独自分析
マイナ保険証医療DX後期高齢者資格確認書行政デジタル化
マイナ保険証、85歳以上は4人に3人が紙のまま病院に通っている

マイナ保険証、85歳以上は4人に3人が紙のまま病院に通っている

全国の利用率は68%に達し、7月末には旧保険証の暫定措置も終わる。だが後期高齢者2,000万人全員に届いた資格確認書は薬歴共有も高額療養費の自動適用も使えない。医療DXの恩恵は最も通院が多い世代に届いていない

2026-07-05

24%

85歳以上のマイナ保険証利用率

利用率68%、7月末で最後の猶予が終わる

マイナ保険証の全国利用率は、2026年4月時点で68.15%に達した。 2024年2月の4.99%から、2年で13倍以上に伸びた。

転機は2025年12月だった。 従来の健康保険証が失効し、利用率は前月の49.48%から63.24%へ跳ね上がった。 「任意で使う」から「旧カードが使えなくなった」への変化が、数字を一気に押し上げた。

そして7月31日、最後の暫定措置が終わる。 いまは期限切れの保険証でもオンライン資格確認で受診できるが、8月からはマイナ保険証か資格確認書の携帯が必要になる。

マイナンバーカードの保有率は82.7%。 だが「カードを持っている」と「保険証として使っている」のあいだには約15ポイントの差が残っている。

マイナ保険証利用率の推移

厚生労働省

85歳以上は24%、富山と沖縄で22ポイント差

68%という全国平均を年代別に見ると、偏りがある。 70〜74歳で約48%、85歳以上は約24%。 4人に3人がマイナ保険証を使わずに通院している。

地域差も大きい。

  • 富山県 77.9%
  • 宮崎県 約73%
  • 沖縄県 55.3%
  • 東京都 約60%

富山と沖縄で22.6ポイントの開きがある。 人口の多い東京や大阪は全国平均を下回っている。

保険制度別の差もある。 健保組合や共済組合では登録率が80%を超えるが、市町村国保では70%に届かない。 後期高齢者医療制度はこの低い登録率の層と重なる。

年代別マイナ保険証利用率(2026年)

厚生労働省

資格確認書は届いた、だが医療DXは届いていない

後期高齢者は全国に約2,000万人いる。 うちマイナンバーカード保有者が約1,300万人、非保有者が約700万人。 全員に資格確認書が自動で届いている。

資格確認書があれば、従来と同じ窓口負担で受診できる。 医療アクセスは守られている。 だが資格確認書では、マイナ保険証で使える以下の機能が利用できない。

  • 過去の処方薬や特定健診の結果を医師とその場で共有できる
  • 高額療養費の限度額が自動適用され、限度額適用認定証の事前取得が不要になる
  • 複数の医療機関にかかっても薬の飲み合わせを電子データで確認できる

いずれも、複数の診療科にかかり多くの薬を処方される高齢者ほど意味が大きい機能だ。 利用率24%は、この恩恵がほとんど届いていないことを意味する。

医療費の4割を使う世代がアナログで通院している

2024年度の国民医療費は過去最高の48兆円を超えた。 75歳以上が占める割合は初めて4割を上回り、1人あたりの年間医療費は約97万円にのぼる。 後期高齢者の4割以上が毎月通院している。

重複処方の防止や高額療養費の自動適用は、この世代で最も効果が大きい。 紙のお薬手帳は持ち忘れることがあるが、電子データは持ち忘れない。

利用率68%は全体の数字としては順調だ。 だが医療費の4割を使う世代が利用率24%にとどまっている以上、デジタル化の費用と恩恵のバランスは偏っている。

利用率を「全受診者に占める割合」ではなく「医療費の重みづけ」で見たとき、実質的な浸透率は68%よりかなり低い。 医療DXの進み具合は「何人がカードを持ったか」ではなく「誰が使っているか」で見る必要がある。