独自分析
フリーランス法公正取引委員会買いたたき取引条件の明示業務委託
フリーランス法の違反2,727件。買いたたきと認められたのは250件だった

フリーランス法の違反2,727件。買いたたきと認められたのは250件だった

公取委が1年間で措置したのは1,552件。最も多いのは報酬の支払い遅れと、取引条件を書面で渡していないこと。勧告10件には全件に明示義務違反が入っていた

2026-09-11

250件

買いたたきの認定(違反2,727件のうち)

1年で1,552件の措置

公正取引委員会が6月10日に公表した資料に、フリーランス法の1年分の数字が並んでいる。

この法律が縛るのは、仕事を受ける側ではなく発注する側だ。従業員を雇わずに働く人へ業務を委託する事業者に、取引条件を書面などで示すことと、期日どおりに支払うことを義務づけている。

令和7年度に処理した違反被疑事件は1,597件。うち1,552件で勧告か指導の措置をとった。

施行直後の年度と比べると、動き方は大きく変わった。

令和6年度(2024年11月から2025年3月までの5か月)は、申告92件、処理96件。措置は指導54件だけで、勧告はゼロだった。

令和7年度は申告604件、新規着手1,626件。5か月と12か月という期間の差をならしても、申告は月あたり2.7倍に増えている。

**勧告は10件出た。**

ただし措置の99.4%は指導で、勧告まで進むのは0.6%にとどまる。

違反の8割を占める2つの項目

1,552件の措置に対して、認定された違反行為は2,727件ある。1つの取引で複数の違反が重なるためだ。

内訳はこうなっている。

  • 期日における報酬支払義務違反:1,135件(41.6%)
  • 取引条件の明示義務違反:1,126件(41.3%)
  • 買いたたき:250件(9.2%)
  • その他:216件

上の2つで82.9%を占める。どちらも「いくら払うか」ではなく、「いつ払うと決めたか」「書面を渡したか」を問う規定だ。

フリーランス法は、発注から60日以内に報酬を払うことと、業務内容や報酬額など9項目を書面などで明示することを義務づけている。措置が集まっているのは、この2つの入口だった。

報酬の水準そのものを争う買いたたきは250件で、全体の1割に届かない。

令和7年度に認定された違反行為の類型別件数

出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」

勧告10件すべてにあった違反

勧告10件の中身を見ると、その偏りはもっとはっきりする。

認定された類型は、取引条件の明示義務違反が10件、期日における報酬支払義務違反が9件、報酬の減額が1件、不当な経済上の利益の提供要請が1件。1件で複数の類型が認定されるため、合計は10を超える。

**明示義務違反は、10件すべてに入っている。**

書面やメールを渡したかどうかは、記録が残っていれば判断がつく。相場の調査も、当事者の言い分の突き合わせも要らない。

買いたたきはそうはいかない。「通常支払われる対価に比べて著しく低い」ことを、同種の取引と比べて確かめる必要がある。

9月2日に公取委が出した勧告も同じ形だった。郵便物の配達などの業務委託で取引条件を明示せず、報酬の支払いが最長で約4か月遅れたと認定されている。

勧告10件で認定された違反行為の類型

出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」

論点は手続きから金額へ

内閣官房の試算では、この法律が対象とする働き手は462万人。本業が214万人、副業が248万人だ。

フリーランス法には、施行後3年をめどに規定を検討するという附則がある。起点は2024年11月なので、2027年11月あたりが見直しの目安になる。いま出ている数字は、その検討の材料になる。

読み方は2つある。

  • 書面の明示が行き渡れば、「書いていない」型の違反は減っていく
  • 減ったぶん、残るのは報酬額をめぐる争いになる

買いたたきの認定が9.2%にとどまっているのは、そうした取引が少ないからとは限らない。同種の取引と比べて「著しく低い」と示す立証の難しさが効いている可能性がある。

契約書の様式は、勧告を受けた側がすぐに直せる部分でもある。9月の勧告を受けた事業者は、11月末をめどに全取引先と契約を結び直すと公表している。書式は入れ替えられるが、単価はそこに含まれない。

書面が行き渡ったあとに残るのは、金額の妥当性を誰がどう測るかという問題だ。見直しの論点は、手続きから金額へ移っていく。