レアアースは掘れる国が増えても、加工は中国に9割集中したまま
G7エビアン・サミットで初の数値目標「依存度60%未満」。日本の対中依存は89.8%→62.9%に下がったが、世界の精錬能力の91%は中国に集中したまま。鉱石の調達先を変えても、加工拠点が1カ国に偏る限り、供給途絶リスクは形を変えて残る
2026-06-30
91%
レアアース精錬の中国シェア(2024年)
G7が初めて鉱物で「数字」を出した
2026年6月17日、G7エビアン・サミットで重要鉱物の首脳宣言が採択された。レアアースと永久磁石について、G7・パートナー国以外の単一国への依存度を2030年までに60%未満に下げる。G7が鉱物の依存度に具体的な数値目標を設定したのは、これが初めてだ。
同時に発足した枠組みは以下の通り。
- 重要鉱物レジリエンス・生産アライアンス(CMRPA)の新設
- IEA主導の市場監視・早期警戒プラットフォーム
- リチウム・ニッケルを対象にした備蓄メカニズムの試行
2026年初頭以降、G7圏で195件のプロジェクトが動き出し、投資額は640億ユーロ(約11兆円)に達した。「可能な限り早期に50%まで下げる」という追加目標も掲げられている。
14年で27ポイント低下、ただし軽希土類に限れば
日本の対中レアアース依存度は、2010年の89.8%から2024年に62.9%まで低下した。14年間で27ポイントの改善だ。
代替調達先はベトナム(32.2%)とタイ(4.8%)。豪州ライナス社への戦略的出資も加わり、軽希土類では調達先が分散した。
だが重希土類は別だ。EVモーターのネオジム磁石に使うジスプロシウムやテルビウムは、ほぼ100%を中国に頼ったままだ。
2025年4月、中国が重希土類7種の輸出管理を強化すると、日本向けレアアース磁石の輸出は翌月に月25.7トンまで急減した。2026年1月にはさらに軍民両用1,122品目の対日輸出規制が加わっている。
野村総合研究所は、3カ月の供給途絶で約6,600億円、1年間で約2.6兆円の経済損失が生じると試算する。全体の依存度が下がっても、重希土類が止まれば影響は大きい。
日本のレアアース調達先(2024年)
財務省貿易統計(2024年)
採掘69%と精錬91%のギャップ
G7目標の達成を難しくする要因がある。レアアースの「採掘」と「精錬」で、中国のシェアが大きく異なる点だ。
採掘シェアは69.2%。しかし精錬・加工工程では91.7%に跳ね上がる。他国はマレーシア4%、ベトナム1%、その他4%にすぎない。
豪州やブラジルで掘った鉱石も、多くは中国の精錬所を経由して製品になる。採掘先の多角化と、精錬能力の分散は別の課題だ。
日本はフランスのカレマグ社に出資し、重希土類で国内需要の20%確保を目指す。南鳥島の海底レアアース泥は「世界需要の数百年分」とされるが、商業化は2028年以降の見通しだ。精錬拠点の整備は、鉱山の開発よりさらに時間がかかる。
レアアースの中国シェア:採掘 vs 精錬
IEA・JOGMEC(2024年データ)
平均値に埋もれるもの
数値目標が設定されたこと自体に意義がある。「依存度低減」を方針として語るのと、首脳レベルで「60%未満」と明記するのでは、各国の政策を動かす力が違う。
ただし「60%未満」はレアアース全体の平均だ。日本の全体依存度が60%を切っても、重希土類のほぼ全量が中国経由である事実は、その平均の中に埋もれる。
640億ユーロの投資は主に採掘段階に向かっている。精錬・加工への投資拡大と、2026年末に予定されるリサイクル目標の策定が次の焦点だ。
依存度の測り方が「調達先の国別比率」にとどまる限り、数字の改善と供給途絶への耐性にはずれが残る。鉱石を掘る場所は変えられた。次は、加工する場所を増やす番だ。