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再審を求めた269人のうち、やり直しが認められたのは2人

再審を求めた269人のうち、やり直しが認められたのは2人

78年ぶりの再審法改正で検察官の不服申し立ては原則禁止に。ただ、長期化の大半はその手前の請求審で起きている

2026-08-03

0.7%

再審開始が認められた割合(2023年)

269人のうち2人という割合

2026年7月17日、再審の手続きを定めた刑事訴訟法の改正が成立した。再審に関する規定が変わるのは、1948年に現行の刑事訴訟法ができて以来はじめてになる。78年ぶりだ。

まず、いまの再審がどれくらい狭い道なのかを数字で確認する。

最高裁判所事務総局の集計では、2023年に裁判所の決定が出た再審請求269人のうち、再審開始が認められたのは2人だった。割合にすると0.7%になる。

司法統計をもとにした法務省の資料でも、再審開始決定を受けた人数は年に0人から5人の間で動いている。

  • 2017年 5人
  • 2018年 3人
  • 2019年 4人
  • 2020年 0人
  • 2021年 1人

一方、裁判所が受理する再審請求は年389人から442人。入口と出口では桁が2つ違う。「開かずの扉」と呼ばれてきたのは、この落差のことだ。

2024年に無罪が確定した袴田事件でも、最初の再審請求から40年以上が過ぎていた。

再審開始決定を受けた人数の推移

出典:法務省「再審請求事件の既済人員数等」(司法統計年報より作成)

改正で確実に消える待ち時間

改正の柱は3つある。

  • 裁判所が検察官に証拠の提出を命じる「証拠提出命令」の新設
  • 再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを原則禁止(取り消すべき「十分な根拠」があるときは例外)
  • 確定判決に関わった裁判官を、再審請求の審理から外す除斥の規定

このうち、削られる時間をはっきり計算できるのは2つ目だ。

再審開始が決まっても、検察官が不服を申し立てれば、やり直しの裁判はそこから始まらない。日弁連の整理では、その申し立てによって開始が遅れた期間は事件ごとにこうなっている。

  • 布川事件 約4年3か月
  • 東住吉事件 約3年7か月
  • 松橋事件 約2年3か月
  • 湖東事件 約1年3か月

1年から4年。改正後は、この待ち時間が制度上は原則として発生しなくなる。

検察官の不服申し立てで再審の開始が遅れた期間

出典:日本弁護士連合会「再審についてのQ&A」

時間の大半は開始決定より前にある

ここで数字を並べ替えてみる。

布川事件は1983年12月の再審請求から2011年6月の無罪確定まで27年以上かかった。検察官の不服申し立てによる4年3か月は、そのうちの約16%にすぎない。

残りの8割強は、再審開始決定が出るまでの請求審に費やされている。

他の事件も同じ形だ。大崎事件は28年、日野町事件は21年、名張事件は50年。全体の長さを決めているのは、扉が開くのを待つ時間のほうだ。

だとすれば、改正が効くかどうかは1つ目の証拠提出命令にかかる。請求審が長引く主な理由が、どんな証拠が存在するのかをめぐるやり取りだからだ。

ただし命令の対象は「再審請求の理由に関連する証拠」に限られ、裁判所が必要かつ相当と判断したときに出される。検察官の手元にある証拠を一覧にして示す仕組みは、今回は入らなかった。

日弁連は会長声明で、過去に「不見当」と回答された証拠が後から見つかった例が複数あると指摘している。請求する側は、何があるのか分からないまま証拠を特定して求めることになる。

再審を求めてから経過した年数(主な事件)

出典:日本弁護士連合会「再審についてのQ&A」

5年後の検討で見るべき数字

改正法は公布から1年以内に順次施行される。附則には、施行後5年ごとに再審制度のあり方を改めて検討する規定が入った。

そのとき「再審無罪が何件増えたか」を成果の物差しにすると、判断を誤りやすい。年に数人という母数では、1人の増減で割合が大きく振れるからだ。

制度が実際に動いたかを見るなら、指標は次の2つになる。

  • 再審請求から開始決定までにかかった年数の変化
  • 証拠提出命令が何件申し立てられ、何件出されたか

前者は請求審そのものの長さ、後者は新しい仕組みが使われているかどうかを表す。どちらも今回の改正が直接手を入れた部分だ。

5年後に269人に2人という割合が動いていたとしても、それは検察官の不服申し立てが減ったからではない。抗告が制限されたのは、開始決定が出たあとの段階だからだ。

開始決定までの年数が縮んだときに、はじめて扉の幅そのものが変わる。