
原発15基動いても電気代は下がらない — エネルギー自給率12.6%の壁
再稼働は進むが、国民の財布への恩恵は限定的。エネルギー政策の支持率を読む。
2026-03-16

12.6%
日本のエネルギー自給率
この記事の全体像
全体像 — 原発15基でも自給率12.6%の壁は残る
日本のエネルギー政策は、再稼働の進展と自給率の低迷が同時に進む矛盾を抱えている。2026年3月時点で原発15基が再稼働し、電源構成における原子力比率は5.5%まで回復した。一方で、日本のエネルギー自給率は12.6%にとどまり、主要先進国で最低水準にある。火力発電はなお69.9%を占め、天然ガスや石炭の国際価格に電力コストが左右される構造は変わっていない。電気料金の全国平均は2019年比で約30%上昇したままで、再稼働の効果は家計に直接届きにくい。再生可能エネルギーは22.9%まで拡大したが、政府が掲げる2030年目標の36〜38%にはまだ約14ポイントの差がある。内閣支持率57.7%を維持する高市政権にとって、エネルギーコストの高止まりは国民生活に直結する課題であり、西村財務大臣への支持率0.1%、不支持41.0%という厳しい評価は、物価高への不満がエネルギー分野にも及んでいることを示している。
日本の電源構成
2025年度 | 出典:資源エネルギー庁
原発15基の実態 — 再稼働は値下げを意味しない
原発再稼働は進んだ。福島第一原発事故後にすべて停止していた原発のうち15基が稼働を再開し、電源構成の5.5%を担っている。これにより年間約1兆円の化石燃料輸入が削減されたとの試算があり、CO2排出量の削減にも寄与している。ただし、事故前に54基が稼働し、電源構成の約30%を担っていた時代とは規模が大きく異なる。再稼働には追加コストも伴う。テロ対策施設である特定重大事故等対処施設の建設が各原発に義務付けられ、安全対策の強化には1基あたり数千億円が投じられている。この費用は最終的に電気料金に転嫁されるため、「再稼働すれば電気代が下がる」という単純な構図にはならない。さらに、使用済み核燃料の処分費用や廃炉コストは長期的な国民負担として残る。高市政権は「原発を含むあらゆるエネルギー源を最大限活用する」方針を掲げるが、安全性への懸念や地元合意には時間がかかる。中谷防衛大臣の支持率27.9%に見られるように、エネルギー自給率向上は安全保障面で支持され得るが、原発への評価は一枚岩ではない。
再エネ22.9% — 2030年目標には加速が必要
再生可能エネルギーの電源比率は22.9%となり、2015年の約15%から着実に増えてきた。牽引役は太陽光発電で、住宅用・事業用を合わせた導入量は世界第3位に達している。北海道や東北ではメガソーラーの建設が進み、九州では好天時に再エネが需要の8割以上をまかなう瞬間も生まれている。それでも、2030年の政府目標である36〜38%との差は約14ポイントある。年間約2ポイントの拡大ペースでは2030年に29〜30%程度にとどまり、目標達成には大幅な加速が必要となる。洋上風力発電は長期的な切り札とされるが、環境アセスメントの長期化は平均5〜7年に及び、地元漁業者との調整も計画の進行を遅らせている。さらに、北海道や九州で発電した再エネ電力を大消費地へ送る広域連系の送電網整備には5〜10年を要する見込みだ。自民党31.1%は原発活用と再エネ拡大の両にらみ、チームみらい23.5%はスマートグリッドとAI需給予測、国民民主党12.8%はガソリン税引き下げなどエネルギーコスト低減を掲げるが、自給率12.6%という脆弱性の解消には中長期戦略が求められる。
地政学リスク — 輸入依存87.4%の不安定さ
エネルギー自給率12.6%は、日本のエネルギーの87.4%を海外からの輸入に依存していることを意味する。中東ホルムズ海峡を通過するLNG輸入は約2割、原油は約8割に上り、台湾海峡有事やホルムズ海峡の封鎖は日本のエネルギー供給に大きな影響を与え得る。石油備蓄は約200日分が確保されている一方、LNG備蓄はわずか2〜3週間分にとどまる。この非対称性は、安全保障上の脆弱性として重い。中谷元防衛大臣、支持率27.9%が推進する経済安全保障政策でも、エネルギー安保は中核テーマの一つに位置付けられている。レアメタルやレアアースを含む戦略物資のサプライチェーン強靱化と並び、安定供給の確保は優先課題である。エネルギーの供給が途絶すれば、防衛力の前提が崩れ、自衛隊の活動そのものも制約される。原発、再エネ、省エネのいずれも単独ではこのリスクを解消できず、経済合理性、安全性、環境負荷、地政学リスクを同時に扱う政策設計が必要になる。
今後の焦点 — 生活コストと安全保障の両立
国民が求めているのは、安全保障と生活コストの両立である。電気料金が2019年比で約30%上昇したままの状況では、原発15基の再稼働や年間約1兆円の化石燃料輸入削減という効果があっても、家計の実感にはつながりにくい。再エネ22.9%、原子力5.5%、火力69.9%という現在の電源構成は、脱炭素、安定供給、料金抑制のすべてを同時に満たすにはなお不十分だ。平デジタル大臣の支持率59.6%は、テクノロジーを活用した社会課題解決への期待を示しており、エネルギー分野でもスマートメーター、AIによる需給最適化、P2P電力取引が議論されている。しかし、自給率12.6%という構造的な低さは技術だけでは解決できない。高市政権が掲げる「あらゆるエネルギー源の最大限活用」は、原発、再エネ、省エネを組み合わせる総合戦略として具体化される必要がある。エネルギー自給率をどこまで引き上げるのか、その数値目標と達成手段は、次の総選挙で隠れた争点となる可能性がある。