コメの価格が2割下がっても、消費は戻っていない
5kgの店頭価格は4,416円のピークから3,554円に下がった。だが消費量は前年割れが続き、在庫は229万トンと過去20年で最大に積み上がっている。「令和の米騒動」で増産を決めた農家は、資材費4割増と値崩れの板挟みに立たされている
2026-07-08
34%
食べる頻度を減らした消費者の割合
値下がりした米は売れているか
2024年夏、「令和の米騒動」が起きた。前年の猛暑による品質低下と在庫減少に加え、南海トラフ地震臨時情報をきっかけに買いだめが広がった。スーパーの棚から米が消えた。
5kgの店頭価格は2025年末に4,416円のピークをつけた。2026年6月末には3,554円まで下がり、約2割の下落だ。
だが消費量は回復していない。2025年3月から12月まで9カ月連続で前年同月を下回り、4月から7月は前年比9%以上の減少が続いた。
19紙共同アンケートでは「食べる頻度が減った」と答えた消費者が34%にのぼった。そのうち約4割が「この頻度のまま定着した」と答えている。
パンや麺に切り替わった食卓は、値札が変わるだけでは元に戻りにくい。
米の消費行動の変化
19紙共同アンケート(2025年)
増産と在庫の積み上がり
「令和の米騒動」は農家の増産意欲も高めた。
JA全中の調査では、2026年産米に向けて29%の農家が作付面積の拡大を予定していた。拡大理由の44%は「販売価格が高い」だ。2025年産の高値を見て、翌年の生産計画が決まった形になる。
栃木県は前年より1,600ヘクタール増え、全国最大の増加幅だった。
結果、供給が需要を上回った。2025年産の生産量は748万トン、需要は687万〜711万トン。37万〜61万トンの余剰が出ている。
民間在庫は2026年6月末時点で229万トンの見通し。2013年の224万トンに並ぶ、過去20年で最大の水準だ。
スポット取引価格はすでに反応している。60kgあたりの相対取引価格は2025年11月の37,058円から、2026年1月に26,303円へ。約30%の下落になった。
生産コストは上がったまま
農家にとって値崩れだけが問題ではない。生産コストの高止まりが続いている。
60kgあたりの全算入生産費は15,814円(2024年産)。ウクライナ侵攻前と比べ、肥料や燃料を中心に資材費は4割近く上がったまま下がっていない。
ただし経営規模でコストは大きく異なる。
- 1〜3ヘクタール:17,781円
- 3〜5ヘクタール:15,196円
- 5〜10ヘクタール:13,749円
- 10〜15ヘクタール:12,188円
- 15〜20ヘクタール:10,988円
大規模農家はスポット2.6万円台でも利益が出る。だが基幹的農業従事者102.1万人の平均年齢は67.6歳、65歳以上が69.5%を占める。この5年で25%減った。
小規模農家が退出し大規模化が進む流れはある。ただ、そのスピードが値崩れと需要の縮小に追いつくかは見通せていない。
規模別の米60kgあたり生産費
農林水産省「農産物生産費統計」(2024年産)
年間50kgまで半減した需要は戻るか
日本人の1人あたり米消費量は1962年の118.3kgから、2024年の50.7kgへ半分以下になった。60年かけて半減した需要は、値下げだけでは回復しない。
在庫が積み上がると価格が下がり、農家は翌年の作付けを減らす。減産で在庫が減れば価格が上がり、増産してまた余る。このサイクルが繰り返される中で、毎年の消費量は着実に減っていく。
2026年産米の生産目安は725万トン、需要見通しは694万〜711万トン。消費減退が年1%ペースで続けば、5年後の需要は660万トン台まで縮む計算だ。
米の輸出はインバウンド需要を含めて年6.3万トン。国内余剰を吸収するには桁が足りない。民間輸入米は年約10万トン規模に達しており、価格次第では外国産米との競合も強まる。
価格変動で農家の行動が振れ続ける構造は、消費が右肩下がりの市場では不安定さを増す。日本の米は「足りない」と「余る」を短い周期で繰り返す局面に入っている。