独自分析
消費税給付付き税額控除所得連動給付税制改正大綱エンゲル係数
食料品の消費税1%は2年で終わる。2029年4月からは給付が引き継ぐ

食料品の消費税1%は2年で終わる。2029年4月からは給付が引き継ぐ

税制改正大綱の原案が9月8日に示された。実質ゼロにする最後の1%分は「就業者負担軽減支援金」という給付でつくる。給付の要件は勤労性の所得だ

2026-09-09

1%

2027年4月からの飲食料品の消費税率(2年間)

1%になるのは2027年4月から2年間

政府の税制改正大綱の原案が9月8日、自民党の税制調査会の部会に示された。飲食料品の消費税率を、2027年4月1日から2029年3月末までの2年間、1%に下げる。

対象は軽減税率が適用されている飲食料品に限られる。外食と酒類は入らず、同じ8%の新聞も据え置かれる。

ゼロ税率は選ばれなかった。理由は事務にかかる時間だ。ゼロにするとレジの改修に10か月から12か月かかるのに対し、1%なら5か月から6か月で間に合う。

残る1%分は給付で埋める。「就業者負担軽減支援金」として2027年度と2028年度に税率1%相当の約6,000億円を配り、食料品の消費税を実質ゼロにする。減税と給付を合わせた規模は年約5兆円、2年間で国と地方を合わせて10兆円近くになる。

つまり「実質ゼロ」の一部は税率ではなく給付でできている。そして給付には、受け取る人の要件がつく。

飲食料品の消費税率の予定

出典:政府「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針、税制改正大綱の原案

2029年4月、残るのは給付だけ

2年が終わると、食料品の税率は8%に戻る。あとに残るのは給付だ。

2029年度から「所得に連動したきめ細かな給付」が本格導入される。大綱の原案は、税率が戻る2029年4月に「半年分相当額を基本とした額」を先に配ると書いている。支給は通常なら毎年秋の年1回だが、負担増が4月に先に来るため、2029年度だけ年2回になる。

ここで制度の性格が入れ替わる。

  • 2027年4月から2029年3月:税率1%と給付の組み合わせ。税率は買う人すべてに効く
  • 2029年4月以降:税率は8%に戻り、負担を軽くするのは給付だけ

その給付には要件がある。8月5日に閣議決定された基本方針は、対象を勤労性の所得があり、税や社会保険料を一定額負担している中低所得の現役勤労者と置いた。

給与所得と事業所得のほか、業務にかかる雑所得も含むため、フリーランスや個人事業主も入る。判定は個人単位で、単身者も対象だ。

給付額と対象になる所得水準はまだ決まっていない。実務者会議では、年収270万円程度で給付が消える案が示されている。

食料費の割合が最も高いのは無職の高齢世帯

2025年の家計調査では、二人以上の世帯の食料費は月94,895円、エンゲル係数は28.6%で前年から0.3ポイント上がった。

このうち外食16,563円と酒類3,784円は減税の対象外で、残る74,548円が1%の対象になる。

世帯の型を分けると、支出額と負担の重さは逆に動く。

  • 二人以上の世帯(平均):食料 月94,895円
  • 65歳以上の夫婦のみの無職世帯:78,964円
  • 65歳以上の単身無職世帯:42,545円

金額は平均より少ない。それでも消費支出に占める食料の割合は、65歳以上の夫婦のみの無職世帯が29.9%と、二人以上の平均を上回る。

この世帯の実収入は254,395円で、その89.9%が社会保障給付だ。有業人員は0.09人しかいない。

食料への支出が家計に最も重くのしかかる層は、給付の入口である勤労性の所得をほとんど持っていない。

世帯の型別の食料費(2025年平均、1か月)

出典:総務省統計局 家計調査(2025年平均)

線を引くのは年齢ではなく就業

基本方針は年齢で線を引いていない。働いていて負担が現役並みにある高齢者は含める、という考え方を採っている。

この線引きは、就業率の分布とそのまま重なる。2025年の就業率は65歳から69歳が54.5%、70歳から74歳が36.2%、75歳から79歳が22.1%。年齢が上がるほど、給付の外に出る人が増えていく。

65歳以上の就業者は930万人で過去最多になった。それでも65歳以上人口3,619万人の4分の1ほどだ。

低所得の年金受給者には、月5,000円を基準とする年金生活者支援給付金がすでにある。ただしこれは、消費税率10%への引き上げを財源に作られた別の制度だ。

2年間の減税は、誰が買っても同じだけ効く。2029年4月にそれが給付へ置き換わると、効き方は所得と就業の有無で分かれる。

2029年度以降の設計はまだ法律になっていない。決まっていないのは給付額と対象の所得水準で、勤労性所得という要件を残したまま線を引けば、食料費の割合が最も高い無職の高齢世帯は給付の外側に置かれる。この扱いをどうするかが、法案化の段階で残る論点になる。

年齢階級別の就業率(2025年)

出典:総務省「労働力調査」(内閣官房 社会保障国民会議 資料)