高校無償化1年目、私立の高校生が1万1884人増えた。公立は4万330人減っている
2026年4月に所得制限がなくなり、私立の上限は年45万7,200円になった。高校生に占める私立の割合は、3年続いた34.7%から35.5%へ動いた
2026-09-17
35.5%
高校生のうち私立に通う割合(2026年5月)
4月に消えた授業料の差
2026年4月、高等学校等就学支援金の所得制限がなくなった。 年収に関わらず、高校生のいる世帯が支援の対象になる。
年間の支給上限はこう決まった。
- 公立高校:11万8,800円
- 私立の全日制:45万7,200円
- 私立の通信制:33万7,200円
私立の45万7,200円は、私立高校の平均授業料に合わせた額だ。 前年までの上限は39万6,000円で、年収910万円が目安の線を超える世帯は対象から外れていた。
国の予算も動いた。 就学支援金の2026年度予算額は5,824億円で、前年度の4,074億円から1,750億円増えた。 授業料以外の費用を補う高校生等奨学給付金も、152億円から322億円になった。
家計から見れば、公立と私立のどちらを選んでも授業料の負担はほぼ変わらない。 進路を決めるときの判断材料から、値段の項目が一つ抜けた。
就学支援金の年間の支給上限額
出典:文部科学省
制度が変わって最初の5月1日
制度が変わって1か月後の5月1日、文部科学省の学校基本調査が在学者数を数えた。 速報値は8月26日に公表されている。
全日制と定時制に通う高校生は284万5,117人で、前年より2万8,502人減った。 少子化のぶん、全体が減るのは想定どおりだ。
ところが内訳を見ると、増減の向きが分かれている。
- 公立:182万7,354人(4万330人減)
- 私立:100万9,801人(1万1,884人増)
- 国立:7,962人(56人減)
高校生に占める私立の割合は、34.7%から35.5%になった。 2023年度から3年続けて34.7%で動かなかった数字が、制度変更の初年度に動いた。
通信制も同じ向きだ。 在学者は31万1,792人で過去最多になり、うち私立は25万220人と7,031人増えた。
生徒全体が減る年に、私立だけが増えている。
高校生に占める私立の割合(全日制と定時制)
出典:文部科学省「学校基本調査」(2026年度は速報値)
先に無償化した東京と大阪
東京都は2024年度から、国の支援金と都の助成を合わせて年48万4,000円まで、所得制限なしで私立の授業料を支援してきた。 大阪府も府独自の無償化を先に進めている。
先行した2年分の結果が、2026年度の入試に表れている。
- 東京:全日制167校のうち66校が定員割れ(約4割)
- 東京の二次募集:67校で2,791人の枠に対し、応募は667人(0.24倍)
- 大阪:進路希望調査の時点で、府立126校中71校が定員を下回る可能性
大阪では私立専願率が4年続けて上がった。
定員が埋まるかどうかは、その学校が続くかどうかに直結する。 大阪府立学校条例は、3年連続で志願者が定員に満たず改善の見込みがない高校を再編整備の対象と定めている。 2026年度は大正白陵と福泉が募集を止めた。 府立高校はこの20年でおよそ40校減っている。
授業料の差が消えれば、学校は値段以外の理由で選ばれるようになる。 選ばれなかった学校は、数年の定員割れを経て再編の対象に入る。
2026年度に定員を満たせなかった全日制高校の割合
出典:東京都教育委員会および大阪府教育委員会の公表資料から算出
減っている学校数は公立だけ
全国の高校の数を並べると、減り方が片側に寄っている。
2026年度の全日制と定時制は4,751校で、内訳は公立3,416校、私立1,320校、国立15校だ。 2017年度と比べると、公立は3,571校から155校減った。 同じ9年間で、私立は1,321校から1校減っただけだ。
生徒が減った分の調整は、これまでも公立が引き受けてきた。 授業料の差が消えたことは、その引き受けを速める側に働く。
お金の出どころも変わった。 これまで国が10分の10を負担してきた就学支援金は、2026年度から国が4分の3、都道府県が4分の1を持つ。 都道府県は公立高校の設置者であり、私立高校の所轄庁でもある。 私立に渡る支援金の4分の1を出しながら、埋まらない自前の教室を抱えることになる。 その負担を支えるため、交付税措置のある地方債も新設された。
自民党、公明党、日本維新の会の3党がまとめた文書は、公立高校離れと都市部と地方部の格差への懸念を書き込み、施行から3年以内に検証すると定めた。 検証の焦点になるのは、支援を受けた生徒の数ではない。 公立の募集停止が何校になり、その地域の中学生が高校まで何分かけて通うことになるかだ。
通える範囲に公立が1校しかない町では、35.5%という全国の割合は選択肢の話ではなく、通学時間の話になる。