食料品の消費税は1%に下がる。残り1%を返す給付は、働いて稼いだ人が対象だ
2027年4月から2年間、飲食料品の税率が8%から1%になる。残る1%分を配る就業者負担軽減支援金は一定の勤労所得が要件で、食費が消費支出の29.9%を占める高齢夫婦の無職世帯は入口に届かない
2026-10-07
29.9%
高齢夫婦の無職世帯で食費が占める割合
「実質ゼロ」は二つの仕組みを足している
2026年9月15日、政府は飲食料品の消費税率を引き下げる大綱を閣議決定した。
期間は2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間。税率は8%から1%になる。内訳は国税0.78%と地方税0.22%相当で、2年間の減収は10兆円規模と見込まれている。
残る1%分は、新しくつくる就業者負担軽減支援金で返す。大綱はこれを「飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲で実施する支援金制度」と書いている。
つまり「食料品の実質ゼロ」は、性格の違う二つの仕組みの足し算だ。
- 7ポイント分は税率の引き下げ。レジを通れば誰にでも自動で効く
- 1ポイント分は現金給付。受け取るには要件を満たす必要がある
届く相手は同じではない。しかも給付の入口に置かれたのは、所得ではなく「働いて得た所得」だ。
食費の比率が高いのは、働いていない世帯
総務省の家計調査によると、2025年の二人以上の世帯のエンゲル係数は28.6%だった。前年より0.3ポイント上がり、1981年以来44年ぶりの高さになっている。
食料への支出は月94,895円。名目では5.5%増えたが、実質では1.2%減った。買う量を減らしても、支払う金額は増えている。
食費の比率がとくに高いのは、高齢の無職世帯だ。
- 65歳以上の夫婦のみの無職世帯:消費支出263,979円のうち食料が78,964円(29.9%)
- 65歳以上の単身無職世帯:消費支出148,445円のうち食料が42,545円(28.7%)
二人以上の世帯に占める無職世帯の割合は34.8%で、上昇が続いている。
食費の比率が高い世帯ほど、減税の効き方は大きい。税率が下がるのは外食と酒類を除いた飲食料品なので、食費の9割が対象だと仮定すると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では月4,600円ほど、年で5万5千円前後軽くなる。
ここまでは、狙いどおりに届く。
1か月の食料への支出(2025年平均)
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均(速報)」
給付の入口に並ぶ三つの基準
性格が違うのは、残る1%分のほうだ。大綱は支援金の対象を「一定の勤労所得がある者」と定め、三つの基準を置いた。
- 所得下限額:勤労所得がこの額を超えること。検討されている水準は給与収入で約53万円超、74万円超、約106万円超のいずれか
- 純負担基準額:純負担(税と社会保険料の負担額から公的年金等を差し引いた額)がこの額を超えること
- 所得上限額:合計所得金額がこの額以下であること
支援額が増え始める起点は、個人住民税の所得割が課税される水準に置かれている。単身の非課税限度額は、給与収入119万円にあたる。
二つ目の基準があるのは、現役並みの負担がある中低所得の高齢者も対象に含めるためだ。ただし純負担は公的年金等を受け取るほど小さくなるため、年金が収入の柱なら基準には届きにくい。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入は254,395円で、うち社会保障給付が228,614円、89.9%を占める。勤め先収入は7,004円、事業・内職収入は6,203円で、有業人員は0.09人だ。
食費の比率がもっとも高い世帯が、勤労所得という入口の手前にいる。
夫婦高齢者無職世帯の1か月の実収入の内訳
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均(速報)」
2029年4月、税率だけが先に戻る
減税は2年で終わる。2029年4月1日、飲食料品の税率は8%に戻る。
支援金のほうは、2029年度から本格導入される。大綱は同じ2029年4月に、前年度の受給資格者へ半年分相当を先行して支給すると書いた。給付付き税額控除の第一歩という位置づけだ。
二つを並べると、この2年間に起きるのは負担軽減の受け手の入れ替えだとわかる。
- 2027年4月から2029年3月:全員に効く7ポイントと、勤労者向けの1ポイント
- 2029年4月以降:勤労者向けの給付だけ
受け取り方も変わる。支援金は市町村への請求がいるが、公金受取口座があれば職権で認定できる。大綱は国に「公金受取口座登録者数を増加させるための措置」を求めた。4月15日時点で受取口座が未登録の65歳以上の年金受給者は約1,600万人おり、8月から年金の受取口座をそのまま登録する特例が始まっている。
口座の側は整っていく。一方で2029年4月を過ぎると、食料品の負担を軽くする手段は支援金だけになる。食費が消費支出の3割を占める高齢の無職世帯にとって、2年間の軽減は期限付きで消え、残るのは入口の手前にある給付だ。所得下限額と純負担基準額の水準は、まだ一つも決まっていない。2029年4月以降に食費の手残りを左右するのは税率ではなく、この二本の線の引き方になる。
飲食料品にかかる消費税率
出典:内閣官房「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(2026年9月15日閣議決定)