独自分析
情プラ法誹謗中傷SNSプラットフォーム規制総務省
通報7600万件のうち、消えたのは0.1%。情プラ法は削除を義務づけていない

通報7600万件のうち、消えたのは0.1%。情プラ法は削除を義務づけていない

総務省が出した初めての勧告は、削除率の低さではなく42項目の公表漏れに対するものだった

2026-08-15

0.1%

Xが報告7600万件に対して措置した割合

7600万件の報告に対し、措置は7.9万件

Xは2026年6月、日本の利用者から1年間に約7600万件の報告を受けたと公表した。

削除や非表示にしたのは7万9000件、アカウント停止は4万7000件。合わせても報告全体の0.1%だ。

同じ時期に公表された他社の数字は、桁が違う。

  • Meta:Facebookへの削除申出134万件、Instagramは15万件で、対応率は46%
  • TikTok:申出約6万件のうち約1万4000件を削除(約23%)。理由の約9割が名誉毀損
  • YouTube:法的な削除申立2450件のうち、削除は289件

これらの数字が横並びで見られるようになったのは、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)が、年1回の公表を義務づけたからだ。施行から1年、初めて各社の対応が数字になった。

**ただし、0.1%から46%までの開きは、各社の熱心さの差とは限らない。情プラ法が事業者に義務づけているのは、削除の結果ではないからだ。**

削除申出・報告に対する措置の割合(2025年度)

出典:各社が情プラ法に基づき公表した資料(2026年6月)をもとに算出

初めての勧告の理由は削除率ではなかった

総務省は2026年7月24日、情プラ法に基づく初めての勧告を出した。対象はGoogle、X、Meta、ドワンゴ、湘南西武ホームの5社だ。

理由は、公表が義務づけられた42項目のうち必要な項目を公表していなかったこと。未公表はGoogleが22項目、Xが18項目で、残る3社も4項目から16項目が欠けていた。

42項目には、削除した件数だけでなく、削除しなかった理由や、日本語がわかる投稿管理者の人数といった運用の中身が含まれる。数字を出すだけでは足りず、その数字がどう作られたかまで書くよう求める設計だ。

5社には8月31日までに、不備を直した資料を再び公表するよう求めている。GoogleとXには同じ期限で改善計画の提出も求め、10月30日から2027年4月30日まで3カ月ごとの進捗報告を課した。

**措置率0.1%そのものは、勧告の理由になっていない。**

情プラ法の公表義務42項目のうち未公表だった項目数

出典:総務省 報道資料(2026年7月24日)

義務がかかっているのは結果ではなく手続き

情プラ法が事業者に課したのは、削除の件数でも割合でもない。義務の中身はこうなっている。

  • 削除申出の窓口と手続きを整備し、公表すること
  • 申出を受けたら原則7日以内に判断し、申出者に結果を通知すること
  • 判断にあたる侵害情報調査専門員を選任すること
  • 年1回、対応状況を公表すること(第28条)

消すかどうかの判断そのものは、事業者の手元に残されている。措置率が0.1%でも法律上の違反にはならず、42項目の公表漏れは違反になるのは、そのためだ。

体制の側にも数字が出た。対象9社のうち8社が、専門員を法律が求める最低限の1人しか置いていない。

窓口はできたが、判断する人はほぼ増えていない。1年目に見えたのはその形だ。

次に見るべき数字は削除率ではない

0.1%と46%は、並べても比較にならない。Xの7600万件は利用者が通報ボタンを押した件数の総数に近く、Metaの134万件は権利侵害を理由とする削除申出だ。何を1件と数えるかが違えば、割合は同じ意味を持たない。

42項目の公表義務は、その分母をそろえるための仕組みでもある。何を申出として数え、何日で判断し、誰が判断したのか。同じ形式で並んで初めて、削除率という数字が読めるようになる。

8月31日に5社の資料が出そろい、GoogleとXについてはそこから3カ月ごとに進捗が積み上がる。削除率が上がらないまま項目だけが埋まることもありうるが、その場合でも、どこで止まっているかは前より見えるようになる。

通報しても何も起きなかった経験がある人が確かめられるのは、削除率の高さではない。申出から通知までの日数と、判断にあたる人の数だ。この2つが動かないかぎり、0.1%も動かない。