旧姓で口座を作れない銀行が3割。国家資格332件ではすべて使える
9月17日、旧姓の通称使用の法制化が法務大臣に指示された。2月の指示にあった「検討」の二文字は消えている。資格証への旧姓の書き方は、いまも5通りに分かれたままだ
2026-09-20
31.2%
旧姓の口座に対応していない銀行
9月17日に出た指示
2026年9月17日、旧姓の通称使用を法制化する方針が法務大臣に指示された。
同じ指示は2026年2月にも出ている。そのときの表現は「基盤整備の検討を進める」で、今回は「検討」の二文字が消えた。ただし就任会見では、法案の提出時期は答えられないとされている。
誰が改姓しているかは、統計に表れている。
2024年に結婚した48万5,092組のうち、45万6,453組が夫の姓を選んだ。割合にして94.1%で、妻の姓を選んだのは2万8,639組にとどまる。
1995年の夫の姓は97.4%だった。30年で3.3ポイント動いただけで、改姓の手続きはいまも大半が女性の側で起きている。
通称使用を広げるとは、戸籍の姓とは別に旧姓が通る場所を増やすことだ。そしてその場所は、国が様式を決める領域と、民間が実務を抱える領域とで、広がり方がはっきり分かれている。
結婚で夫の姓を選んだ夫婦の割合
出典:厚生労働省 人口動態統計(内閣府男女共同参画局まとめ)
国家資格332件での旧姓の書き方
内閣府が2025年5月31日時点でまとめた調査では、対象となった332の国家資格と免許はすべて、資格を取った時点から旧姓を使える。使えないものはゼロだった。
揃っていないのは、資格証への書き方だ。
- 旧姓を括弧で併記する:164件
- 規定はないが、いずれかの方法で旧姓を使える:109件
- 旧姓だけを書く:41件
- 併記と単記のどちらも選べる:16件
- 戸籍の姓のほうを括弧で併記する:2件
3分の1にあたる109件には、表記のルールそのものがない。運用で受け付けているから「使える」に分類されている。
身分証も同じ方向に動いた。住民票とマイナンバーカードへの旧姓の併記は2019年11月に始まり、いまは券面に二つの姓が並ぶ。
国が様式を所管する場所では、旧姓使用はほぼ行き渡った。法制化が効くのは、この揃っていない書き方を一本化する部分になる。
国家資格332件での旧姓の表記方法
出典:内閣府男女共同参画局(2025年5月31日現在)
銀行と信用組合で分かれる対応
民間の側を見ると、様子は違う。内閣府と金融庁が2022年3月に預金取扱金融機関へ聞いた調査がある。
旧姓での新規口座開設と既存口座の旧姓維持に対応していたのは、銀行で68.8%、信用金庫で58.3%、信用組合では12.4%だった。銀行125行のうち39行は、どちらにも対応していない。
対応していない理由は、多い順にこうなる。
- マネーロンダリングとテロ資金供与の防止に懸念がある:168件
- 旧姓名義の口座に需要がない:165件
- システム改修が必要になる:156件
信用組合の対応が1割強で止まっているのは、複数の組合が共同で使うシステムが旧姓に対応していないためだと説明されている。個々の組合が判断する手前で決まっている。
対応している銀行の側にも隔たりがある。旧姓の口座を扱えるとホームページなどで知らせているのは14.0%にとどまる。使えるかどうかは、窓口で聞いてみるまでわからない。
旧姓の口座に対応している金融機関の割合
出典:内閣府男女共同参画局・金融庁(2022年3月調査)
法制化が届く範囲
二つの調査の差は、誰が様式を決めているかで説明がつく。国が資格証の書式を所管する場所では332件すべてが対応し、民間が本人確認とシステムを抱える場所では信用組合の87.6%が未対応のまま残った。
通称使用は、一人が姓を二つ持つことを前提にした仕組みだ。使う側は場面ごとにどちらの姓が通るかを確かめ、受ける側は二つの姓を突き合わせて同一人物だと確認する。この手間は、使える場所が増えるほど増える。
法制化で揃えられるのは、まず国が決められる表記のルールだ。口座の名寄せやマネーロンダリング対策の実務は、費用と期間を誰が負担するかという別の問題として残る。
次の焦点は、旧姓を使ってよいと決めること自体ではない。二つの姓を同じ人として扱う費用をどこに置くかだ。法案がそこに触れなければ、変わるのは国が所管する資格証の表記にとどまり、口座の窓口で確かめる手間はそのまま残る。