コメ5kgは1,490円安くなった。倉庫のコメは66万トン増えている
集荷は26.7万トン増えたのに、売れた量は19.9万トン減った。7月に成立した改正食糧法は「生産調整」の規定を廃し、民間の事業者に20万トン程度の備蓄を義務づける
2026-10-04
66万トン
8月末の民間在庫の前年増加分
7週連続の値下がりは、消費が戻ったからではない
スーパーのコメ5kgの平均価格は、9月21〜27日の週で2,926円だった。値下がりは7週連続で、2,000円台は3週続いている。過去最高だった2025年12月29日〜2026年1月4日の週の4,416円から、9か月足らずで1,490円下がった。
ただし「消費が戻って値段がこなれた」と読むと、数字が合わない。
農林水産省が9月30日に公表した8月の米穀流通では、販売数量は187.5万玄米トンで、前年同月より19.9万トン少ない。一方で集荷数量は269.9万玄米トンあり、こちらは26.7万トン多い。
**入ってくる量が増え、出ていく量が減った。**
値段は売れたから下がったのではなく、売れ残ったから下がっている。同じ8月の販売価格を前年同月と比べると、小売事業者向けは91.9%まで落ちた一方、中食や外食向けは113.8%で前年を上回った。安くなったのは、家庭用の棚に並ぶコメだ。
スーパー店頭のコメ5kg平均価格(2026年の週次調査)
出典:農林水産省(全国約1,000店のスーパー販売価格)
増えた66万トンは、卸に渡る手前で止まっている
売れ残りは倉庫の数字に出ている。8月末の民間在庫は150万玄米トンで、前年同月より66万トン多い。8月末としては過去最大だ。
内訳を見ると、偏りがはっきりする。
- 出荷段階:108万玄米トン(前年比+57万トン)
- 販売段階:42万玄米トン(前年比+9万トン)
増えた66万トンのうち57万トンは、農協や集荷業者が抱える出荷段階にある。卸や小売に渡る手前で積み上がった。
在庫の重さは、まず生産者が受け取る価格に出た。JAグループは2026年産の概算金を16道県で前年より2〜4割低く提示し、JA全農長野はコシヒカリ玄米60kgを1万6,730円(約4割減)と決めた。倒産や廃業で撤退したコメ農家は2026年1〜8月で32件あり、年間で最も多かった24年と25年に並ぶペースだ。
政府は9月18日、2025年に放出した備蓄米のうち21万トンの買い戻し契約を結んだ。予算で確保していた15万トン分を、21万トンに広げている。
8月末の民間在庫、段階別(玄米)
出典:農林水産省 令和8年8月の米穀流通の動向
改正食糧法は、在庫を抱える役を民間に移した
在庫が積み上がる途中の2026年7月8日、改正食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)が成立した。変わったのは大きく2点だ。
- 需要の減少を前提とする**生産調整**の規定を廃止し、「需要に応じた生産」を明記した
- 一定規模以上の集荷業者や卸売業者に保有を義務づける**民間備蓄**の制度を新設した
適正備蓄水準は100万トン程度とされ、そのうち20万トン程度を民間が担う。施行は公布から1年以内で、民間備蓄だけは2年以内だ。
2つを並べると、需給の振れを吸収する役が入れ替わったことが分かる。国が需要の減少を前提に生産量の目安を置く方式から、できたコメを民間が在庫として抱える方式へ移った。
ただし義務づけられる20万トン程度は、この1年で増えた66万トンより小さい。残りは義務の外に置かれ、これまでと同じく出荷段階に留まる。
適正備蓄水準100万トンの分担(改正食糧法の民間備蓄)
出典:農林水産省、日本農業新聞の報道
生産調整が外れた初年度は、22万トンの余りから始まる
2026年産の作付面積は、6月末の意向調査で136万haだった。前年実績比7千ha減で、ほぼ前年並みだ。生産量は733万トンと見込まれ、政府が想定する最大需要711万トンを22万トン上回る。
生産調整の規定が外れた最初の年は、この22万トンを抱えたところから動き出す。来年に持ち越す在庫は、減る側ではなく積み増す側に傾いている。
この条件では、価格の振れ幅は作付面積よりも「誰が在庫を抱えられるか」で決まる。倉庫代と金利を負担できる段階に在庫が溜まり、負担できない段階から売り急ぎが出る。概算金の2〜4割減は、その順番が生産者側から始まったことを表している。
だから次に見る数字は、店頭の5kg価格ではない。
- 出荷段階の108万トンがどこまで減るか
- 集荷数量に対して販売がどこまで追いつくか
- 備蓄米の買い戻しが毎年20万トン規模で収まるか
民間備蓄の義務が動き出すまでに2年ある。その間に在庫が150万トンの水準から下りてこなければ、義務の20万トンは新たに積む分ではなく、すでに積まれている分の付け替えになる。