独自分析
同性婚婚姻平等最高裁パートナーシップ制度憲法
同性婚訴訟が最高裁大法廷へ。自治体530がパートナーシップ制度を先行

同性婚訴訟が最高裁大法廷へ。自治体530がパートナーシップ制度を先行

パートナーシップ制度は人口カバー率93%。世論も65%が賛成。だが法的には相続も親権も認められない。司法・自治体・学術界が同じ方向を向く中、立法だけが追いついていない

2026-06-09

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高裁で違憲判断

大法廷に集結した6件の訴訟

2026年3月25日、最高裁第三小法廷は全国6件の同性婚訴訟を大法廷に回付した。高裁段階で憲法判断が割れたためだ。

札幌・東京(1次)・福岡・名古屋・大阪の5つの高裁が「違憲」と判断。争点は主に2つの条文だ。

  • 憲法14条1項(法の下の平等)
  • 憲法24条2項(個人の尊厳に基づく婚姻制度の立法義務)

札幌高裁はさらに踏み込み、24条1項(婚姻の自由)への違反も認定した。一方、東京高裁(2次)のみが「合憲」とし、婚姻を男女間に限る解釈を支持した。

5対1。下級審の判断はほぼ一方向に収斂している。大法廷回付は最高裁が統一的な憲法判断を示す手続きだ。判決は2027年初頭と見込まれる。

同性婚訴訟 高裁判決の内訳(6件)

各高等裁判所判決(2024-2025年)

530自治体・カバー率93%の「法的空白」

司法が動く以前から、自治体は独自に制度を整えてきた。

2015年、渋谷区と世田谷区の2自治体で始まったパートナーシップ制度は10年で530自治体に拡大した。人口カバー率は93%。累計の登録件数は約9,800組を超えた。

33都府県が全域カバーを達成し、制度のない県庁所在地・政令指定都市はゼロになった。普及の加速は顕著だ。2019年に26自治体だったものが2021年に130、2023年に370、2025年に530。後半3年で約400自治体が一気に導入した。

だがこの制度に法的拘束力はない。パートナーシップ証明書があっても認められないもの:

  • 配偶者としての相続権
  • 税制上の配偶者控除
  • 子どもの共同親権
  • 配偶者ビザの取得
  • 手術同意など法的代理権

婚姻届を出せば自動的に得られるこれらの権利が、同性カップルには個別の契約や公正証書でしか代替できない。93%という数字は「社会の受容」を示す指標であって、「法的権利の保障」ではない。

パートナーシップ制度 導入自治体数の推移

渋谷区・虹色ダイバーシティ共同調査

G7唯一の未整備、世論は65%賛成

国際比較で日本の位置は明確だ。G7で同性カップルの法的保障が国レベルで整備されていないのは日本だけ。世界では39カ国が同性婚を法制化済みだ。

各国の法制化年:

  • カナダ:2005年
  • フランス:2013年
  • イギリス:2014年
  • アメリカ:2015年(連邦最高裁判決)
  • イタリア:2016年(シビルユニオン)
  • ドイツ:2017年

国内の世論も動いている。日経新聞の2023年調査で同性婚への賛成は全体の65%。20代に限れば90%を超えた。

イプソスの2025年国際調査では、「許可すべきでない」と強く反対する日本人はわずか6%。調査対象26カ国中で最も少なかった。

多数派はすでに賛成している。にもかかわらず法制化されていない。この乖離は、障壁が「社会の受容不足」ではなく「立法プロセスの構造」にあることを示している。

同性婚を法制化した国の数(世界累計)

EMA日本・各国政府資料

大法廷判決後の3つのシナリオ

最高裁大法廷の判決は2027年初頭の見通しだ。想定されるシナリオは3つある。

**シナリオ1:「違憲」判断。** 国会に立法を促す最も強いメッセージになる。ただし日本の違憲判決には法律を直接無効にする効力がない。国会が民法を改正するまで法的状態は変わらない。

**シナリオ2:「違憲状態」判断。** 現行法は違憲的だが、国会に「合理的期間」内の対応を求める形だ。1票の格差訴訟で繰り返された手法で、この場合はさらに数年の猶予が生まれる。

**シナリオ3:「合憲」判断。** 法改正の動きが大幅に鈍る。ただし高裁5対1の流れからは可能性が低いとみられる。

2026年6月5日、日本学術会議は「異性又は同性の二人の者は、婚姻をすることができる」という民法条文の新設を提案した。司法判断を待たず、具体的な立法モデルが学術界から示された形だ。

判決のシナリオ次第で、立法までの時間軸は大きく変わる。

「社会が先、法が後」── その時間差のコスト

530自治体。世論賛成65%。高裁違憲5件。日本学術会議の改正提案。データの方向性は一致している。

だが法制度は追いついていない。この構造は最高裁判決だけでは解消しない。

諸外国では、司法判断から立法完了まで2〜5年かかるケースが多い。アメリカは連邦最高裁が2015年に婚姻の権利を認定し即日発効したが、これは連邦制ゆえの例外だ。日本では最高裁が違憲と判断しても法律を無効にはできない。国会の立法を待つことになる。

仮に2027年に「違憲」判断が出ても、民法改正の施行は早くて2029年以降になる可能性がある。「違憲状態」判断なら、合理的期間の名のもとにさらに長くなる。

その間も、同性カップルは相続・親権・税制で法的に異なる扱いを受け続ける。パートナーシップ証明書は、その不平等を埋めない。

問いはもはや「是非」ではなく「いつ、どのような形で」だ。530自治体と39カ国が示す方向に、国の法制度がいつ合流するか。その時間差の長さ自体が、当事者にとっての実質的なコストになっている。