独自分析
出力制御太陽光発電再生可能エネルギー電力系統系統用蓄電池
東京でも太陽光が止まった。出力制御は全国10エリアに広がった

東京でも太陽光が止まった。出力制御は全国10エリアに広がった

全国の再エネ設備は1億kWを超え、春の昼の最小需要6,900万kWを上回った。足りないのは発電所ではなく、電気を使う時間になっている

2026-08-10

184万kW

東京エリアで初めて出力制御された再エネ出力(2026年3月1日)

3月1日、首都圏で初めての出力制御

2026年3月1日の日曜日、東京電力パワーグリッドが再生可能エネルギーの出力制御を実施した。首都圏では初めてだ。

実施したのは11時から16時まで。実際に電気が余ったのは12時から12時半の30分間で、抑えた出力は合計184万kW、うち181万kWが太陽光と風力だった。

出力制御は、発電できるはずの電気をあえて発電させない仕組みだ。最初は2018年の九州で、そこから実施エリアが少しずつ広がってきた。この日をもって、全国10エリアすべてが経験したことになる。

国内で需要が最も大きい首都圏にまで届いた。それがこの一日の意味だ。

2026年度の再エネ出力制御率の見通し(エリア別)

出典:資源エネルギー庁 次世代電力系統WG(2025年12月24日)

太陽光を止める前に、何をしているか

なぜ晴れた日の昼に発電を止めるのか。電気は需要と供給を常に一致させないと周波数が乱れ、最悪の場合は大規模な停電につながるからだ。

余りそうなときの手順は決まっている。

  • まず火力発電の出力を最低限まで下げる
  • 揚水発電で水をくみ上げ、蓄電池に充電する
  • 連系線を使って他のエリアに送る
  • それでも余ればバイオマス、最後に太陽光と風力を止める

太陽光を止めるのは、あくまで最後の手段だ。問題は、その最後の手段まで届く日が増えていることにある。

2025年のゴールデンウィーク、九州では太陽光と風力の発電が需要の149.8%に達した。四国は140.0%、東北は130.7%、中国は128.1%。春や秋の休日の昼は、天候まかせの再エネだけで需要を超えるエリアが4つある。

最小需要日に太陽光と風力が需要に占めた割合(2025年)

出典:資源エネルギー庁 次世代電力系統WG

設備は1.6倍、制御量は16倍

全国の再エネ設備は2024年12月末で1億60万kW。ゴールデンウィークの昼の最小需要6,900万kW程度を、すでに大きく上回っている。

効いているのは伸び方の差だ。太陽光と風力の発電量は2018年度の660億kWhから2024年度の1,046億kWhへ1.6倍になった。同じ期間に出力制御量は1億kWhから16億kWhへ、16倍に増えている。

各エリアが公表した2026年度の見通しを足し合わせると、制御量は約25億kWh。一般家庭の年間使用量を4,000kWhとすれば、およそ60万世帯の1年分にあたる。

対策が止まっているわけではない。遠隔で出力を調整できるオンライン化は進み、九州では旧ルールの太陽光事業者の82.2%が切り替えを終えた。特別高圧の設備に限って、実際の需給の直前まで制御指令を引きつける運用も検討されている。

それでも、全エリアがオンライン化を終えた前提で試算しても、2026年度の制御量は23.6億kWhにとどまる。減るのは1.4億kWhで、全体の6%に満たない。運用の改善だけでは追いつかない量になっている。

九州エリアの年間出力制御量の推移(億kWh)

出典:資源エネルギー庁 次世代電力系統WG

これからは、いつ使うかで電気代が変わる

ここまでの数字が意味するのは、日本の再エネが「足りない」段階を終え、「同じ時間に多すぎる」段階に入ったことだ。パネルを増やしても、増えた分がそのまま使える電気になるとは限らない。

制御率は毎年上下する。九州は2023年度の8.3%から2024年度は4.8%に下がり、2026年度は6.9%に戻る見通しで、天候と需要しだいで振れる。

だから打ち手の重心は、発電側から需要側と系統側に移りつつある。国の長期試算はすでに、各エリアの最小需要の10%分を蓄電池が6時間ぶんの需要として作り出す前提を置き、北海道から東北へ200万kW、東北から東京へ200万kWといった連系線の増強も織り込んでいる。

その先にあるのは、電気の値段が量だけでなく時間で決まる世界だ。洗濯や給湯、EVの充電を昼に寄せられる家庭、昼間に稼働を集められるデータセンターや工場ほど、安い電気を使えるようになる。屋根に太陽光を載せるかどうかより、いつ使うかが電気代を分けていく。