独自分析
外務省予算ODAOSA円安国際観光旅客税
29年ぶりに過去最高の外務省予算が、ドルに直すと1997年より1割少ない

29年ぶりに過去最高の外務省予算が、ドルに直すと1997年より1割少ない

国連への分担金も在外公館の家賃も、支払いは外貨で発生する。円建ての最高額と、現地で買える量は別の話だ

2026-08-23

55億ドル

過去最高8,170億円をドルに直した額

過去最高の8,170億円は、55億ドル

2026年度予算で、外務省の予算は8,170億円になった。

前年度から589億円増え、1997年度の7,748億円以来、29年ぶりに過去最高を更新した。

ただし、この2つの数字は同じ物差しで測られていない。

外交は海外で外貨を使う仕事だ。国連への分担金、在外公館の家賃と現地職員の給与、途上国での工事。支払いの多くは円ではない。

予算編成で使う為替の目安(支出官レート)は、2022年度の1ドル108円から2026年度は149円まで動いた。1997年度の平均レートは1ドル123円前後である。

それぞれのレートで割ると、こうなる。

  • 1997年度:7,748億円 ÷ 123円 = 約63億ドル
  • 2026年度:8,170億円 ÷ 149円 = 約55億ドル

**円建てでは過去最高でも、ドルに直すと13%小さい。**

1997年度は市場の平均レート、2026年度は予算用のレートを使っているため、数億ドルの誤差は残る。それでも、63億ドルと55億ドルの大小が入れ替わるほどの幅ではない。

予算編成に使う為替の目安(支出官レート、1米ドル)

出典:参議院「立法と調査」No.481(2026年3月)

589億円の行き先

増えた589億円の行き先は、前年度比で次のように分かれる。

  • 一般的な政策経費:+107億円
  • OSA(政府安全保障能力強化支援):+101億円
  • 任意拠出金:+65億円
  • 分担金と義務的拠出金:+46億円
  • 無償資金協力:+17億円
  • JICA運営費交付金等:+17億円

このうち分担金と義務的拠出金は、総額で1,093億円ある。国連をはじめとする国際機関への支払いで、金額は外貨で決まる。分担率が据え置かれても、円安が進めば必要な円の額はその分だけ増える。

増額を支える財源も引き上げられた。国際観光旅客税は出国1回1,000円から3,000円へ、査証手数料は1次査証で3,000円から15,000円へ。旅客税の新しい税率は2026年7月1日以降に適用される予定だ。

一方で、人と拠点はほとんど増えていない。定員は6,852人で91人増にとどまり、在外公館の新設要求は2025年度に続いて2026年度も行われていない。

増額の相当部分は、活動を広げるためではなく、外貨建ての値上がりを吸収する側に回っている。

2026年度外務省予算の増額589億円の内訳(前年度比)

出典:参議院「立法と調査」No.481、外務省「令和8年度政府予算案の概要」

「初の1兆円」要求の中身

2026年8月、外務省が2027年度予算で約1兆2千億円を要求する方針を固めたと共同通信が報じた。概算要求が1兆円を超えるのは初めてになる。

ただし、比較の相手は当初予算の8,170億円ではない。同じ報道によれば、1.2兆円は2026年度当初予算と2025年度補正予算の合計に対して、約2千億円の増額にあたる。

外務省には、補正予算への計上が常態化している施策がある。参議院の調査資料も、それらを当初予算に組み替える方針だと記している。

**「初の1兆円」には、これまで補正予算で手当てしてきた分を当初予算へ移す動きが含まれている。**

そのうえで、要求には新しい枠が並ぶ。

  • 経済成長に向けた新たな投資枠:2千億〜3千億円
  • 安保ODA、成長戦略ODA、経済安保ODAという3つの区分
  • 国際和平調停ユニットの本格始動:約1億円

この方向は、すでに実績にも表れている。OSAは2023年度の20億円から2026年度は181億円へ、3年で9倍になった。対象は東南アジアや大洋州の12か国で、供与品は沿岸監視レーダーや警備艇が中心だ。

OSA(政府安全保障能力強化支援)予算の推移

出典:外務省、参議院「立法と調査」No.481

実額で1997年を超えられるか

要求どおり1.2兆円が認められれば、1ドル149円で約80億ドルになる。1997年度の63億ドルを、ドル換算でもはっきり上回る。

逆に例年のように要求段階から圧縮されれば、円建てで最高額を更新しても、ドル換算は55億ドル前後にとどまる。2027年度予算は、29年かけて目減りした実額を戻せるかどうかの分かれ目になる。

そして戻した先の使い道は、すでに移り始めている。無償資金協力とJICA運営費交付金がそれぞれ17億円増にとどまる一方、OSAは101億円増えた。開発を目的とする枠が横ばいで、安全保障と経済に紐づく枠が伸びる形だ。

外務省の予算を追うなら、総額の見出しよりも、その年度の支出官レートと、当初予算に補正予算を足した額を先に確かめるのが早い。この2つを揃えて初めて、外交に使える量が実際に増えたのかどうかが分かる。