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空き家900万戸でも新築マンションは1億円。中古が流通しない住宅市場

空き家900万戸でも新築マンションは1億円。中古が流通しない住宅市場

首都圏新築マンションは9,383万円で5年連続過去最高。一方で放置空き家は20年で1.8倍の385万戸に。「余っているのに買えない」の根にあるのは、住宅を消費財として扱ってきた制度設計だ

2026-06-25

900万戸

全国の空き家数(過去最高)

900万戸が余り、9,383万円で売れる国

全国の空き家は900万戸。空き家率は13.8%で過去最高を更新した(総務省「住宅・土地統計調査」2023年)。

7戸に1戸が空いている計算だ。

一方で、首都圏の新築マンション平均価格は9,383万円(不動産経済研究所・2025年度)。東京23区では1億3,613万円、都心6区では1億9,503万円。いずれも過去最高だ。

「余っているのに高い」は矛盾ではない。余っている場所と高い場所がまったく違う。

空き家率の上位は徳島県21.3%、和歌山県21.2%、鹿児島県20.5%。価格高騰の中心は東京・神奈川・千葉。日本の住宅市場は「全国一つ」ではなく、完全に二極化している。

空き家数の推移

総務省「住宅・土地統計調査」

放置空き家385万戸 ── 「相続したが使えない」の連鎖

900万戸の空き家のうち、賃貸・売却用を除いた「その他の住宅」、いわゆる放置空き家は385万戸。20年前の約1.8倍だ。

発生原因の半数以上が相続による。典型的なパターンはこうなる。

  • 親が亡くなり実家を相続する
  • 子どもはすでに都市部に住居がある
  • 古い木造住宅には買い手がつかない
  • 解体には150〜300万円かかる
  • 更地にすると固定資産税が最大6倍に上がる

2024年4月に相続登記が義務化された。だが登記は「誰の家か」を明確にする手続きであって、「使える家にする」仕組みではない。

築40年超の木造住宅は市場評価がほぼゼロになる。リフォームに数百万円を投じても資産価値はほとんど上がらない。「持っていても使えない、手放すにもコストがかかる」。この構造が放置空き家を増やし続けている。

中古流通率14% ── 新築偏重モデルの代償

日本の既存住宅流通シェアは約14.7%。アメリカ(81%)、イギリス(86%)、フランス(70%)の5分の1以下だ。

背景には税制と金融の仕組みがある。

木造住宅の法定耐用年数は22年。築20年を超えると建物部分の評価はほぼゼロになり、住宅ローンの担保としても認められにくくなる。中古が流通しないから、住宅需要は新築に集中する。

新築に需要が集まる構造のもとでは、建材費の上昇がそのまま価格に反映される。建設資材は2021年から5年間で約40%上昇した(日建連)。供給戸数は2万1,962戸と1973年以降の最少を記録しながら、価格だけが上がり続ける現象が起きている。

「中古+リノベーション」市場は広がりつつある。だが全体の構造転換には、建物評価制度と住宅ローン審査基準の見直しが欠かせない。

既存住宅流通シェアの国際比較

国土交通省

空き家対策と価格高騰は同じ構造の表と裏

空き家が増える問題と、住宅が高すぎる問題。この二つは別々に議論されがちだが、根は一つだ。

住宅の資産価値が築年数とともに急落する制度設計が、地方では「売れない・使えない空き家」を、都市部では「新築への需要集中と価格高騰」を同時に生んでいる。

中古住宅の建物評価を性能ベースに転換し、住宅ローン審査に築年数ではなく耐久性能を反映させると、二つの流れが変わりうる。

  • 地方: 中古住宅の資産価値が維持され、売却・活用が進む
  • 都市部: 中古市場が拡大し、新築への需要集中と価格高騰が緩和される

2025年に新築住宅の省エネ基準適合が義務化された。新しく建てる住宅の質は上がる。だが既存ストック約5,200万戸の評価制度は、まだ動いていない。

住宅を「建てて壊す消費財」から「維持して使う資産」へ。その制度転換の速度が、二極化の行方を左右する。