独自分析
再生可能エネルギー出力制御送電網太陽光発電エネルギー政策
太陽光の電気が年20億kWh捨てられる。再エネ出力制御の実態

太陽光の電気が年20億kWh捨てられる。再エネ出力制御の実態

太陽光導入量は世界3位、2040年に再エネ4-5割を掲げた。だが出力制御は全国に拡大し、九州では発電量の6%が使われない。ボトルネックは発電容量ではなく、連系線と蓄電池の整備速度にある

2026-06-23

20億kWh

再エネ年間出力制御量

太陽光「世界3位」の裏側にある数字

太陽光パネルの累積導入量で日本は世界第3位。2023年度は73.8GW、再エネの電源比率は22.9%に達した。

だがもう一つ見るべき数字がある。年間20億kWh超の再エネ電力が「出力制御」で使われていない。

出力制御とは、電力の供給が需要を上回ったとき発電設備を強制的に止める措置だ。太陽光が集中的に発電する昼間、送電線の容量が足りなければ作った電気を止めるしかない。

2025年度には東京電力エリアを含む全電力会社が出力制御を実施する見込みになった。一部地域の課題から、全国規模の構造問題に変わりつつある。

九州6%、東北の風力52% ── 地域で異なる「届かない電力」

出力制御の規模は地域によって大きく異なる。2024年度の見通しを並べると差は鮮明だ。

  • 九州:6.1%(約10億kWh)
  • 中国:5.8%(約5.7億kWh)
  • 四国:4.5%(約2.4億kWh)
  • 東北:2.5%(約4.0億kWh)

九州は太陽光の導入が全国で最も早く進んだ地域だ。晴天の昼間に供給が需要を大きく上回る状態が常態化している。

東北はさらに構造的な問題を抱える。風力の瞬間的な出力抑制率が52.4%を記録した時間帯がある。国内最大の風力資源エリアで、発電した電力の過半を吸収できない時間が存在する。

そのとき稼働していた系統用蓄電池はわずか44MW。契約済みの1GW超は、アグリゲーター制度の未整備と収益モデルの不透明さから稼働に至っていない。

地域別 再エネ出力制御率(2024年度見通し)

資源エネルギー庁

連系線の増強は2028年以降 ── 「届ける力」はいつ追いつくか

出力制御を減らすカギは2つある。地域間連系線の増強と、系統用蓄電池の大量稼働だ。

連系線の整備計画はこうなっている。

  • 北海道-本州間:90万kWから120万kWに増強(2028年3月完了予定)
  • 日本海側海底送電線:200万kW新設(2030年度の運用開始を目指す)

蓄電池は契約ベースでは急増中だ。2025年9月時点の申込は約2,400万kWで前年比3.9倍。2026年4月からは出力制御より蓄電池への充電を優先する運用に変わった。

ただし契約と稼働は別物だ。接続工事の遅延、収益モデルの未確立、「空押さえ」防止の規制強化が重なる。連系線の本格増強も2030年以降になる。今後4年は「作れるのに届かない」期間が続く構造だ。

「作る」から「届ける」へ ── 2040年の電源構成を左右する変数

第7次エネルギー基本計画は2040年の電源構成を再エネ40-50%、原子力20%、火力30-40%と定めた。再エネは現在の22.9%からほぼ倍増する計算だ。

太陽光だけでも2030年に104-118GW、2040年には204-281GWへの拡大が見込まれている。

だが発電設備を積み増しても、出力制御率が上がれば実効的な再エネ比率は目標に届かない。投資効率が低下すれば事業者の参入意欲も落ちる。

2040年の電源構成を決めるのは太陽光パネルの枚数ではなく、連系線と蓄電池の整備速度だ。再エネ政策は「作る」フェーズを終え「届ける」フェーズに入った。発電量の目標だけでなく送電力の整備計画を同時に評価する視点が、今後の議論には不可欠になる。

太陽光発電 累積導入量の推移と目標

資源エネルギー庁