独自分析
育成就労日本語教育認定日本語教育機関技能実習登録日本語教員
育成就労は2027年4月から。日本語講習が必要な年12万人に、受けられる枠は年9万人だ

育成就労は2027年4月から。日本語講習が必要な年12万人に、受けられる枠は年9万人だ

枠は東京と大阪に集まり、31県では100人に届かない。監理団体への調査では36.1%が「来日前に試験に合格した人しか採用しない」と答えている

2026-10-13

11.7%

入国前にA1相当以上の日本語試験に合格していた技能実習生の割合

働き始める前に、日本語の試験か100時間の講習

2027年4月1日、技能実習に代わって**育成就労**が始まる。期間は3年以内で、受け入れは17分野だ。

新しいのは、日本語能力が在留の節目ごとに条件として置かれたことだ。

  • 就労開始まで:A1相当以上の試験(JFT-BasicやJLPTのN5など)に合格、または相当する講習を100時間受講
  • 1年経過時と本人意向の転籍:技能検定基礎級などに加えてA2.1相当以上の試験に合格
  • 育成終了時:A2.2相当以上(JLPTのN4など)

入口は「試験に合格してくる」か「日本で100時間教わる」の二択になる。

この講習は誰でも出せるものではない。就労課程の認定を受けた日本語教育機関か、登録日本語教員だけが実施できる。

制度がどう回るかは、現場がこの二択のどちらを選べるかで変わってくる。

講習が必要なのは年12万人、受けられるのは年9万人

出入国在留管理庁が6月時点で把握した日本語講習の受け入れ可能人数は、全国で約7,500人だった。日本経済新聞がこの調査を分析して報じた。

**年に換算すると約9万人分だ。** 一方、育成就労で来日すると見込まれるのは年15万人で、うち就労前に講習が要る人は年12万人と見られている。

差は年3万人になる。しかも枠は東京と大阪に集まり、31県では100人に届かない。

供給側の数字も薄い。文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関は96機関あるが、育成就労に使える「就労」課程を持つのは3機関だ。2026年4月に認定された32機関は、すべて留学課程だった。

この穴を埋めるために経過措置が置かれている。施行後およそ5年は、認定機関以外でも一定の要件を満たす登録日本語教員の講習が認められる。登録日本語教員は2026年8月時点で20,075人いる。

育成就労の来日見込みと、日本語講習の受け皿(年あたり)

出典:出入国在留管理庁の調査(2026年6月時点)を日本経済新聞が分析

監理団体382件に聞いた、A1要件への備え

国際人材協力機構(JITCO)が2025年11月から12月に実施した調査に、382件の回答が集まった。回答者の97.4%は監理団体で、監理する技能実習生は合わせて64,354人になる。

A1相当の要件にどう対応するかを聞くと、最も多い答えは講習ではなかった。

  • 来日前にA1相当の試験に合格させ、合格者しか採用しない:36.1%
  • 入国前講習の時期に現地でA1相当の講習を受講させる:16.0%

教室が足りないとき、負担は「日本で教える」から「条件を満たした人を探す」へ移る。

ただ、その母集団は狭い。在籍中の技能実習生のうち入国前にA1相当以上の試験に合格していたのは7,555人で、調査対象の11.7%だった。合格者が1人もいない団体が51.0%を占める。

費用の見方も離れている。100時間の講習費として1人5万円以下までなら負担できるという回答が61.8%で、教育側からは質を保つには相応の受講料が必要だという意見が出ている。

在籍中の技能実習生64,354人のうち、入国前に日本語試験に合格していた人数

出典:国際人材協力機構(JITCO)「育成就労制度における日本語講習に関するアンケート調査結果」(2025年12月)

2027年4月までに追う3つの数字

ここまでの数字を並べると、育成就労の入口は条文よりも教室の数で決まることになる。

試験ルートに寄れば、日本語の確認は送り出し国側の試験対策に移る。講習ルートを使えるのは、枠のある都市部に近い受け入れ先からになる。

影響は入口だけで終わらない。本人意向の転籍の条件にもA2.1相当の試験合格が入っているため、働きながら学ぶ機会の多さが、職場を移れるかどうかにつながる。

規模は小さくない。外国人労働者は2025年10月末で257万1,037人、うち技能実習が49万9,394人。雇う事業所は37万1,215カ所ある。

2027年4月までに追う数字は3つだ。

  • 就労課程の認定を受けた日本語教育機関の数
  • 都道府県ごとの講習の提供枠、とくに100人に届かない31県の動き
  • 100時間講習の価格が5万円前後で折り合うか

この3つが動かないかぎり、育成就労は「日本語を教えてから働く」制度よりも、「日本語の試験に合格した人を採る」制度として回りはじめる。

外国人従業員の雇用に伴う課題(監理団体など382件、複数回答)

出典:国際人材協力機構(JITCO)「育成就労制度における日本語講習に関するアンケート調査結果」(2025年12月)