成長戦略370兆円の中身。半導体に68兆円、ゲームに24.5兆円
骨太の方針と同時に公表された62品目の投資ロードマップ。AI・半導体だけで101.6兆円を占める一方、政府の追加支出は年約10兆円。370兆円の大半は民間投資の見込みで成り立っている
2026-07-02
370兆円
17分野62品目の官民投資目標(〜2040年度)
62品目の投資額を並べる
6月24日、政府は骨太の方針2026に合わせて「官民投資ロードマップ」を公表した。対象は17の戦略分野、62の製品・技術。2040年度までの投資総額を370兆円超と見積もる。
品目別の投資額上位はこうなる。
- AI用半導体: 68兆円
- クラウド・データセンター・蓄電池: 32.7兆円
- ゲーム: 24.5兆円
- 画期的医薬品: 23.4兆円
- バーティカルAI: 23.1兆円
- バイオ医薬品: 20.8兆円
- 次世代ワイヤレス: 20.5兆円
上位7品目で213兆円、全体の57%を占める。分野別ではAI・半導体が101.6兆円で全体の27%。デジタル・サイバーセキュリティが55.4兆円、創薬・先端医療が43.3兆円と続く。
「17分野に広く投資する」という印象を受けるが、デジタル・バイオ・医薬の3領域に資金の6割以上が集まる設計だ。
品目別の官民投資額(上位7品目、2040年度まで)
出典:内閣府 経済財政諮問会議(2026年6月24日)
政府が出すのは年10兆円
370兆円の内訳をもう一段掘り下げる。
政府の追加財政支出は年約10兆円と報じられている。14年間で累計約140兆円。370兆円の6割以上にあたる230兆円は、民間投資の「見込み」だ。
さらに、既存のGX投資計画(10年間で150兆円)との重複が指摘されている。蓄電池、太陽光、半導体などはGX予算にもロードマップにも含まれる。同じ事業が二重にカウントされている可能性がある。
政府は2040年度の民間設備投資を現行目標の200兆円から230兆円超へ引き上げる見通しを示した。だが民間投資は企業の収益見通しと市場環境で決まる。計画上の数字がそのまま実現するかは不確定だ。
半導体投資、過去と現在
投資額の大きさと産業競争力は、必ずしも連動しない。
過去にも政府が産業投資を主導した例がある。
- エルピーダメモリ: 政府系から約1,300億円を投入。2012年に負債4,480億円で破綻した
- ジャパンディスプレイ: 産業革新機構が2,000億円以上を出資。一時は債務超過に陥った
1980年代後半以降、政府主導の投資で日本の半導体世界シェアが回復した例は確認されていない。
一方、現在進行中のラピダスは過去と異なる要素を持つ。政府支援は累計2.9兆円に達し、2025年7月に2nmトランジスタの動作確認に成功した。60社以上が協業を協議し、約10社にPDK(プロセス設計キット)がライセンスされている。
汎用品の延命ではなく最先端ファウンドリを目指す点、IBMやimecとの国際連携がある点が、従来とは異なる。結果はまだ出ていないが、過去の繰り返しとは言い切れない。
金額の大きさより判断プロセス
今回のロードマップには、過去の成長戦略になかった仕組みが一つある。四半期ごとに進捗を確認し、行程表を見直すプロセスだ。
参考になるのが韓国の事例だ。研究開発費のGDP比は4.96%と日本の3.42%を上回る(OECD、2023年)。ただし韓国は半導体・バッテリー・ディスプレイに資金を集中させてきた。日本の17分野にはAI・半導体から防災・造船・コンテンツ・核融合まで含まれ、成長投資と安全保障・危機管理投資が混在している。
この広さにはトレードオフがある。対象が広いほど成果が分散するリスクがある一方、複数分野に種をまくことで予測不能な技術変化への備えにもなる。
14年計画の実効性を左右するのは、370兆円という数字そのものよりも、見直しのサイクルで実際に配分を変えられるかどうかだ。伸びた分野に資源を寄せ、成果が出ない分野を縮小する判断を繰り返せるか。ここに計画の現実味がかかっている。
研究開発費のGDP比(主要国比較)
出典:OECD(2023年)