独自分析
消費税食料品減税給付付き税額控除社会保障国民会議
食料品の消費税1%減税、恩恵は年収250万で4.8万・1500万で8.2万円

食料品の消費税1%減税、恩恵は年収250万で4.8万・1500万で8.2万円

議長案は1%引き下げ+所得連動給付で「実質ゼロ」を掲げる。だが減税の恩恵は年収250万円台で4.8万円、1500万円超で8.2万円。給付でこの傾斜を補正できるかが制度の分岐点になる

2026-06-18

1%

食料品消費税 議長案

「ゼロ」が「1%+給付」に変わった方程式

6月17日、社会保障国民会議の議長が「方向性」案を提示した。

2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を現行8%から1%に引き下げる。残る1%分は中低所得の現役勤労者に所得連動の給付で補填し、「実質ゼロ」を実現する。これが骨格だ。

出発点にあったのは衆院選で議論された「食料品消費税ゼロ」の実現だ。0%にしなかった理由は技術的制約にある。レジシステムの改修は0%対応に約1年かかるが、1%なら半年で済む。2027年4月の実施を逆算すると、1%が現実的な選択肢になる。

ただし「1%を残す」ことで、制度に構造的な特徴が生まれた。減税と給付を組み合わせる二階建て方式は、所得階層ごとに「ゼロの届き方」が異なる。

減税額に残る「年収の傾斜」

第一生命経済研究所の試算が、その構造を可視化する。食料品が免税になった場合の負担軽減額は、4人家族の平均で年6.4万円だ。

ところが所得階層で差がつく。

  • 年収250〜300万円世帯:約4.8万円
  • 平均世帯:約6.4万円
  • 年収1,500万円以上世帯:約8.2万円

高所得世帯ほど食料品への支出額が大きいため、税率引き下げの恩恵も比例して大きくなる。消費税の「逆進性」と呼ばれる構造だ。

可処分所得に対する消費税負担率で見ると、中間層(年収650〜700万円)が5.9%で最も重く、高所得層は3.7%にとどまる。税率を一律に下げるだけでは、負担感の大きい中間層に恩恵が集中しない。

所得階層別 食料品免税時の年間負担軽減額(4人家族)

第一生命経済研究所

給付が届く範囲と届かない範囲

議長案が二階建て方式にした理由は、この傾斜を給付で補正するためだ。年約6,000億円規模を所得に応じた4段階で配分する設計になっている。

ただし対象は「中低所得の現役勤労者」に限られる。ここに構造的な問いが3つある。

  • 年金生活世帯の扱い。高齢者世帯はエンゲル係数が高い傾向にあるが、「現役勤労者」の定義から外れると給付対象にならない
  • 共働き中間層の線引き。配偶者に高額所得がある場合は支援を絞る設計で、世帯合算では「1%のまま」に留まる層が生まれうる
  • 年収の壁との重なり。社会保障の壁を超えると給付が増額される設計だが、壁前後での就労判断を複雑にする可能性がある

給付の精度が、「実質ゼロ」の実質を左右する。

「暫定2年」と2029年の分岐点

この制度は2年間の暫定措置として設計されている。2029年度に給付付き税額控除を本格導入し、恒久制度に移行する計画だ。

だが2029年の制度設計は議論の途上にある。対象所得の定義、控除額の算定方式、申告の仕組み。詳細はこれからだ。

もう一つの未確定要素が財源になる。食料品消費税の引き下げで地方の減収は年約2兆円と試算されている。2年間で約4兆円規模の代替財源が必要だ。

主要国を見ると、イギリス・カナダ・豪州・韓国は食料品をゼロ税率にしている。日本の現行8%はG7でも高い水準にあり、1%への引き下げはその差を大きく縮める一歩になる。

ただし暫定措置は往々にして長期化する。2年後に1%が「新たな標準」として定着するか、0%へ進むかは、2029年の給付付き税額控除がどこまで精緻に設計されるかにかかっている。

主要国の食料品に対する付加価値税率(英・加・豪・韓は0%)

財務省