模擬選挙は授業でやる。18歳未満が本物を応援すると罰則がつく
9月25日、東京地裁が公職選挙法137条の2を憲法21条違反と初めて判断した。ただし請求は退けられ、条文はそのまま残っている
2026-09-25
94.9%
主権者教育を受ける高校3年生の割合
違憲とされたのは1項だけだった
9月25日、東京地裁は18歳未満の選挙運動を一律に禁じる公職選挙法137条の2第1項について、憲法21条に違反すると判断した。この条文への違憲判断は初めてだ。
衣斐瑞穂裁判長は、自発的な選挙運動まで一律に禁じることを「表現の自由という精神的自由に対する重大な制約」とし、「必要かつ合理的なものとは是認できない」として、違反への罰則も違憲だとした。
判決は条文を二つに分けて扱っている。
- 18歳未満の本人に選挙運動を禁じる1項:違憲
- 18歳未満を選挙運動に使った側を罰する2項:合憲
ただし、原告の請求そのものは退けられた。提訴時に16歳から18歳だった4人は、選挙運動ができる地位の確認と1人10万円の国家賠償を求めていたが、判決は立法行為が国家賠償法上違法とはいえないとした。
違憲と判断された条文は、いまも有効なまま残っている。
授業では模擬投票、校門の外では罰則
学校は選挙を教えている。文部科学省の令和4年度調査では、高校3年生に主権者教育を実施した(する予定の)学校は94.9%だった。
中身も踏み込んでいる。令和元年度の調査では、指導内容はこうなっている。
- 公職選挙法や選挙の具体的な仕組み:約85%
- 選挙管理委員会などとの連携:約52%
- 模擬選挙などの実践的な学習活動:約47%
- 現実の政治的事象についての話し合い活動:約34%
半分近くの高校が、生徒に投票を体験させている。
ところが同じ生徒が校門を出て本物の候補者を応援すると、罰則の対象になる。
原告の一人は15歳から気候変動の市民運動に加わり、2022年の参院選で候補者への質問状を作ろうとして「法律違反」と指摘された。別の原告は候補者の手伝いを申し出て、未成年は手伝えないと断られている。
SNSでも線引きは変わらない。応援する投稿を広める行為も選挙運動にあたりうるため、17歳のリポストが規制の対象になりうる。
判決が「実質的根拠は見いだしがたい」と書いたのは、この落差についてだ。
高校の主権者教育で教えている内容
出典:文部科学省「主権者教育の実施状況調査」(令和元年度)
1952年、政府の説明は審議の途中で変わった
この禁止は、最初から罰則付きだったわけではない。137条の2が加わったのは1952年の公選法改正だ。
政府は当時、未成年者が自発的に行う場合はこの法律で制限する範囲ではないと説明していた。それが国会審議で議員の意見を受け、罰則付きの全面禁止に変わった。
審議した議員自身が「理論的には変だけれど」と述べ、条文を作った側も行き過ぎた規定と疑わざるを得ないと書き残している。
条文が防ごうとしていたのは、大人が子どもを選挙に動員することだ。それなら大人を罰する2項で足りる。判決が2項を合憲としながら1項を違憲としたのは、この重なりをほどいた形になる。
罰則はいまも軽くない。違反すれば1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金で、選挙権と被選挙権も最長5年間停止される。
2016年に選挙権年齢が18歳へ下がったとき、条文の対象も「未成年者」から「年齢満18年未満の者」に改められた。区切りの年齢は動いたが、禁止そのものは74年間据え置かれている。
条文が残ったまま、次の選挙が来る
条文を改めるかどうかは、これから国会が判断する。
そのあいだも、18歳になった人の投票行動はデータに残る。参院選の18歳と19歳の投票率はこう動いた。
- 2016年:46.78%(18歳選挙権の初適用)
- 2019年:31.33%
- 2022年:34.49%
- 2025年:41.74%
2026年2月の衆院選も43%で、全体より13ポイント低い。
差がはっきり出るのは18歳と19歳のあいだだ。2025年の参院選は18歳45.78%、19歳37.63%で、8.15ポイント開いた。全体は58.51%だ。
多くの18歳は高校に在学中で、19歳は卒業後だ。学校の中で支えられた関心は、外へ出ると続きにくい。
その手前にあたる18歳未満の時期に、自発的な参加を罰則付きで禁じる条文が置かれている。
判決が動かしたのは条文ではなく、改正を議論する前提だ。焦点は、動員から子どもを守る2項を保ったまま、1項の一律禁止をどこまで絞り込めるかに移る。
参院選で18歳と19歳の投票率はどう動いたか
出典:総務省 抽出調査(国政選挙の年代別投票率)
2025年参院選の投票率(18歳、19歳、全体)
出典:総務省 抽出調査(2025年7月20日投開票)
出典
- •NHK 18歳未満の選挙運動禁止規定は憲法違反の初判断 東京地裁
- •朝日新聞 18歳未満の選挙運動、一律の禁止は「憲法違反」と判決 東京地裁
- •産経新聞 18歳未満の選挙運動を禁止する公選法規定は「違憲」 賠償請求は退ける
- •弁護士JPニュース 未成年の選挙運動を全面禁止する公選法は違憲か(結審時の解説)
- •CALL4 「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟 初回期日レポート
- •文部科学省 主権者教育(政治的教養の教育)に関する実施状況調査
- •文部科学省 令和4年度主権者教育に関する実施状況調査の結果について
- •総務省 国政選挙の年代別投票率の推移について
- •日本経済新聞 18・19歳投票率は41% 参議院選挙、前回比6ポイント上昇
- •総務省 選挙権年齢の引下げについて
- •総務省 現行の選挙運動の規制