国スポの開会式は3万人収容が基準。青森は5,371人のアリーナで開く
史上初の屋内開会式と、2028年に始まるeスポーツ大会。国スポ改革の中身は会場整備に向かっている
2026-09-07
5,371
総合開会式の会場定員(基準は約3万人)
開会式の会場は、基準の6分の1
10月10日、青森県で第80回国民スポーツ大会が開幕する。総合開会式の会場はマエダアリーナ。国スポで初めての屋内開会式になる。
日本スポーツ協会の大会施設基準は、総合開閉会式の会場を「約3万人を収容できる施設」と定めている。屋外で行う場合は、雨天に備えて体育館も別に用意することになっている。
マエダアリーナの定員は最大5,371人。基準のおよそ6分の1にあたる。
青森県には2万809人が入る陸上競技場がある。2019年に使い始めたばかりの施設だ。それでも式典は屋内で開かれる。本番の総合開閉会式に一般観覧はなく、式典の総合練習会には約700人が参加した。
国スポは冬季を含めて40競技、選手と監督あわせておよそ2万7千人が集まる。その規模のなかで、開会式の会場だけが基準から大きく外れている。競技の話に見えて、いま動いているのは会場の話だ。
総合開会式の会場定員
出典:日本スポーツ協会 大会施設基準、各施設公表値
県が負う費用は、建てるかどうかで決まる
開催県が負担する経費は、式典と競技会の運営費、施設の整備費、選手の強化と育成費に分かれる。有識者会議の提言は、既存施設だけで開催するのは難しく、施設の新設や改修が開催地の大きな負担になってきたと明記している。
直近2回の数字を並べる。
- 滋賀県が国スポと障スポに投じた事業費は635億円
- 佐賀県のSAGAサンライズパークは総事業費470億円
- その中核となるSAGAアリーナの新設費は197億円
SAGAアリーナは2018年の基本計画で約150億円を見込んでいたが、実際は197億円になった。
一方、滋賀の主会場となった平和堂HATOスタジアムの収容は1万5千人で、ここでも3万人の基準どおりの施設は使われていない。基準から離れているのは青森だけではない。
提言は、世界記録が公認される水準の施設を求める競技団体と、完成後の維持費を負う自治体との間で、意見が食い違う場面があるとも書いている。
大会は11日間で終わる。会場と維持費は残る。
直近2大会の県事業費と会場整備費
出典:京都新聞、佐賀新聞
負担軽減策は、5つとも「建てない」方向
国スポは、日本スポーツ協会と国、開催都道府県の3者が共同で開くとスポーツ基本法に定められている。ただし経費の大部分を負うのは開催地だ。
2025年3月21日、日本スポーツ協会の有識者会議が提言をまとめた。委員は知事や市長、競技団体、経済界などから34人。きっかけの一つは、2024年8月に全国知事会がまとめた「3巡目国スポの見直しに関する考え方」だった。
提言が負担軽減として挙げた項目を並べると、方向が見えてくる。
- 競技会を通年に分散し、同じ施設を時期をずらして使う
- 競技ごとに会場を固定する「聖地化」
- 単独開催が難しい場合は複数の県で分担して開く
- 式典の屋内開催を認め、運営を簡素にする
- 大会施設基準そのものを見直す
5つとも、新しい会場を建てずに済ませるための手段だ。総合表彰を閉会式と切り離し、東京で行う案も示されている。
3巡目は2036年から始まる。ただし、実現できる見直しは2036年を待たず前倒ししてよい、というのが提言の立場だ。
eスポーツは、会場を建てずに開ける競技
前倒しの動きはすでに出ている。9月3日、日本スポーツ協会がeスポーツの新大会を創設すると発表した。第1回は2028年1月から3月、都道府県対抗で行う。これまで国スポの文化プログラムとして開いてきた大会を、競技会に格上げする形になる。開催地も種目もこれから決める。協会は、国スポの開催自治体には負担をかけないよう対応するとしている。
eスポーツに400メートルトラックも50メートルプールもいらない。都道府県対抗という国スポの形を保ったまま、会場整備の外側で成立する競技だ。
会場を建てる判断が重くなるのは、当番が簡単には回ってこないからでもある。青森は49年ぶり、佐賀は48年ぶり、滋賀は44年ぶりの開催だった。40年以上に一度のために建てた施設は、次の当番が来る前に寿命を迎える。
3巡目の論点は、どの競技を入れるかより、開催のたびに建て替えずに済む仕組みをどう作るかにある。青森の屋内開会式は、その最初の実例になる。
前回開催からの間隔
出典:日本スポーツ協会 大会開催地一覧