独自分析
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町村議選の4回に1回は、立候補者がそろわない

町村議選の4回に1回は、立候補者がそろわない

報酬月21万円、本会議は平日昼間。議員の76.9%が60歳以上で、定数割れは8年で3倍に増えた。会社員が立候補するには、まず仕事を辞める必要がある

2026-06-13

27.4%

町村議選の無投票率

選挙のない町が増えている

全国町村議会議長会の集計によると、2019年5月から2023年4月の4年間に行われた926の町村議選のうち、27.4%にあたる254議会が無投票だった。有権者は投票所に行く機会すらなかった。

2023年の統一地方選に限ると、比率はさらに上がる。373の町村議選のうち123が無投票で、33%に達した。3つに1つの議会で、住民は議員を選べなかった。

もっと深刻なのが「定数割れ」だ。立候補者が議員定数にすら届かない町村は、直近4年間で31に達した。2011〜2015年は10町村だったから、8年で3倍になった計算だ。

「なり手がいない」と語られるが、住民の意欲だけの話ではない。報酬は月21万円で、本会議は平日の昼間。この制度のまま現役世代に立候補を求めるのは、そもそも無理がある。

町村議選の無投票率の推移

全国町村議会議長会、総務省

議会は「農家の兼業先」として設計された

町村議員の報酬は全国平均で月額約21万円、年額に換算すると252万円だ。政務活動費が支給されない議会も多く、専業で生活するのは難しい。

実際、議員の多くは兼業している。職業構成を見ると最多は農業で29.0%、次いで議員専業22.8%、建設業6.4%と続く。いずれも時間を自分で調整しやすい職種だ。

会社員はほとんどいない。本会議や委員会は平日の昼間に開かれるため、有給休暇だけでは対応しきれない。立候補するなら退職か転職が前提になる。

その結果が年齢に表れている。平均年齢は64.4歳で、60歳以上の議員が76.9%を占める。91の町村議会では最年少議員ですら60代だ。女性は約10%にとどまる。

かつて町村の多数派だった自営農家にとって、議員は農閑期に務める「地域の役」だった。その前提が変わった今も、制度はそのまま残っている。

町村議員の年齢構成

全国町村議会議長会 第66回町村議会実態調査

夜間議会やオンライン、改革は始まっているが

各地でなり手不足への対策が動き始めている。

  • 長野県喬木村は本会議を夜間や休日に開催し、働きながら参加できる環境をつくった
  • 北海道浜中町は議員報酬を月額1万8,600円引き上げた
  • 2024年施行の改正地方自治法で、委員会へのオンライン出席が可能になった

ただし、本会議のオンライン出席は現行法で認められていない。委員会にリモートで出られても、本会議は議場に行く必要がある。

報酬の引き上げにも壁がある。人口数千人の町村では財政に余裕がなく、月額を数万円上げるだけで議会費が年数千万円膨らむ。定数を減らして1人あたりの報酬を増やす自治体もあるが、議員が減れば住民の声が届く範囲は狭くなる。

どの改革も方向は正しい。ただ、会社員が4年間のキャリアを中断せずに議員を務められる仕組みには、まだ届いていない。

次の統一地方選まで、あと1年

町村議会のなり手不足は、個人の意欲の問題ではない。会社員が多数派の社会で、農閑期の自営農家を前提に設計された仕組みが、そのまま動き続けている。

報酬を上げるだけでは足りない。見直すべき点は複数ある。

  • 平日昼間に限定された本会議の開催時間
  • 落選や任期満了後のキャリア復帰を支える仕組み
  • 選挙費用の自己負担の軽減

これらが同時に変わらなければ、定年退職者と自営業者以外に選択肢は広がらない。

次の統一地方選は2027年春だ。定数割れの町村がさらに増えていけば、議会そのものが成立しない自治体が現れる。「投票すらできない町」がこれ以上増える前に、制度の前提を見直す時間はあと1年しかない。