独自分析
博物館法博物館総合調査収蔵庫学芸員望ましい基準
収蔵庫が満杯の博物館は63.7%。3月から資料の「廃棄」が選択肢に入った

収蔵庫が満杯の博物館は63.7%。3月から資料の「廃棄」が選択肢に入った

資料を買う予算がない館は3館に2館ある。増えたのは寄贈だ。ただし学芸員資格を持つ常勤職員は中央値で1人、資料台帳が未作成の館も16.1%ある

2026-10-03

63.7%

収蔵庫が満杯の博物館

収蔵庫はどこまで埋まっているか

令和6年度の博物館総合調査に、全国2,507館が答えた。日本博物館協会が2026年3月に公表した速報版だ。

本館の収蔵庫がどこまで埋まっているか聞くと、「9割以上」と答えた館が39.3%、「収蔵庫に入りきらない資料がある」が24.4%だった。

**合わせて63.7%。3館に2館だ。**

7割以上まで広げると84.4%になる。余裕がある館(5割未満)は9.5%しかない。

逃げ場も少ない。本館の外に収蔵場所を持つ館は32.8%で、都道府県立では19.2%だ。

そして2026年3月31日、「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」が全部改正された(文部科学省告示第69号)。第6条第2項に、資料の管理を考えるときの選択肢として「交換、譲渡、貸与、返却、廃棄等」が書き込まれた。

廃棄には「他の手段を検討した上でなおやむを得ないと認められるときに慎重に行う」という条件が付いている。

本館の収蔵庫がどこまで埋まっているか(回答2,228館)

出典:日本博物館協会「令和6年度 日本の博物館総合調査 調査結果の概要(速報版)」

買う予算がない館で、何が増えたのか

では、収蔵庫を埋めたのは何か。買った資料ではない。

同じ調査で、資料を買うための予算が「なし」と答えた館は6割半に達する。予算がある館でも半数以上は50万円未満で、1億円以上を持つのは2,304館のうち14館だった。

自治体の規模で差が出る。

  • 町村立:78.9%が予算なし
  • 市立:68.7%
  • 公益法人等:59.3%
  • 都道府県立:52.9%
  • 国立:47.7%

買う予算がないのに収蔵庫は満杯になる。この二つが同時に成り立つなら、増えた分の多くは寄贈や寄託、発掘や調査で入ってきた資料ということになる。

調査が描く「典型的な博物館」は、開館から35年、常勤職員3人、人文系資料3,000点だ。開館年数の中央値は2013年度調査の25年から10年伸びた。その間ずっと、入口だけが開いていた。

資料の購入予算が「なし」の館の割合(設置者別)

出典:日本博物館協会「令和6年度 日本の博物館総合調査 調査結果の概要(速報版)」

資料台帳と、判断する人の数

廃棄が選択肢に入っても、手放す作業は書類の上から始まる。何を持っているかを書いた台帳がなければ、残すものと手放すものを選べない。

その台帳が、まだそろっていない。資料台帳に「ほとんどすべて」記載していると答えた館は46.0%、未作成は16.1%だ。理工系では45.0%、水族館では44.4%が台帳を作っていない。電子データ化している館は62.6%にとどまる。

判断する人も薄い。

  • 学芸員資格を持つ常勤職員:中央値で1人
  • 専任の学芸系職員を置く館:58.5%(町村立は37.4%)
  • 学芸員資格を持つ職員がゼロの館:582館(全体の26.3%)

館が挙げた課題を並べると、施設設備の老朽化80.4%、資料のデジタル化ができていない78.7%、収蔵スペース不足77.8%、職員数の不足73.2%が並ぶ。前回調査からの増え方が大きいのは、収蔵スペース(5.7ポイント増)と老朽化(5.2ポイント増)だ。

博物館が挙げた課題(あてはまる・まああてはまる)

出典:日本博物館協会「令和6年度 日本の博物館総合調査 調査結果の概要(速報版)」

寄贈を受ける側で起きていること

ここから読めるのは、出口が開いても、出口を通す作業ができる館は限られるということだ。台帳の整備、来歴の確認、処分を決めた記録を残す手続き。どれも1人の学芸員の机に積まれる。

一方で、入口を絞るほうは1人でもできる。

実際、「新たな資料を入手しにくくなっている」と答えた館は65.9%で、前回から3.2ポイント増えた。「新たな資料修復が充分できていない」も65.4%ある。

**当面進むのは、収蔵品の選別より受け入れの手控えだ。**

実家を片付けて古い農具や写真、文書を地元の館へ持ち込もうとすると、断られる場面は増える。寄贈は受け取る側の体制に左右される、という前提で動くことになる。

基準に選択肢が増えた分、分かれ目は館ごとの規程に移る。台帳をいつまでに電子化するか、誰がどの手続きで手放すと決めるか、その記録を後から検証できるようにするか。この3点を文書にしている館と、していない館で、同じ告示への対応は違う形になる。