再審請求が終わった1,149人。裁判のやり直しが決まったのは13人だった
1948年以来初の再審規定の見直しが2026年7月に成立した。変わるのは主に、再審が決まったあとの手続だ
2026-09-27
13人
5年間で再審開始が決まった人数
再審が始まる人数
福岡県飯塚市で1992年に女児2人が殺害された事件で、弁護団が3回目の再審請求に向かうと9月に明らかにした。事件から34年、元死刑囚の刑が執行されてから18年になる。
再審は裁判のやり直しだが、そのやり直しが決まること自体がまれだ。
最高裁の司法統計をもとにした法務省の資料によると、2017年から2021年の5年間に再審請求の審理が終わったのは1,149人。うち再審開始が決まったのは13人だった。
内訳はさらに偏っている。
- 地方裁判所:762人の審理が終わり、開始決定は3人
- 簡易裁判所:98人の審理が終わり、開始決定は10人
- 高等裁判所と最高裁判所:289人の審理が終わり、開始決定は0人
簡裁で扱うのは罰金刑などの軽い事件が中心だ。重い刑を争う地裁では、5年で3人になる。
再審請求の審理が終わった人数(2017〜2021年の5年合計)
出典:法務省「再審請求事件の既済人員数等」(最高裁判所 司法統計年報より作成)
78年ぶりに入った4つの規定
2026年7月17日、再審手続を見直す改正刑事訴訟法が参院本会議で可決、成立した。再審の規定に手が入るのは、1948年に刑事訴訟法ができてから初めてになる。
主な中身は4つだ。
- 再審請求審の進め方に手続規定を置く(これまでは裁判所の裁量だった)
- 元の確定判決に関与した裁判官を、再審請求の審理から外す
- 一定の要件を満たすとき、裁判所が検察官に証拠の提出を命じる
- 再審開始決定に対する検察官の不服申立てを原則禁止する
施行は公布から1年以内で、日付は政令で決まる。
並べてみると、効く場面が分かれている。証拠提出命令を除く3つは、請求が受理されたあとの進行と、開始決定が出たあとの扱いに関わるものだ。13人という数字そのものを動かしうるのは、証拠開示の運用に絞られる。
袴田事件の58年はどこで止まっていたか
では、その証拠開示はどれだけ効くのか。袴田事件の時間の使われ方が手がかりになる。
無罪確定までの58年のうち、第1審が約2年、控訴審が約8年、上告審が約4年。残る42年あまりは再審の手続に費やされている。
第1次再審請求だけで27年かかった。静岡地裁での審理13年4か月のあいだ、打ち合わせ期日は14回。最初の3回で約8年を使っている。この段階では証拠開示が行われなかった。
第2次では2010年に検察官が任意の開示に応じる姿勢を示し、2011年12月に裁判所が開示を勧告して、最終的に約600点の証拠が開示された。写真のネガフィルムや取調べの録音テープ23巻は、検察官が「不見当」と回答したあとに警察署内で見つかっている。
2014年の再審開始決定は、この開示のあとに出た。入口を開けたのは審理の進め方ではなく、出てきた証拠のほうだった。
袴田事件が無罪確定までに要した58年の内訳
出典:法制審議会刑事法(再審関係)部会 配布資料「袴田事件が示す再審法の問題点」
施行後に確かめられること
一方、開始決定が出たあとも長い。検察官の即時抗告から再審開始の確定まで9年、そこから無罪確定まで1年7か月。今回の改正が主に短くするのは、この後半になる。
附則には検討規定が入った。施行後3年以内に、捜査機関が集めた証拠の記録と保管、そして請求者への証拠開示のあり方を検討する。検察官が持つ証拠の一覧表の開示と、開示証拠の目的外使用の禁止は、5年ごとの見直し対象になった。証拠の入口は、本体ではなく検討事項に回った格好だ。
飯塚事件の3回目の請求は、施行日より前に出る見込みだ。しばらくは旧ルールで始まった審理と新ルールの審理が並んで進む。
確かめ方は単純になる。司法統計の「うち再審開始決定」の欄が地裁で年1人前後のまま動かなければ、今回動いたのは後半だけだったことになる。
再審開始決定が出てから無罪確定までの10年6か月
出典:法制審議会刑事法(再審関係)部会 配布資料「袴田事件が示す再審法の問題点」