独自分析
OTC類似薬一部保険外療養セルフメディケーション健康保険法改正国民医療費
OTC類似薬の上乗せで45円が72円に。同じ薬を店で買えば約500円だ

OTC類似薬の上乗せで45円が72円に。同じ薬を店で買えば約500円だ

2027年3月、77成分1,042品目の薬剤費の4分の1が保険の外に出る。湿布も花粉症の薬も対象に入る

2026-10-03

1,042

一部が保険の外に出る医薬品の品目数

2027年3月1日に変わること

2027年3月1日、処方薬の一部に新しい自己負担が加わる。

根拠は2026年6月公布の健康保険法等改正法(令和8年法律第31号)だ。市販薬との代替性が特に高い薬について、費用の一部を保険給付から外す「一部保険外療養」という枠が作られた。

対象は77成分、1,042品目。市販薬と成分も投与経路も同じで、1日の最大用量も変わらない医療用医薬品を機械的に選んだものだ。

該当する症状は幅広い。

  • 鼻炎、風邪症状全般
  • 胃痛や胸やけ、便秘
  • 解熱と痛み止め
  • 腰痛や肩こり、みずむし
  • 口内炎、皮膚のかゆみや乾燥肌

仕組みはこうだ。薬剤費の4分の1が「特別の料金」として保険の外に出て、全額が患者の負担になる。残りの4分の3にだけ、これまでどおり3割負担がかかる。

合計すると薬剤費の47.5%を払うことになる。

ただし全員ではない。18歳の年度末までの子ども、生活保護の受給者、がんや難病で治療中の人、入院中の患者、医師が長期の使用を医療上必要と判断した人は対象から外れる。

上乗せしても、店で買うより安い

この制度が患者の行動をどれだけ動かすかは、金額を並べると見当がつく。

厚生労働省の資料にある例が分かりやすい。解熱鎮痛薬5日分の薬剤費の自己負担は、いまの45円程度から72円程度になる。

同じ成分の市販薬を買えば、およそ500円だ。

上乗せが入ったあとでも、処方でもらうほうが7倍ほど安い。

もっと差が大きい薬もある。保険から完全に外した場合の試算として厚労省が示した数字では、こうなる。

  • 湿布薬14枚:処方なら54円、市販薬は525円から1,958円
  • 花粉症薬14日分:処方なら87円から241円、市販薬は743円から2,075円

最大で36倍の開きだ。今回決まったのは、この開きを4分の1ぶん詰める設計だ。

価格差は縮むが、処方でもらうほうが安いという順位は変わらない。受診して薬をもらうかどうかが値段で決まるなら、72円と500円の間では動きにくい。

解熱鎮痛薬5日分、薬の代金として払う額

出典:厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会資料、薬事日報

1兆円の想定が900億円になるまで

財政面の見込みも、議論の初期から大きく変わった。

日本総合研究所が2026年7月にまとめた分析によると、OTC類似薬の見直しで想定された財政効果は、当初の1兆円規模から年約900億円へ縮んだ。

900億円の位置を置いてみる。令和5年度の国民医療費は48兆915億円、薬局調剤医療費は8兆4,563億円だ。

国民医療費に対して0.2%弱にあたる。

一方で、窓口の作業は増える。中医協の答申では処方箋の様式に「一部保険外療養」の欄が新設され、対象の薬には○、対象外には−を書き分けることになった。

医師が長期使用の必要性を判断した場合もここで示す。薬局はそれを見て特別の料金を計算する。院内掲示の義務は課さないことも併せて決まった。

削減額の規模と、現場に増える手間の規模が、きれいには対応していない。ここから読めるのは、当面の意味が削減額そのものより「保険の外に置く枠を作ったこと」のほうにあるという見方だ。

年間の医療費削減の見込み額

出典:日本総合研究所の分析(2026年7月)

次に動くのは率と、毎年4月のリスト

枠ができた以上、見るべき数字は2つに絞られる。4分の1という率と、1,042という品目数だ。

どちらも動くことが前提に置かれている。対象品目は原則として毎年4月1日に更新すると決まった。

改正法の附則には検討規定があり、社会保障審議会医療保険部会の議論の整理にも「対象となる医薬品の範囲の拡大や特別な料金の変更」を施行状況を見て検討する、と書かれている。

移る先の市場にも目を向けたい。2025年の国内OTC医薬品市場は1兆2,780億円で、前年比99%と4年ぶりに前年を割った。

市販薬で対応する人が増えている、という数字にはまだなっていない。

同じ議論の整理は、スイッチOTC化に向けた政府目標の達成を環境整備として挙げている。市販薬の側で選べる成分が増えなければ、処方から移る先が用意されない。

2027年3月に起きるのは、負担の大きな切り替えというより、率と対象リストという2つのつまみが据えられることだ。患者の負担が実際にどう動くかは、最初の更新が入る2027年4月以降の数字に出てくる。

国内OTC医薬品市場は4年ぶりに前年を割った

出典:富士経済「一般用医薬品データブック」2025年実績