独自分析
幹線地方交通線輸送密度再構築協議会国鉄再建法
山陰線は1日4万人の区間も210人の区間も、運賃は同じ「幹線」だ

山陰線は1日4万人の区間も210人の区間も、運賃は同じ「幹線」だ

区分は1977年度からの3年間の輸送実績で、線名ごとに決まった。地方交通線は運賃が約1割高く、1日8,204人の八高線はいまもそちら側にある。10月、国交省が幹線のあり方を議論する検討会を新設する方針を固めた

2026-10-12

196倍

同じ「幹線」の中にある利用者数の差

同じ山陰線の中にある196倍の差

JR西日本が2025年8月6日に公表した2024年度の区間別平均通過人員を見ると、山陰線のなかで利用者の数が大きく開いている。

**京都〜園部は1日41,166人、益田〜長門市は210人。** 同じ路線名の中で196倍の差がつく。

区間ごとの数字はこうなっている。

  • 京都〜園部(34.2km):41,166人
  • 米子〜出雲市(61.6km):5,245人
  • 鳥取〜米子(92.7km):3,487人
  • 出雲市〜益田(129.9km):868人
  • 益田〜長門市(85.1km):210人

山陰線全体(676.0km)の平均は4,096人だ。平均の数字だけでは、両端の開きが見えない。

そして運賃の制度の上では、41,166人の区間も210人の区間も、どちらも同じ「幹線」として扱われる。

山陰線の区間別の1日あたり利用者数(2024年度)

出典:JR西日本「2024年度 区間別平均通過人員(輸送密度)」

1977年度からの3年間で決まった線引き

いまの区分は45年前に作られた。1980年に成立した国鉄再建法に基づき、1981年に国鉄の路線は**幹線**と**地方交通線**に分けられた。

基準になったのは1977年度から1979年度の平均輸送実績だ。幹線とされたのは、主要都市を結び、営業キロ30kmを超え、輸送密度4,000人以上の区間を持つ線などで、合わせて51線になった。

ここで効いたのが分類の単位だ。区分は区間ごとではなく、線名ごとに機械的に決められた。

だから京都近郊の区間が基準を満たせば、同じ山陰線という名前の下にある210人の区間も幹線に入る。196倍の差は、この分類の作り方から生まれている。

一方、輸送密度8,000人未満とされた地方交通線は175線、10,169.5kmに及んだ。そのうち4,000人未満の線区は**特定地方交通線**に指定され、83線区3,157.2kmが鉄道以外へ移るか、別の事業者に渡っている。

1980年の線引きで指定された特定地方交通線83線区の行き先

出典:国土交通省「国鉄特定地方交通線のバス等への転換」

運賃に残る45年前の区分

この区分は、いまも運賃に直接つながっている。地方交通線だけを乗るときは幹線とは別の運賃表が使われ、その額はおおむね幹線の1割増しだ。幹線と乗り継ぐときは、地方交通線の距離を約1割長く換算して運賃を計算する。

つまり分類は、路線を残すかどうかの話であると同時に、利用者が払う額の話でもある。

八高線(八王子〜倉賀野、92.0km)はその一例だ。地方交通線に分類されたまま、1日あたりの利用者は1987年度の6,268人から2024年度の8,204人へ3割増えた。

**1981年に幹線と地方交通線を分けた8,000人という水準を、いまは超えている。** それでも運賃の区分は地方交通線のままだ。

逆に、1日210人の区間は幹線の運賃表で計算される。45年前の実績に基づく区分が、いまの利用者の数と合わなくなっている。

八高線(八王子〜倉賀野)の1日あたり利用者数の推移

出典:JR東日本「路線別ご利用状況」

次の線引きと、費用の出どころ

ローカル線の側では別の仕組みが動いている。2023年10月の改正地域公共交通活性化再生法で、国が調整役に入る**再構築協議会**ができた。目安は輸送密度1,000人未満だ。

ただし設置は2年半で1件にとどまる。芸備線(備中神代〜備後庄原)で2024年1月12日に決まり、方針が出るのは2027年3月の予定だ。JR西日本の2025年度のデータでは、目安に該当する区間は14路線26区間ある。

輸送密度という一つの数字は、議論に入る入口を決めるだけだ。残す場合に費用をどこから出すかは決めない。

費用の議論は別に進む。2026年4月10日、国交省の検討会は、特急や貨物が走る基幹的な鉄道網の維持財源を具体的に検討するよう国に求める提言をまとめた。乗客以外も負担する仕組みで、新税や都市部の利用者からの徴収案も出ていた。

10月、国交省は幹線のあり方を議論する検討会を新設する方針を固めた。1980年の線引きは廃止の基準が先にあり、3,157kmを動かした。今回は順序が逆になる。誰がいくら負担するかが決まってから、どこまでを幹線と呼ぶかが決まる。