kWh使用)で月2,000〜4,000円以上の負担増が見込まれる。第一生命経済研究所の永濱利廣氏は、2025年から2026年にかけて4人家族で年約8.9万円、政府対策を差し引いても約6.4万円の純負担増と試算する。

問題は、値上げが時間差で来ることだ。5月に補助金終了と賦課金改定、7〜8月に燃料費調整が重なり、冷房需要が高まる真夏に負担のピークが来る。実質賃金改善の効果が、光熱費上昇で薄れる恐れがある。

5月の家計光熱費・負担増の内訳(標準世帯・月額)

資源エネルギー庁・各社試算より作成

補助金「完全終了」の衝撃 ── 2年半続いた支援が消える

2023年1月に始まった電気・ガス料金の負担軽減策は、約2年半にわたり家計を支えてきた。最盛期には電気1kWhあたり7円、月400kWh世帯で約2,800円の補助があり、エネルギー価格高騰を大きく和らげた。

補助額はその後、2023年9月以降3.5円/kWh、2024年5月に1.8円/kWhへ縮小。2026年1〜2月使用分は低圧4.5円/kWh、3〜4月使用分は1.5円/kWhだったが、5月使用分からゼロになった。都市ガスも標準家庭で月500〜1,000円の負担増となる。

電気・ガスを合わせると、4月と5月の請求で2,000円前後の差が出る可能性がある。政府が終了に踏み切った背景には、2023年1月から2026年4月までで総額6兆円超とされる財政負担がある。ただ、物価高が収まらない中での打ち切りには、今後も議論が残る。

電気料金補助単価の変遷(低圧・家庭向け)

資源エネルギー庁

再エネ賦課金4.18円 ── 「見えにくい電気代」が過去最高を更新

もう一つの負担増が、再生可能エネルギー発電促進賦課金だ。経済産業省が2026年3月19日に公表した2026年度単価は4.18円/kWhで、前年度の3.98円から0.20円上昇し、制度開始以来の最高値となった。新単価は2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用される。

再エネ賦課金は、2020年度2.98円、2021年度3.36円、2022年度3.45円と上昇してきた。2023年度は1.40円/kWhに下がったが、化石燃料高で回避可能費用が増えた特殊要因によるものだった。その後は2024年度3.49円、2025年度3.98円、2026年度4.18円と再び上がっている。

月300kWhの家庭では、再エネ賦課金だけで月1,254円、年約15,000円の負担になる。月400kWhなら年2万円超だ。FITの高値契約は20年続き、2012年当初の太陽光40円/kWh契約は2032年まで残るため、負担は下がりにくい。政府は蓄電池やVPP活用を進めるが、効果は2030年代以降と見られる。

再エネ賦課金単価の推移(2020〜2026年度)

経済産業省

「本番」は夏 ── 原油高の電気料金への波及は7月から

5月の値上げは、まだ序章かもしれない。2026年2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃とホルムズ海峡の通航制限を受け、原油価格はWTIで一時110ドル/バレルを超えた。日本の燃料費調整制度は3〜5カ月前の原油・LNG・石炭の平均輸入価格を反映するため、家計への影響は早くて7月、本格化は8月以降となる。

ブルームバーグは、地域や電力会社により差はあるものの、標準家庭で夏場に月1,000〜2,500円程度の追加負担が生じる可能性を指摘している。すでに5月時点で月2,000〜4,000円上がる中、冷房で使用量が通常月の1.5〜2倍になる8月は、負担感がさらに強まる。

ガソリンは暫定税率廃止(2025年12月31日、25.1円/L減税)と政府補助金(5月14日時点42.6円/L)により、全国平均169.4円/L(5月11日時点)で推移している。ただし補助金縮小と原油高が続けば、夏以降に再上昇する恐れがある。物流費を通じ、食品価格にも波及しかねない。

政策対応の選択肢 ── 「補助金復活」か「構造改革」か

対応をめぐり、与野党の主張は分かれている。野党第一党の中道改革連合や国民民主党は、電気・ガス補助金の即時復活を要求。国民民主党はさらに、光熱費に含まれる消費税10%を時限的に免除する「電気代消費税ゼロ」も掲げる。

与党内では日本維新の会が、電力自由化の推進や再エネ賦課金制度の見直しなど、規制改革によるエネルギーコスト削減を主張している。高市政権は、原発再稼働の加速を中長期の解決策と位置づける。原発稼働が増えれば、燃料費調整の抑制と再エネ賦課金の将来的低減につながるとの考えだが、夏の高騰には間に合わない。

短期策としては、電力会社の切り替え、省エネ家電への買い替え補助、太陽光パネルや蓄電池の導入支援がある。経済産業省は「省エネポータルサイト」で節電効果の試算を提供しているが、設備投資の余裕がない世帯には限界がある。低所得世帯や年金生活者への重点支援が、今夏の焦点になりそうだ。