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給食費無償化は月5,200円で足りるのか。食材高騰で広がる自治体差

給食費無償化は月5,200円で足りるのか。食材高騰で広がる自治体差

2026年4月、公立小学校の給食費無償化が始まった。基準額は2023年度の全国平均から算出された月5,200円。だが米価は1年で最大2倍に高騰し、基準額を超える地域では保護者負担が残る。「無償化」の恩恵は通う学校の所在地で変わる構造になっている

2026-06-28

5,200円

給食費無償化の月額基準額

「月5,200円」の出どころ

2026年4月、公立小学校の給食費が全国一律で無償化された。対象は約580万人の公立小学校児童と義務教育学校前期課程、特別支援学校小学部。所得制限はない。

基準額は児童1人あたり月5,200円。国費1,649億円を計上し、国と都道府県で2分の1ずつ分担する。年間の制度規模は約3,300億円だ。

根拠は2023年度の全国平均給食費(月4,688円)。物価上昇分を加味して5,200円に設定された。ただし実際の給食費には地域差がある。月額で滋賀県3,933円から福島県5,314円まで、約1,400円の開きだ。

基準額を超える学校では超過分が保護者負担になる。月6,000円の学校なら月800円、年間9,600円の自己負担が残る。「無償化」は正確には「月5,200円分の公費負担」であり、完全無償かどうかは住む場所で変わる設計だ。

都道府県別 月額給食費と基準額(2023年度)

文部科学省 学校給食実施状況等調査

米価2倍 ── 基準額を追い越す食材インフレ

基準額は3年前のデータで設計された。だがその間に食材市場は大きく動いた。

日本農業新聞の全国調査によると、学校給食用米の1kgあたり単価はこう推移している。

  • 2024年度当初: 283〜399円
  • 2025年度当初: 400〜707円

最大2倍の高騰だ。米は給食の主食であり、コストの中核を占める。

現場ではすでに米飯回数の削減、デザートの廃止、食材のグレードダウンが始まっている。各地の学校給食会からは「財政がかつてないほど赤字」「希望数量を調達できない」との声が上がる。

栄養士の99.6%が「直近1年で食材価格が上がった」と回答している。5,200円は食材インフレ加速前の平均値から引かれた線だ。制度開始の2026年4月時点で、この基準はすでに複数の地域で実費に追いつかれている可能性がある。

学校給食用米 1kgあたり単価

日本農業新聞調査

小学校だけの「無償」── 3つの境界線

今回の制度には3つの境界がある。

  • **小中の境界**: 中学校は対象外。拡大時期は「速やかに」とされるが日程は未定。兄弟で小学生と中学生がいれば、片方だけ無償になる
  • **公私の境界**: 私立小学校は国の制度対象外。自治体独自の支援がなければ全額保護者負担が続く
  • **自治体間の境界**: 2023年時点で独自に全児童対象の無償化を実施していたのは30.5%(547/1,794教育委員会)。残り約7割は新たに都道府県負担分の財源確保が必要になった

地方負担分は地方交付税で措置されるが、不交付団体には配分されない。東京23区のように財政力の高い自治体ほど自前財源が要るという逆説がある。

同じ「無償化」でも、制度の届き方は自治体の財政構造で異なる。財源の仕組みそのものが、新たな地域間格差の回路になっている。

給食費無償化の実施状況(2023年)

文部科学省実態調査

基準額をどう動かすか

給食無償化は子育て世帯の負担を年間約6万円軽減する。約580万人への家計効果は確かだ。

だが制度定着後に焦点になるのは「質の平等」だ。基準額が据え置かれたまま食材費が上昇すれば、差額を補填できる自治体とそうでない自治体で給食内容が分かれていく。

裕福な自治体は独自に上乗せして地場産食材を使い、そうでない自治体は基準額内で献立を組む。保護者から見えるコストがゼロになった分、給食の質の差は表に出にくくなる。

基準額の改定ルールは現時点で明示されていない。物価スライドの仕組みがなければ、5,200円は年を追うごとに実費から離れる。

制度設計の次の論点は明確だ。基準額に物価連動を組み込めるかどうか。ここが「無償化」が「質の平等」を伴うかどうかの分岐点になる。