技能実習を来年廃止し育成就労へ。失踪は年9,753人だった
32年続いた技能実習から育成就労へ。転籍が解禁される一方、来日コスト平均65万円の自己負担は新制度でも未確定のまま
2026-06-30
9,753人
技能実習生の年間失踪者数(2023年)
257万人を支える「建前」が変わる
外国人労働者が257万人を超えた。13年連続の過去最多だ。
在留資格別に見ると、全体像が浮かぶ。
- 専門的・技術的分野:86.5万人(33.7%)
- 技能実習:49.9万人(19.4%)
- 特定技能:28.6万人(11.1%)
技能実習と特定技能を合わせて約80万人。介護、建設、農業、食品製造——人手不足の現場を、この層が支えている。
技能実習制度の法的な目的は「国際貢献・技術移転」だった。途上国の人材が日本で技術を学び、母国に持ち帰る。それが建前だ。だが49.9万人が「研修生」だと考える人は少ないだろう。
2027年4月、育成就労制度がこの建前を書き換える。目的は「人材確保・育成」。32年間続いた制度で最大の転換は、日本が「労働力として迎えている」と公式に認めたことにある。
在留資格別 外国人労働者数(2025年10月末)
厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」
失踪9,753人が映すもの
2023年、技能実習生の失踪者は9,753人に達した。過去最多だ。
コロナ禍の2020年に5,885人へ一時減少したが、入国再開とともに増加に転じ、2022年には9,006人、翌年にはさらに記録を更新した。
失踪の最大の要因は、転籍が原則禁止だったことにある。技能実習制度では、労働環境に問題があっても雇用主を変えられない。我慢するか、逃げるか——選択肢は事実上、この二つだった。
もうひとつの要因が来日コストだ。出入国在留管理庁の調査によると、ベトナム人実習生が送出機関に支払う費用は平均65.6万円。来日前に借金をしている割合は80%にのぼる。
借金を抱えた状態で、転籍もできない。より高い賃金を求めて失踪する。この循環が、年間9,753人という数字になって表れている。
技能実習生の失踪者数(年間)
出入国在留管理庁
育成就労制度は「半分の解」か
2027年4月に始まる育成就労制度は、転籍を条件付きで認めた。
条件は3つある。
- 同一雇用主のもとで1年以上就労
- 技能検定基礎級に合格
- 日本語能力A1(N5相当)の試験に合格
「禁止」から「条件付き許可」への変更は大きい。だが制度の根にある問題——来日コストの負担——は、まだ決着していない。
新制度では「渡航費や手数料を受入れ機関と分担する仕組み」が検討されている。しかし具体的な負担比率は未定だ。
国による差も大きい。フィリピン人の負担は平均9.4万円なのに対し、ベトナム人は65.6万円。7倍の開きがある。送出機関の手数料規制に踏み込まなければ、借金を抱えて来日するパターンは制度が変わっても残りうる。
技能実習生の来日コスト(国籍別平均)
出入国在留管理庁 実態調査
123万人の受入れ計画が問いかけること
今後5年間の外国人材受入れ見込みは123万人。特定技能80.5万人、育成就労42.6万人だ。
すでに上限に達した分野もある。外食業は2026年4月、特定技能1号の新規受入れを停止した。5万人の枠が埋まったためだ。需要は制度の想定を超え始めている。
123万人という数は、外国人労働者が日本社会の恒常的な一部になることを意味する。だが在留資格の設計は「一時滞在」が前提のままで、永住権への接続も限定的だ。
新制度の成否を分けるのは、転籍の解禁よりも来日コストの分担ルールだろう。65万円の借金を抱えて転籍する自由と、借金なしで転籍する自由は、同じ「転籍可能」でも意味が違う。
「なぜ来るのか」の建前を変えた以上、「来た後どう処遇するのか」の設計が次の焦点になる。