独自分析
地方創生人口流出20代女性東京一極集中消滅可能性自治体
20代前半の女性3万人が、毎年地方から東京に移っている

20代前半の女性3万人が、毎年地方から東京に移っている

東京への転入超過は全年齢で女性が男性より年1万人多い。20〜24歳の女性流出率は青森6.86%、秋田6.44%と男性を上回るが、地方創生10年でこの偏りは解消されていない

2026-07-12

3万人

20〜24歳女性の東京転入超過数(年間、2025年)

20〜24歳の女性3万人が毎年東京に流入する

2025年の住民基本台帳人口移動報告で、東京都の転入超過は6万5,219人だった。

内訳を男女に分けると風景が変わる。女性が3万7,880人、男性が2万7,339人。女性が男性を約1万人上回っている。

なかでも20〜24歳が突出する。この年齢層の女性だけで2万9,985人が東京に流入した。東京への転入超過率は女性8.34%に対し、男性は8.04%。2位の神奈川県(3.02%)を大きく引き離す。

流出元を見ると男女差はもっと開く。20〜24歳女性の転出超過率は以下のとおりだ。

  • 青森県:6.86%(男性は4.89%)
  • 山形県:6.51%(男性5.43%)
  • 秋田県:6.44%(男性4.98%)
  • 岩手県:6.37%
  • 新潟県:5.82%

ワースト5はすべて東北と北陸だ。女性の流出率は男性の1.2〜1.4倍になる。

20〜24歳女性の転出超過率(2025年、上位5県)

総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2025年)

消滅可能性の基準は総人口ではない

2024年4月、民間の有識者会議「人口戦略会議」が全国1,729自治体を分析した。744自治体が「消滅可能性」と判定された。全体の43%にあたる。

判定基準は総人口の減少率ではない。「20〜39歳の女性人口が2020年から2050年の30年間で50%以上減少するか」で決まる。出産の中心世代の女性数が、自治体の存続可否を左右する指標とされている。

地方から東京に毎年3万人の20代前半女性が流出する現状は、この判定基準に直結するデータだ。流出が30年続けば、20〜39歳女性は半減する。

地方創生が始まって10年。政府自身の検証では「東京圏への一極集中の大きな流れを変えるには至っていない」と認めている。自治体の約8割にあたる1,419団体で人口が減少し、東京都特別区の人口は逆に5%増えた。「成果があった」とされた自治体も移住者の増加によるもので、「地域間の人口の奪い合い」と指摘されている。

東京都への転入超過 男女別(2025年)

総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2025年)

「仕事がない」の中身が男女で違う

なぜ女性のほうが多く地方を離れるのか。

内閣官房の調査による転出理由の上位3つはこうだ。

  • やりたい仕事がない:44.3%
  • 希望する給与水準の仕事が少ない:41.3%
  • 東京圏のほうが収入を得られる:38.1%

一見すると男女共通の理由に見える。だが地方における「仕事」の中身は男女で質が異なる。

20代前半女性の年収は全国平均で約368万円、東京では約406万円。38万円の差だけを見ると大きくないが、地方では正規雇用の選択肢がそもそも少ない。上智大学の研究会が算出する「都道府県版ジェンダーギャップ指数」の経済分野では、フルタイム就業の女性比率と賃金格差が地域によって大きく開くことが示されている。

もうひとつ注目すべき数字がある。15〜29歳で東京に転入した女性のうち、地方に戻る割合は男性より6ポイント低い。一度東京に出た女性は地方に戻りにくい。キャリア形成の機会が東京に集中している以上、この傾向は続く。

企業誘致の件数ではなく

地方創生はこの10年、企業誘致の件数やインフラ整備率、移住相談窓口の数を主要な指標としてきた。

だが企業を誘致しても、その雇用が女性のキャリア形成につながらなければ20代女性の流出は止まらない。移住促進で人口が増えた自治体も、隣の自治体から人が移っただけなら全体の流出量は変わらない。

2024年10月に打ち出された「地方創生2.0」では、女性や若者の活躍が重点施策に含まれた。ただし20代女性の転出超過率をKPIに据えた自治体はまだ少ない。

20〜24歳女性の転出超過率が毎年6%を超える県は、30年で20〜39歳女性が半減する計算だ。消滅可能性と判定される条件そのものにあたる。地方創生の成否を測る最も直接的な指標は、企業誘致の件数ではなく20代女性の転出超過率だ。この数字が動かない限り、744自治体の将来は変わらない。