家事代行に税優遇。介護休業を使ったのは働きながら介護する人の1.6%だ
経産省など3省庁が令和9年度税制改正で要望。介護で辞めた人に聞くと、6割は介護休業を使いたかったと答えている
2026-08-27
1.6%
働きながら介護する人のうち介護休業を使った割合
家事代行とベビーシッターに税優遇を、という要望
経済産業省、厚生労働省、内閣府の3省庁が、家事支援サービスとベビーシッターの利用者に税優遇を設ける方向で調整に入った。令和9年度(2027年度)の税制改正要望に盛り込む。
対象として想定されているのは、質を担保したサービスだ。
- 2027年に創設予定の国家資格を持つ人による家事支援サービス
- 保育士や看護師によるベビーシッター
方式は、納める税額から直接引く税額控除か、課税所得を減らす所得控除のどちらかになる。
根拠に挙げられたのは離職者の数だ。出産や育児を理由に仕事を辞める人は年15万人、介護や看護を理由にした離職は年10万6千人にのぼる。
日本の所得税で「サービスを買うこと」に効く控除は、医療費控除がほぼ唯一だ。扶養控除や配偶者控除のように、家族を抱えること自体に向けられた控除とは種類が違う。今回の要望は、その並びに新しい1つを足す話になる。
働きながら家族を介護する人の数
出典:総務省 就業構造基本調査(平成24年・29年、令和4年)
322万人のうち、介護休業を使ったのは5万1千人
仕事と介護の両立支援は、1995年の育児・介護休業法から30年積み上がってきた。介護休業は対象家族1人につき通算93日、3回まで分けて取れる。休業中は賃金の67%が介護休業給付金として出る。
使われ方は、統計にはっきり出ている。総務省の令和4年就業構造基本調査によると、介護をしている雇用者322万人のうち、介護休業を使った人は1.6%、5万1千人だった。
**何らかの両立支援制度を使った人まで広げても11.6%にとどまる。**
内訳は介護休暇が4.5%、短時間勤務が2.3%、残業免除が0.8%(複数回答)。使われている順に並べると、介護休業は3番目に落ちる。雇用形態でも差があり、制度を使った人の割合は正規雇用で15.0%、非正規雇用で8.7%だ。
働きながら介護する人は、自営業などを含む有業者ベースで、2012年の291.0万人から2022年の364.6万人へ、10年で73.6万人増えた。分母が増えても、制度の使われ方は動いていない。
介護をしている雇用者322万人が使った両立支援制度(複数回答)
出典:総務省 令和4年就業構造基本調査
辞めた人の6割は、介護休業を使いたかった
使われていないのは必要とされていないからだ、と読むとデータと合わなくなる。
厚生労働省の委託調査(2021年度、介護離職者410人)は、辞める前にどの制度を使いたかったかを聞いている。
- 介護休業制度:64.4%
- 介護休暇制度:40.5%
- 所定外労働を短縮する制度:29.5%
- 所定外労働を制限する制度:21.5%
**辞めた人の6割は、介護休業を使いたかったと答えている。**
同じ調査で「どんな職場の取り組みがあれば続けられたか」を聞くと、最も多いのは「両立支援制度に関する個別の周知」で55.1%。研修が33.7%、相談窓口の設置が31.7%と続く。足りなかったのは制度そのものより、制度が本人に届く経路だった。
この読み方は、すでに法改正に反映されている。2025年4月から、介護に直面する前の40歳などの段階で制度を情報提供すること、介護の申し出があったときに個別に周知して利用意向を確かめることが、事業主の義務になった。
介護で辞めた人が、辞める前に使いたかった制度
出典:厚生労働省委託調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2021年度、離職者410人)
税で支援すると、届く先は納税者に限られる
新しい税優遇も、この「届く経路」の問題を引き継ぐ。しかも税を通す以上、届く範囲には最初から線が引かれる。
介護や看護を理由に離職した10万6千人のうち、調査時点で仕事に就いていない人は8万3千人、再び働いている人は2万3千人だ。無業なら所得税は発生しない。**税優遇が効くのは、辞める前の局面だけになる。**
税額控除は納めた税額の範囲でしか引けない。課税所得が小さいほど枠は小さくなり、制度利用率が低かった非正規雇用の層と重なりやすい。佐藤啓官房副長官も、支援が高所得者層だけに限られてはいけないと述べている。
先行するスウェーデンでは、家事サービスの労働費用の50%を年75,000クローナまで税から引ける。事業者が利用者に半額だけ請求し、残りを税務当局に請求するため、買った瞬間に半額になる。
日本の控除は原則として申告を経て後から戻る。月3万円の家事代行なら、年36万円をいったん自分で払い切ることになる。手元の資金に余裕がなければ、そもそも買えない。
だから焦点は控除率の高さではない。購入時に割り引く仕組みと、40歳時点の情報提供に家事支援サービスを含める設計を年末の大綱まで書き込めるかどうかで、両立支援制度を使っていない88.4%に届くかが決まる。控除率だけを決めて申告に委ねるなら、すでに家事代行を使えている層の負担が軽くなるところで止まる。